第1話・冒険の始まり

 僕とセラが魔王討伐のため旅に出てから1年。ここまでは連携の強化や、王都周辺の魔獣退治などで、旅に出たと言ってもほとんど王都周辺にいて、時には王都に戻ることもあった。

 だが、王都周辺にいる強力と噂される魔獣はほとんど倒し終え、一ヶ月前、ついに旅立ちらしい旅立ちをすることが出来た。


「ジョン、ボクたち、やっと冒険に繰り出せるね」

「まぁ、一応は先月には出発していたって扱いなんだけどね」

「でも、実際は周辺のモンスターやら魔獣やらの退治ばっかりで全然王都から離れられてないじゃん、似たようなこと1年近くやってきていたじゃん」

「それはそうだね」

「でしょー」


 これから魔王と戦うための旅が始まると言うのに、セラはなんだか軽いノリでウキウキしているような気がする。ほんの少し不安だ。


「それで、ジョン、最初はどうするんだっけ、確か真っ直ぐ魔王城を目指すわけじゃないんだよね」

「そうだね、まずは少し行った所にあるリンド村というそこそこの村を目指す感じになるね」


 王都と魔王城がある魔族の町を直線で結んだルートを目指すという選択肢はあったのだが、いくつかの問題があったため、今回のルートをたどることになった。

 その問題と言うのだが、まずは、魔族の戦闘力も文献や人から聞いた分でしか知らないということ。今回辿るルートは、魔族が関係している可能性がある場所の付近を通ったりはするが、前半はあまり魔族の影響を受けていない、完全な人間領と呼べるようなところや、時には獣人領と呼ばれる場所を通るが、魔族と接触することになろうとも比較的撤退しやすい場所を進むことになっているため、一番不安である初戦や、二回目三回目という最初の方の戦闘で負けそうになったとしても命を落としにくいような道筋を選んでいる。

 次に、その道では旧人間領だったり旧獣人領と呼べるような、魔族に占領された土地を多く通ったり、魔族領に入ったところで、おそらくこの辺りという感じ想定される魔王城のある場所まで遠かったりと、通る必要のある未知のエリアが多いというのもある。先ほどの問題にもつながるのだが、もしもの時に撤退しにくいのと、戦闘にも慣れて今より成長しているであろう旅の後半であるならともかく、割と序盤の方からそんな道のエリアばかり通るのは危険すぎるのだ。

 ということで、それなりに迂回しつつ、フストリムワーネ王国や僕の師匠の伝手などを使って、協力者の力を借りながら敵地へと向かうこととなった。


「でも、いろんなところを回れるなら、ちょっとした旅行気分だよね」

「大分気軽に言うね、セラ」


 とてもじゃないけれど、僕からすればそんな旅には思えない。

 確かに勇者の力を持っているセラは僕から見ても凄いけど、彼女自体結構抜けているところもあるし、精神的に未熟なところも多い。


「へへっ、大丈夫だって、僕とジョンが揃えば最強だからね」

「まぁ、確かに人間でいったら結構な強さではあるけど……」


 僕は師匠ほど強くないし、セラだって他の紋章持ちと比べて極端に強いってわけでもないと思うから、最強かどうかは怪しい。

 それに、もし人間最強コンビに近かったとして、それくらいで複数の魔族や魔王を何とかできるのであれば、今、人間や獣人と魔族の戦いで魔族が優勢になっているとは思えない。やっぱり楽観的に動くのは僕には難しい。


「いーや、最強に違いないから大丈夫」

「いったい、どこからそんなに自信が出てくるんだ」

「そりゃ、もちろんジョンがいるからに決まっているじゃん」

「僕よりもセラの方が強いし、最強にはならないと思うんだけどな。確かに、セラとの連携で行ったら圧倒的に勝ってはいるだろうけどさ」

「じゃあ最強間違いなしってことで」

「まぁ、セラがそう思う分には止めはしないけど、油断だけはやめてね」


 天真爛漫というか自由本邦というか、そんなセラであることを悪いとは思わないし、彼女のいい所ではあると思うから、無理に変わってほしいとは思わないし、変わってほしくないからこそ僕がお供として付いている。だから、これはこれで、いいと言えばいいんだけど、ここまで楽観的で自信満々だと流石に不安にはなってくる。


「よし、それじゃあ、それなりに急いで移動しよっか」

「この辺りで無駄にゆっくり進む理由はないし、走るのは構わないけど、もしもの時は戦えるように、体力を消費するような全力疾走はやめてよ」

「ボクはそれでもいいだけど、ジョンもいるしね」

「そうそう、僕に配慮してくれ」


 そもそもセラが全力で走りだしたら、魔法や薬を使ったとしても追いつける気はしないけど、僕の運動能力や体力のことを考えてくれるなら、大分手を抜いてくれるとありがたいところだ。

 セラが準備運動のつもりか軽く屈伸している隙に、僕は身体能力増強の薬を口にする。今回飲んだものは小程度の品質のものだが、十分だろう。というか、こんな戦闘でもなければ重要な行動でもないただの移動で中品質以上のものを使うのは勿体なさすぎる。能力を増強するような薬品は他の薬に比べると作成コストが高いのだ。


 セラが走り出すのを見て、それを追うように僕もその場から駆け出す。


「そう言えば、そこそこの村って言っていたけど、リンド村ってどのくらいの規模なの?」

「そこそこはそこそこ……まぁ、僕らの住んでいたラフツと同じくらいかな」

「あー、なるほどね」


 僕らがかつて住んでいたラフツ村は20前後の家がある村だった。基本的には採集と農業で生活が成り立っており、定期的に森の様子などの報告を近くの街であるリヴまで行って報告したり、森で手に入れたものを売ったりして、そのお金で武器や農具を買ったりしている村だった。


「懐かしいなぁ」

「僕も師匠の元に行ってからは帰ってないし、結構懐かしいよ」

「またいつか帰れたらいいんだけどね」

「そうは言っても僕らは村長の家の屋根裏を間借りしていただけだし、いまさら帰ったところで住む場所があるとは思えないけどね」

「それもそうかー」


 僕らを育ててくれたのには感謝はしているけど、今となっては村にいた時間よりは外にいた時間の方が長いわけだし、懐かしさはあるけどそこまで思い入れが強いと言うわけでもない。無理に変える必要もないように思える。


「まぁ、それなら、ボクらで勝手に家を建てて二人で過ごしてもいいとは思うけどね」

「全部終わったらそれも悪くないかもね、幸い魔法については二人ともそれなりに出来るわけだし、師匠みたいに研究をしてそれを売ったりしていけば普通に生活は出来そうだし」

「ジョンのお師匠さん凄い人だもんね、ボクたちもそうなれたらいいね」

「まぁ、魔王を倒せたら嫌でもなれるとは思うけどね」


 魔王を倒したとなれば、地位名声はかなりのものになるだろう。その気になれば、国の運営にも関われるほどだろう。

 しかし、僕もセラもそういったことには興味がない。だが、王都やそれなりの規模の街にいたら、こちらにその気がなくても利用しようとする者は現れるだろうし、勝手に巻き込まれてしまうだろう。なので、魔王を倒した後、二人でゆったりとした日々を過ごすのであれば、師匠のような生活になるだろう。


「魔法とか魔術具の開発かー、うん、なんか楽しそうだね。ボクらの作るものなら結構高く売れそうだね」

「もしかしたら、あんまり張り切りすぎると、高すぎて誰も買えないとか、使用者への能力の要求値が高すぎて使える人が限られ過ぎるとかそう言った問題が起きるかもね」

「ああー、言われてみればそうかも……まぁ、でもそこを何とかするのが腕の見せどころだよ」

「まぁ、そうだね、使用が難しかったり、発動条件が厳しい魔法を使いやすいように補助するのも魔法具の役目だからね」

「あー、楽しみだなー」


 飛び掛かって来た小型のモンスターを切り捨てながらセラが笑いかける。

 今のは……多分……クローラビットだろう。一瞬だったのでもしかしたら別のモンスターだったのかもしれないけど、恐らくラビット型のモンスターで間違いない。

 全体的にあんまり強くないラビット型とはいえ、急に飛び出してきたのを一瞬で倒すのは流石だとしか言えない。


「全て終わった後のスローライフのことを考えるのもいいけど、そのためにも魔王を倒さないとだね」

「うん、任せてよ」

「いや、任せきりはしないよ、それじゃあ何のために師匠に弟子入りしてまで、僕がついてきたのか分からないからさ」

「あはっ、それもそうだね」


 その後少しの間、僕らは会話を続けたが、走っている時間が長くなるにつれ、自然とセラの足の速度も上がっていく。僕も追いつくためにペースを上げるのだが、セラと違い会話するほどの余裕はなくなっていく。後半はセラの話を聞くだけみたいな感じになっていた。


「村があるよ、ジョン。ね、リンド村ってあそこ?」

「……うん」


 セラの問いかけに僕は小さくうなずく。なんとか中品質の薬に手を出す前に辿り着いてよかった。

 村が見えて来たということもあって、徐々に速度が落ちていく。


「あれ、門番が立ってる、珍しいね」


 セラに言われて村の入り口の方を見てみると確かに簡素な槍を持った門番が二人立っていた。

 こういった村の門番は、大きな街で建てられている門番とは役割が違う。

 大きな街の門番は町に不信な者やモンスターを入れないため排除することを目的にしているが、村の門番は基本的に村に近づく危険をいち早く察知して知らせるために立てられる。なので、戦闘力はそんなに高くない。村で健康な成人男性が交代で任せられる程度のものでしかない。

 また、今の時刻、まだ日が沈み始めてもいないこの時間外に門番を立てていることは少ない。夜など多くの人が寝静まる夜ならまだしも、お昼は大抵農作業する者や周囲で採集をする者がいるので、わざわざ門番を用意する必要がないからだ。


「なにかあったのかな」


 セラが足を止めて、考えるようなそぶりを見せたので、僕も足を止めて数秒欠けて息を整える。

 改めて村の方を見てみるが、昼飯の時間でもなければ、日暮れでもない。なのに異様に人影が少ない。これは確かに平時ではないような気がする。


「そうみたいだね、人が少なすぎるし、もしかしたら強いモンスターでも出たのかもしれない。建物は特に損害がなさそうだから、取りあえず村自体はまだ襲われてないみたいだけど……」

「ついに冒険が始まるのかなと思ってたけど、結局は王都周りの害獣退治じゃん」


 セラがぶう垂れ始める。最初は全然だった癖にここ半年はずっと早く色々なところに行きたいと言っていたから、気持ちは分からないでもないが危険なモンスターや魔獣を倒すのが僕たちの仕事だ。

 そういう慈善活動というか、救助活動というか、そのような行動をとる際に問題が置きづらいように、またそういう活動をするからこそセラは国の名前を名乗らせてもらえているのだ。


「文句を言っても仕方ないだろ、僕たちの仕事だ」

「そうだけどさー……」

「というか、最終的に魔王を倒すと言っても、途中ででてくるモンスターや敵対する魔獣やに魔族は倒さないといけないんだろうし、結局どこに行ってもやることは変わらないと思うよ、相手が違うだけで」

「でもー、色々な土地は巡れるし、その土地ならではのものとかみられるじゃん」


 セラは笑顔でそんなことを言うが、この旅はそんなに気楽なものじゃない。ただでさえ強い物が多い魔獣の中でもより強力なものと戦うこともあるだろうし、それよりも強いと言われる魔族とはまだ戦ったこともない。最終的にはその魔族を総べる魔王を倒さなければいけない。気を抜かなくともいつ死ぬかもしれない、そんな旅だ。


「それはそうかもしれないけど……旅行じゃないんだよ?」

「うーん、戦いは多いけど旅行みたいなもんじゃないの?」

「違うよ……」


 このどうしようもないお気楽さは、彼女の自信からくるものだろう。勇者の紋章、国を挙げての教育と訓練、そして彼女自身の資質。それらが合わさっているセラは事実、人間最強と言えるかもしれない。だからこそというのでもあるのだろうが、一番は彼女らしさというのが大きいかもしれない。

 注意はするが、彼女らしさが無くなってしまうくらいならこのくらい気楽でもいいとは思っている。その分僕が注意すれば済む話だ。


「まぁ、セラの旅行気分のことは一旦置いておくとして、話を聞きに行こう」

「はーい」


 門番に不信がられないように歩みのペースを落とし、堂々と歩いて村まで向かう。

 ヘルムのせいで遠くからだと良く分からなかったが、近くから見ると、門番として立たされていた者は僕よりも何歳若いくらいであろうか。少年と青年の間くらいの年に見える。


「えっと、こんな時間に見張りってことは何かあったのかな?」

「あ、あなたは、ジョンソンさん!」

「うーん……ああ、タリーか」


 自分の名前を呼ばれたので誰だろうと思いよく見てみれば、以前この村に来たときに村を紹介してくれた人だ。


「ジョンソンさんがこの村に人を連れて来たってことは……」

「ああ、うん、この人がこの国の勇者、セラフィーナだよ」


 そうやって、彼が待っていたであろう言葉を口にすると、疲れたような表情をしていたタリーが目を輝かせた。


「それなら、この村は助けていただけるんですか!」

「そうだね、そのためにってわけじゃないけど、人間の置かれた状況を打開するって言う目的の旅だからね、困っている人がいたらなるべく助けるのは当然だよ」


 僕とタリーが話していると、セラがつまらなさそうにしていたのでこっちを見ていた。早く要件を済ませろということなのかもしれない。いや、滞在先兼撤退予定地の一つな訳だから、どっちにせよ倒す必要はあるのだけど。

 そんな村の住人相手にずっと害獣駆除を面倒くさがるような感じでいちゃダメだし、せめて挨拶くらいはしておこうよ。そんな思いを込めて肘でセラのことを軽く小突くとしぶしぶと言う感じでタリーの方を見た。


「えっと……初めまして」

「初めまして! 私はタリーと申します! 今回は、この村をよろしくお願いします!」

「ああ……うん……」



 セラは特に感情もない声でそう返答を返した。うん、良くないとは思う……後で人間関係とかその辺りのことについては言い聞かせておく必要がある。

 転移魔法用の魔法陣については説明しているし、今日尋ねる場所の説明もしたはずなんだけどな……。どれだけ、旅立ちを楽しみにしていたんだろう。

 セラの反応を見て、またちょっと微妙な表情になりつつあるタリーに声をかける。


「それで、タリー何があったのか聞かせてもらってもいいかな」

「私が話したい気持ちもありますが、あまり勇者様が来たということを知らせるために、まずは村長の家に向かっていただけませんか? ジョンソンさんはたしか、村長の家の場所を知っていましたよね」

「知ってはいるけど……持ち場を離れられないくらいなの?」


 タリーの隣に立っている青年をちらりと見る。

 前回訪れた時は会わなかったので、名前は知らないが装備を見る限りたまたまここにいたものでは無く、もう一人の門番で間違いないだろう。

 彼はタリーが僕たちと会話している間はより一層注意深く周りを見ていた。一人で置いておいても問題ないような性格の者だと思うのだが、それでも離れられないということは、余程の出来事が起きているのかもしれない。

 そう思ってタリーにそれとなく聞いてみたところ、タリーが小声で話してくれる。


「ええ、ここだけの話、魔獣が目撃されたみたいです。門番をしない村の者には強力なモンスターが出たからなるべく外に出るなとは言ってあります。流石に魔獣が出たとなると騒ぎになる可能性もあるので、あんまり大きな声では言えないのです。なので詳しくは村長の家でよろしくお願いします」


 魔獣か……それは確かに村じゃ対処に困る。

 魔獣とモンスターは、基本的に人間を襲ってくる点は一緒だが、細かいところを見ていくと全く以て違う存在だ。だが、相違点として一番の問題点となって来るのは強さ。その一点だろう。

 モンスターと比べると全体的に魔獣はかなり強い傾向にある。もちろんそこまで強くない魔獣もいるにはいるが、そう言うのはそもそも自分より大きなものに敵対して来ないし、そもそもこの辺りで見かけることはない。だから、現れたと言えば人間に敵対的な魔獣ということになるのだが、これがかなり厄介だ。

 どれほど弱い魔獣だとしても、モンスターでいえば上位から最上位くらいの強さがある。手練れの騎士が何人かで挑んでも被害が出るほどの強さともあれば、村ぐるみで戦ったとしても勝てるとは限らない。


 僕はただコクリと首を縦に振ると、セラを連れて村長の家へ向かって歩き出した。


「いったい何があったの?」


 僕が気を引き締め直したのを察してかセラがそっと尋ねてくる。


「それはだけど……」


 周りに村民がいないのを確認してからこっそりと魔獣が出たという話を伝える。


「なるほどねー、それじゃあ仕方ないかー」

「それじゃなくても、仕方なくもないんだけどね。害獣退治は僕らの仕事だからね。それに、ここは転移の魔法陣設置予定地だからね、どっちにせよ排除は必要なことだよ」

「はいはい、分かってるって」

「まぁ、セラにはいろいろ言いたいことがあるけど、とりあえずは村長の話を聞いて、対象の排除を終えるのが優先から、後回しにしておくよ」

「うへー……」


 どうせ僕の注意の言葉なんて半分くらいは聞き流すだろうに、なんだか項垂れているセラ。いちいち注意するのもあれなので、早く村長の家に向かうことにしよう。村のことを考えると魔獣を早く何とかしないといけないだろう。

 村長の家を訪ねると、僕を見るなり村長の息子のアランはすぐに中に入れてくれた。

 中に入るなり、応接室に通され、僕達と村長のアレックスが席に着いた。


「魔獣が出たということは聞いています、魔獣の特徴と目撃場所を教えていただければ、なるべく早く討伐出来ると思います」


 アランが白湯を持って来るよりも先に話を切り出す。


「なるほど……では……」


 僕から話を切り出したことによって、村長もすぐに話出してくれる。

 聞いた話によれば、目撃されたのは2日前。木のはじける音を聞いた村民がそっとそちらの方を見に行ってみると、木をなぎ倒す魔獣がいたらしい。

 それだけでは魔獣がモンスターか分からないだろうが、二足歩行していたウシ型のモンスターを街で資料探していたところ、似たような魔獣がいるということで急いで村に戻り、家に籠るように指示を出したらしい。


「幸い目撃された場所が最寄りの街まで道とは逆方向で助かりました」


 そう言うとアレックスは白湯を口まで運んだ。それは確かに幸運だったとしか言いようがない。魔獣はモンスターよりも知能が高い傾向にある。なので、場合によっては資料を見に行ったものが村に戻って来られない可能性すらあった。


「なるほど、ミノタウロス系の魔獣ですね……分かりました」

「ではっ……」

「ええ、僕とセラなら大丈夫でしょう、今すぐ討伐に向かいます」

「よろしくお願いします」


 すぐさま僕が立ち上がると、セラも合わせて立ち上がる。

 相手が魔獣であると知って、さっきまでよりは魔獣討伐に意識を向けているようには見える。

 ミノタウロス系の魔獣は確かに一度戦ったことがあるが、油断は禁物だガッチガチに緊張するのもどうかと思うが、中途半端に気を抜くのはもっとまずい。本当に大丈夫なのだろうか、僕の方が心配になってきたくらいだ。


 僕の不安などよりも優先すべきは村の安全なので、今から討伐に向かうのは問題ないのだが、負けたら元も子もない。

 ミノタウロス系ならまず負けることはないだろうが、セラが大けがを負わないか不安なのだ。ある程度までなら僕が治療することも出来るが、ある程度を越えた重症ともなると少し時間がかかる。その隙を狙われたならそこそこのモンスター相手でもどうなるか分からない。


「それで、ジョン。どうするの? 作戦とか」

「うん、まぁ、実際の相手を見たわけでもないし、ミノタウロス系ということならそこまで詳しく作戦を立てるよりも、セラに自由に動いてもらって、僕が合わせる方がいいと思う」


 しっかりと作戦を立てた方が動きやすいのは確かだけど、それはあくまで僕の話で、セラはというとそうではない。セラはその自力の高さや行動の柔軟性もあって、自由に動いてもらった方がポテンシャルを十全に生かせる性質の人間だ。

 もちろん、作戦を立ててその通りに動いてもらうことは出来るが、微妙に動きが硬くなったり、柔軟性が失われたりするのである程度までだったら自由に動いてもらった方がスムーズに討伐が出来る。それはこの半年くらいで分かったことだ。


「了解、じゃあ、さっさと倒して、さっさと村に戻ろう」

「油断だけはしないでくれよ」

「分かってるってば」


 タリー達とはまた別の門番二人に見送られて僕らは森へ出た。



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 森の中、僕達は魔獣を探すために歩き回っていたが、その痕跡はすぐに見つかった。

 森の一角の木々がなぎ倒されていた。それに、葉や小枝で作られたベッドのような物もある。どうやら、件の魔獣はここを住みかにしているようだ。


「凄いね、ジョン。寝床もあるよ。前回のミノタウロスとは大違いだよ」

「いや、前回のは遺跡に住みついたものだったから、自分で巣をつくらなかったんだろうけど、ここは森だからね、ある程度の広さが欲しかったから木々を倒して、そのついでに寝床を作ったんだと思うよ」

「ふーん……」


 今はいないけど、少ししたら戻ってくるだろう。せっかくだから罠を仕掛けるのも悪くはない。


「気配はないし、ちょっとした魔法陣を描く時間はあるかな」


 魔法陣を描く場所に目途をつけてそこに向かって歩いていると、セラが首を傾げた。


「魔法陣を描くって言っても、ここ草とか生えた土の上だよ、あんまり隠匿出来ないんじゃないの?」

「まぁ、罠として使うんじゃないなら、別に相手に見えてて問題はないとは思うけどね、相手も魔獣だし魔法陣を見られたところで解読されて対応されるとも思えないし」

「じゃあ、見え見えの描くの?」


 最初はそのつもりだったけど、せっかくなら罠として使える隠匿性のあるものを描くことにした。


「いや、ちゃんと隠匿するよ。この際だから、セラも覚えるといいよ」


 セラは様々な機関で色々なことを学んできたので、単純な知識量は凄いが、実践的なからめ手などは意外と知らないことも多い。とはいえ、才能と柔軟性からか勝手に正解を導きだすこともあるのだけど……


「魔法陣や魔法式を描くときは魔力記述と物理記述があるのは知ってるよね」

「それは流石に基本だしね。魔力記述は素早く描けるのと、場所を選ばないこと、あとは記述語の秘匿性に長けるけど、環境や外部からの影響を受けやすいことと、持続性が微妙なことが弱点だよね。物理式はインクを使って描くなり彫り込むなりするから、描くだけならだれでもできる点とか、描かれたものを壊されない限りは残るから持続性に優れるけど、形に残さないといけないから、隠匿するためには土をかけたり物理的に隠すしかないのと、物理的に描いたものを壊されたり、崩されたら効力を失うから専門的な知識がなくても破壊が用意なのが弱点でしょ」

「まぁ、そうだな」


 学習機関で習うならそんな風に習うのかもしれない。セラの言っていることは大体あっている。だが、実際のところは魔力式は早く描けることと場所を選ばないことを以外は大きなメリットはない。それが師匠から実践などを通じて学んだ僕の魔法陣や魔法式に対する認識だ。


「じゃあ、今回は魔力式にするの? でもいつ帰って来るか分からないし、相手は魔獣でしょ、持たないんじゃないの?」

「そうだね、魔力式だと多分持たないんじゃないかな」

「じゃあ、物理式? でも……」

「大丈夫。かかる時間に差はあれど、基本的に物理式は割となんでもできるんだ」


 腰に付けた目的のものをイメージのマジックポーチに手を入れる。手に瓶の感覚を感じたらそれを掴んで取り出す。


「それは?」

「粘土質の土とそれと同じくらいになるまで細かくした魔石を混ぜん込んだ水だよ」


 軽く瓶を振って水と混ぜてから蓋を開ける。そして、魔法陣を描く用の蓋を取り付ける。


「それで魔法陣描くの?」

「そうだよ、この蓋を着けておけば液体でも陣を描きやすくなる。後で一個あげるし使い方も教えてあげるから覚えておくと何かと役に立つと思うよ」

「うん、分かった」


 地面が濡れて魔法陣が描かれる。これは、地面を泥化させて陥没させる魔法とその数秒後に硬化させる魔法の二種が刻まれており、捕縛などで使える組み合わせの魔法陣だ。


「なるほどねー、でも、これ全然隠匿できてなくない?」

「まぁ、このままならそうかもしれないけど、ちゃんとひと手間加えるだけで隠せるよ」


 周囲の魔力を集めそれを使って範囲を指定した蒸発の魔法を発動させる。俗にいう乾燥魔法で、洗濯物や髪を乾かす際に使うことがある魔法だ。


「この際、過剰に魔力を集めておくことがコツで、こうすることによって魔石に含まれていた元々の魔力が塗り替えられて魔術的な面でも隠匿ができる」

「なるほど……考えられてるんだね」

「濡れたままでいいなら水だけでもいいけど、乾かすと発動する確率が低くなるから、魔石を混ぜ込んであって、その隠匿のために設置個所にあう物を砕いて混ぜておくと乾いた後分かりにくくなる」


 よし、これで魔法陣の設置は完了。後は待つだけだ。


「それで、どうする? 一旦隠れる?」

「そうだね、木の上に身を潜めよう」

「りょうかーい」


 僕達は木の上に登り、互いに光屈折の魔法を使用して視覚的に身を隠すことにした。

 そうしてしばらく待っているといくつかの小型のモンスターの亡骸を持った、魔獣が現れた。

 僕らには気付いていないようだが、何かを感じ取ったのかその辺りの気をなぎ倒して、まるで棍棒のようにそれを手にした。


「凄い力だね、でも魔法は苦手そう。前回のとは完全に別物だね」

「ああ、A型のタイプだね。前回戦ったのはB型のタイプだったから関節や筋肉の可動域以外は別物と思って戦った方がよさそうだね」


 そう言いながら、魔獣が指定の場所に付いたのを確認した僕は魔法陣を起動させる。


「ッ‼ グモッ‼ モ゛ォオオオォォォゥ!!」

「よし、かかった!」


 そう僕が言い切るよりも先にセラが魔獣目掛けて飛び降りていた。


「はあぁああ!」


 鞘から剣を抜き放ち、落下の速度と体重を乗せて一閃、魔獣の肩から腰にかけて袈裟斬りが決まったかのように見えたが、直後にセラが後ろに飛んで距離を取ったということは少し甘かったということだろう。

 魔法陣は上手いタイミングで決まったと思ったが発動と共に反応されたことと、魔獣のパワーが想像以上だったこともあり下半身を地面に埋めるにとどまっている。本来ならば胸辺りまで埋めるつもりだったのだが、やはり魔獣は油断はできないということか……


 魔獣が手にしている木を振り降ろすがセラは既に身を引いているため、それは地面を叩いた。

 あの魔獣、凄い力だ……大地が振動して、僕がいる木も大分揺れた。それに、片手を地面について、地面から抜け出そうとしている。普通なら抜けられることはないだろうし、むしろチャンスとも取れる行動なのだが、ミノタウロス系のA型は近接戦闘特化の筋力高めの魔獣だ、もしかしたらもしかするかもしれないと考えると気が抜けない。

 脱出行動を妨害しないといけない。そう思ったのはセラも同じようですぐに切りかかった。であるならば僕が取る行動はそれの補助だ。


「こっちだ、ミノタウロス!」


 選んだ魔法は古代魔法の地と火の混合魔法。針状の金属をいくつか降らせてやる。そうすれば、魔獣は目を守るために手を使わざるを得ない。

 狙い通り手にした木で掲げてこちらの攻撃を防いできた。だが、それはセラの前では大きな隙になる。

 高速の一振り。一瞬にして、その剣は魔獣の首を斬り飛ばした。


「よしっ! やったよー、倒したよー!」


 そして、あろうことか、セラは魔獣に背を向けてこちらに手を振って来た。


「ばかッ! 油断するなっ……」


 その瞬間、魔獣の手が動き、振り払われた木によって、セラが弾き飛ばされた。


「セラッ……!!」


 一瞬のことだった、気付けばセラはすぐ近くの木に背中から衝突し、地面に腰をつけていた。


 まずい……打ち所が悪ければ死にかねない威力だ。

 急いで下に降りてセラの元まで駆けつける。


「あはは……油断しちゃった……」


 僕がすぐ近くまでよると、セラはゆっくりと顔をあげて力なく笑った。

 身体を満足に動かせてない様子と、頭から血が流れているがその様子は非常に痛々しくはあるが、そんな様子のセラを見て、僕はほっと一息つくことができた。

 とりあえず、一安心だ。意識がある程度なら何とかなる。

 ここは魔獣のテリトリーだ、あまり油断は出来ない。だが、一刻も早い治療は必要だ。とりあえずの回復薬を飲ませてから、セラの体を触りながらどの程度の怪我をしているか確かめていく。


「いたっ! いてて……」

「だからあれ程油断するなって、言っただろ」

「ごめん……」

「今回のことを気に少しは気を付けるようになってくれればいいんだけど……」

「えへっ……努力します」


 そうは言ってるけど、たぶん完全には治らなさそうだ。まぁ、セラも本当に大切な場面では気を抜くことはないだろうし、そこは信頼してるけど、こういった普通にやっても勝てるだろう戦闘で大ダメージを受けるのは良くない。アイテムの消費的にも、こちらの心情的にも。


「左肩が外れているのと、右腕が砕けている。いくつか内臓がつぶれているのと、右側の肋骨が数本折れたり砕けたりしている。受け身を取ったみたいだから首から上は軽い裂傷だけみたいだけど、これは一歩間違えたら致命傷間際の傷になっていたよ」


 セラの状態に合わせて複数の薬や魔法を使い治療を始めた。

 久々の大怪我だ。ここ半年はこのレベルの怪我はしなかったはずだが、やはり今日は少し気が抜けていたのだろう。最後にちょっとしたやらかしをしてしまったと言うところだろう。

 だが、魔獣相手ならちょっとしたやらかしも死につながりかねない。本当に生きていてよかった。出発初日で勇者死亡は流石に多方面に申し訳が立たない。

 反省しろと言う視線をセラに向けてみると、薬と魔法の効果で少し回復した彼女はニコリと笑って見せる。


「大丈夫、そこはちゃんとまだ戦えるように右肩と両足に被害がいかないようにしたから」

「そういうことじゃない」


 治療に集中したいところだったが、文句を言わずにはいられない言葉につい口と手が出た。

 パチン。彼女に軽くデコピンを当てた。


「痛いって」

「ちゃんと反省しないのが悪い」

「うぅ~、勝ったからいいじゃん」

「……はぁ」

「うわっ、なにそのため息っ」

「いや、別に……」


 確かに勝ったは勝ったけど、僕の治療ありきの勝ちで実質引き分けのようなものだ。まぁ、僕がいなかったら最後の油断はなかったのかもしれないから実際はどうなのか分からないけど、だとしても今回の戦いはあまりほめられたものではない。相手が魔獣で無く魔族だったらと考えると死んでいてもおかしくはないのだから。


「今日は一日リンド村に滞在ね」

「えっ……」

「だって、セラは早く旅立ちたくて、油断しちゃったわけでしょ、だったら罰としてはリンド村に一日滞在がちょうどいいかなって」

「つ、次から気を付けるから……」

「駄目、たぶん村の人がしっかりもてなしてくれるだろうし、それに答えるためにも一日滞在すること」

「むぅー……」


 口をとがらせて拗ねたって、これは決定だ。そもそも村の歓待を断るほど大急ぎの旅ではないのだ、正直セラが先を目指さないのであればどちらにせよ彼らの歓待を受けるのが普通だろう。

 じっとこちらを見てくるセラは無視をして治療を進めていく。彼女の視線は感じるが、黙っている分此方も応答せずに済むので集中できるというものだ。


「それにしても、こんな感じに寝床を作ったり、倒した木を武器のように使うなんてすごかったね」


 治療も終わりかけという頃、村に一泊するのは覆らないと察したのだろう、セラはそんなことを言った。


「そうだね、モンスターに比べると知能が高めではあるのは知っていたけど、武器とか与えれば普通に使ってきそうなほどだったね」

「そう考えると、持っていたのがその辺の木で良かったって本当に思うよ。斧だったら、僕はもう真っ二つにされていたってことでしょ」

「そうだね、臍から上と下で両断されていたと思うよ」

「うっ……ボクがそうなっても、ジョンは助けてくれるよね……?」

「努力はするけど、そこまで重症だと半々ってところだから、過度な期待はしないでね」

「……はーい」


 治療を終え、怪我や痛みが残っていないかのチェックを済ませるとセラが立ち上がる。


「よしっ、完全復活」

「本当に次からは気を付けてくれよ」

「分かってるって」


 そう言って笑いながら親指を立てているが、やっぱりちょっと不安だ。


「いやー、強かったねー、あれ実は魔族だったりしない?」

「明らかに違うでしょ」

「えっ、なんで? 二足歩行していたし、寝床も作ってるし、へし折っただけの木とはいえ武器も使っていたよ」


 そう言ってセラは魔獣が埋まっていた穴を覗き込んだ。

 学園を出ているから、魔獣と魔族の違いも習っていそうな物なんだけど、なんか微妙に間違っている気がする。


「そりゃ、魔法は使っていなかったけど、ほら、前に戦ったB型の方は魔法使ってたでしょ、ならこのミノタウロス系の魔獣は実は魔族でしたー、みたいなことだってありえるんじゃないの?」

「いや、ありえないよ」


 地面の硬化を解いてから穴の下に降りる。埋まっていたのは下半身だけだったにもかかわらず、僕の首ほどまではある、こうしてみるとかなり巨大な魔獣だったと感じるものだ。

 魔核の魔石を拾うと、穴から出てセラの近くに戻った。


「なんで、魔族じゃないって言いきれるの?」

「いやだって、知性が明らかに低かったし」

「えー、それだけ?」

「それだけ……って言うか、そもそものところかなり広義にはなるけど、魔族も魔獣も本質は一緒だからね、そりゃにはすると思うよ。ただ、魔族的にはかなり侮辱されている気分になるとは思うけどね」


 人間が動物って言うのと同じで、魔族もかなり広くとれば魔獣と言えないこともない。あとは獣人がモンスターって言うのも同じ感覚だろうか。


「いや、でも知性あったじゃん」

「にしては言葉もしゃべらないし、魔法も使ってこなかったけどね」

「魔法に関してはこの前のやつが使って来たじゃん」

「そうだね、でも魔族なら大陸の言葉くらい普通に話すと思うよ」

「それはそうかもしれないけどたまたま勉強していないだけかもしれないじゃん」

「だとしても、住処がこんな感じだったら魔族が判定したとしても魔獣認定されてたんじゃないかな」

「本当に?」

「当物にだって賢いのがいるでしょ、たぶんそんな感じだと思うよ」

「うーん、そっかー……そう言われるとちょっとだけ納得するかも」

「でも、あの魔獣が賢い方だったというのは本当かも知れない。村に被害が出る前に対処できてよかったよ、お疲れセラ」

「うん、ありがとう、ジョン」


 いつものように頭を撫でてやると、セラがニッコリと笑った。少しは機嫌が直っただろうか。流石に魔獣討伐して御小言ばっかと言うのもあれだから、褒め言葉はやはり必要だろう。僕のなんかでいいのかとは思うけど、セラ場満足してくれるならいくらでも誉めてやる気はある。


 それにしても、早めに対処できてよかった。アレは並の騎士じゃ相手に出来はないほどの強さの魔獣だった。

 僕が罠を用意したり、気を引いたりしたとはいえ、セラは二回剣を振るっただけで倒してしまったのであまり強くは感じなかったが、実際は戦闘慣れした騎士が殺されてもおかしくない強さだ。最後の一撃でセラが重傷を負ったこと自体がそれの証明となっている。

 セラはいくつかの防御魔法や強化魔法が常に体にかかっているので、並の攻撃じゃ大した怪我を負わせることはできないのだ。

 それをあんな簡単に吹き飛ばし、あれほどの怪我を負わせた……これからの戦いが不安になる一撃だった。

 被害が出る前に僕たちが対処できて本当によかった。最悪の場合、村が壊滅していたはずだ。


「まぁ、村が宴を開いてくれるんでしょ、それなら一泊くらいいかな? 良く考えたらこう言うのも旅っぽいし」

「宴を開いてくれるかどうかは分からないけど……、まぁ、セラがそれでいいなら頼んではみるよ」

「ほんとっ!? やった、ありがとう、ジョン!」


 分かりやすく、態度を変えたセラがウキウキ気分で村へ足を進める。


「いや、本当に開いてくれるかどうかは分からないからね」


 そう呟いた僕の声が彼女に届いているかは怪しいものだった。


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