一つの影法師

あれから1ヶ月たった。

春奈はまだ彼と付き合っている。


変わらない登校、変わらない学校生活。

変わったとすればお昼時間と下校だ。

二人して互いのクラスを行き来して春を楽しんでいる。


「またね〜!彩芽〜!」


ハッと我に返る。

当たりは朱色で彼女が2階の窓から手を振っている。

私はかわいいななんて思いながら小さく笑い、手を振り返した。しばらくしたらあの男の影が彼女を攫う。


小さな幸せを取られ向かうことの無い怒りを抱えたまま振り返った。


夕日、皆の話し声、影……全て目障りで下を向いてた。

思い出の川に目をやる。

彼女と毎日見た川はやけに綺麗で一つの美術品である。


後ろの遠く自転車の音と彼女の声が聞こえた。

でもすぐ私を追い越して、少しの風がスカートを揺らして、二ケツする2つの伸びた影が去っていく。

思わず立ち止まってしまった。


嗚呼、もう彼女との下校は親友わたしの特権では無いのか…とずっと彼女達を見つめた。

やがて影は小さくなっていき、声も聞こえなくなった。


一つしかない伸びた影法師を殺したい。





9月、放課後の憂鬱。

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放課後の夕陽 トラース @Towata0911

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