忍耐
思考が止まる。
呼吸でさえ忘れてしまうほどの絶望が目の前にある。
何か言わないといけない、そうじゃないと春奈との関係は完全に終わりだ。
友達としての言葉か?女としての言葉か?どちらを言えばいい?
早く決めないといけないのに口はそれを発するのに躊躇する。
まるで嘔吐のような気持ち悪い感覚に襲われながら口を開いた。
「良かったじゃん」
きっと嫌に張り付いたような笑顔をしてたかもしれない、引きつってたのかもしれない、それでも精一杯の言葉がそれだけだった。
結局友達を選んだ私は臆病者だった。
「…どんな人なの?」
彼女はそんなの知らぬ幸せそうな顔で話し出した。
「優しくて、シャイ?って言うのかな?
でも、必死なところがかわいいんだよね!
ほら!隣のクラスの山寺君って知ってる?その人なんだけど〜」
知らない。
その彼も、春奈のその顔も、その声色も
聴きたくない。
その彼の事も、恋してる春奈の話も、全て
「って!聞いてる?」
嫌な程、頭に残る一つ一つの春奈の言葉が隠したい心根が浮かび上がりそうになる。
「……聞いてるよ、ちゃんと。
…それより良かったじゃん」
春菜が知らないナニカになるような気持ちだ。結局、告白さえ出来ないまま私の春は終わったのだ。
その夜はずっと上の空で布団に潜って暫くして声を殺して泣いた。
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