アサシンズ・レッド〜依頼達成率66%の殺し屋〜
ヘイ
第1話 相手なんて、あんまり関係ない
依頼成功率6割6分。
無難な結果を残す中堅の殺し屋……というのが方々での評価だ。より安心に人を殺したいのであれば赤石鐡之助以上のヒットマンを倍以上の金で動かせば良い。
とは言えだ。
6割の依頼成功率を誇る鐡之助は中堅の中では破格の値段で雇えるヒットマンであった。
「んー……」
公園のベンチでスマートフォンを操作する鐡之助に近づく影があった。
『依頼だ、
「…………今回はリスか」
スマートフォンをタップする指を止め、顔を上げ隣に座る着ぐるみを見る。
『ああ。可愛いだろ? 子供から大人気なんだ』
遠くから手を振ってくる子供に着ぐるみが手を振りかえす。この着ぐるみはどうにも彼の自作らしい。無駄に凝っている。
「殺し屋のブローカーが子供からの人気を気にすんなよ」
『将来の依頼人かもしれないだろ?』
「……そんな子供見たかねーよ」
『ま、んな事はどうでもいい』
着ぐるみの手で器用にタブレットを操作し、鐡之助に画像ファイルを送信する。
『依頼だ。今回は護衛。お前向けだ、RED』
「……俺、別に得意任務とか苦手任務とか特にないんだけど」
『どうだかな。成功率が高いのは護衛の方だぞ、お前』
「え? そうなの?」
『自己理解は必要だ、RED。何が得意で何が苦手か、見極めなきゃ死ぬぞ』
不満げに顔を歪めながら着ぐるみの生気のない瞳を見つめる。
『それと』
ブローカーが立ち上がった。
『今回はエリュシオンが出てくるかもな』
鐡之助は徐にスマートフォンを取り出し、エリュシオンを打ち込み検索する。
『おい、同業だぞ』
覚えておけよ、と責める様な語調で言うが、着ぐるみのせいか恐ろしさも実感しづらい。
『お前みたいなピンのヒットマンじゃない。超有名どころだ』
「へー、古代ギリシャ人の考えた理想郷ね。厨二病かよ」
小馬鹿にする様に言って笑えば、溜息を吐く音が聞こえた。
『実力が伴ってんだよ』
「そうかそうか。そりゃカッケーや」
鐡之助はスマートフォンをポケットに入れて立ち上がる。
「あ」
一つ確認しておこう。
鐡之助が彼に近づく。
「なあ、ラルバさんよ」
『ん?』
「俺の任務達成率ってどんくらい?」
『66%だろ』
「もう一つ下まで入れろ」
『……66.1%だな』
「ほーん……あんがとよ」
鐡之助は確認を終えると歩き始める。必要なのはこの確認だけだ。これが分かれば方針は決定する。
「なら、今回は成功だな」
鐡之助は短い灰色の髪を掻き上げながら呟いた。
アサシンズ・レッド〜依頼達成率66%の殺し屋〜 ヘイ @Hei767
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