第6話同性と同棲?

家に帰る部屋はと真っ暗なっている。そんなことがまだ全然慣れない。もうお母さんもお父さんもいない。学校にいるときはみんながいるから寂しさが和らぐが、家に帰ると一気に心細さが襲ってくる。お風呂に入ろうと、ソファーからゆっくり立ちあがる。すると携帯に着信が来た。最近は通話アプリTineでやり取りすることが多いから電話が来るなんて珍しかった。かけてきた相手の名前を見るとそこには心音と映し出されていた。私はちょうど話し相手が欲しかったこともありすぐさま通話に出る。

「もしもし心音?どうしたの?」

「ひかりちゃん寂しくないかなと思って。」

どうやら心音には全部お見通しみたいだった。

「ちょっと寂しかったかも。」

私は素直に白状する。

「それでね。ひかりちゃんさえよければ家で一緒に住まない?私は広い家に一人暮らしだから、部屋も空いてるし。どどうかな?」

願ってもない申し出だった。この家にあと何年も独りぼっちなんて想像するだけでぞっとする。でも心音と一緒に暮らすと思うと鼓動が速くなり、落ち着かない気持ちになった。私は数秒の間沈黙して考える。この気持ちが何なのかはまだわからなけれど、速くなる鼓動は不思議と心地よくもあった。きっと深層心理では一緒に住みたいと思っているに違いない。

「私も心音と一緒に住みたい!」

「よよかった。断られるかもて思ってたから。じゃあ今度の土日まずはお泊り会をしない?」

「いいね!お泊り会をしてみてから心音が一緒に住んで大丈夫そうか決めてね。」

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 週末着替えとか一式を水色のリュックに詰めて、私は心音の家に向かった。デバイスの調整で寄ることはあったけど、お泊りするのは初めてだった。何度も行っているのに少し緊張する。

「こんにちは。来たよ~。」

玄関を開けながら私は呼びかける。

「いいらっしゃいませ。ええっと。とっとりあえず荷物をどこかにおこうか。」

心音はなぜか、ものすごく緊張しているようだった。まるで片言みたいになっている。こっちまで緊張しそうになる。

「えっとそんなに緊張しなくても。相手は私なんだし。」

「そそうだよね。お昼ごはん作っておいたから荷物置いたら一緒に食べよう。」

「ホント!?お腹ペコペコだからうれしい!心音ご飯食べたことないから楽しみ!」

玄関を入ってすぐのリビングに向かうと、テーブルにはグラタンとサラダが大皿でおかれていた。荷物をリビングの奥におかせてもらい、椅子に腰かける。

「それじゃあいただきます。」

心音の作ったグラタンにはエビとブロッコリー、それにほうれん草がたっぷり入っていた。ミルクの旨味が生かされていてとってもおいしかった。

「これ本当においしいよ!心音料理上手なんだね。」

「ありがとう。レシピ本の通りに作っただけだよ。」

「ほかの料理も食べたくなってくるなぁ。」

「じゃあもし一緒に暮らすことになったら、ご飯作ってあげるね。」

心音は心底嬉しそうに言う。住まわせてもらいながら、ご飯まで作ってもらうなんて申し訳なくなってくる。

「そういえば転校生の子、親が政府の高官らしいんだよね。なんでデバイスのこと探ってるのかはわからないけど、用心したほうがいいかもしれない。このタイミングで転校してきたのも不思議だし…。」

心音は心配そうにつぶやく。

「わかったよ。気を付けるね。」

心音はなぜか私のことをよく心配してくれる。私にちょっとドジなところがあるからかもしれない。

「食べ終わったら先に入ってきて。お皿とか片づけておくから。」

本当に今日は何から何までお世話になってばかりだ。

「ありがとう。お言葉に甘えて入ってくるね。」

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お風呂から上がると心音はパソコンの前で難しい顔をしていた。

「どうしたの?何か難しいことでも考えてそうな顔だけど…。」

聞いても私ではきっとわからないだろうけれど、話くらいは聞けるだろうと思って聞いてみた。

「物質を構成する原子量を変換するプロセスを考えているんだけど、やっぱりエネルギー差が大きすぎて無理そうだなって。」

「よくわからないけど、何かすごいことを考えてそう。とりあえずお風呂に入ってきたらいいんじゃないかな。そのあとゆっくり考えればいいと思うし。」

心音はとっても真面目で頭が良い。私には想像もつかないことを考えているに違いない。

「うんそうする。じゃあ入ってくるね。」

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心音がお風呂から上がってくるとふわりと甘い香りがした。同じシャンプーとコンディショナーを使っているはずなのになんでこんなにいいにおいがするのだろう。

「どうしたの?なんかぼうっとしてるけど。」

「えっ。ううん。何でもない。」

友達の匂いに夢中になっていたなんて口を裂けても言えない。

「もういい時間だし寝ようか。」

「そそうだね。」

違う部屋からギシギシとベットの音が鳴るたび、心音がいるということを嫌でも意識させられる。本当にどうしてしまったのだろう私は。その日私は心音がいると思うと緊張してあまりよく寝付けなかった。



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君の腎臓がミルクレープに侵されるまで 水色桜 @Mizuiro__sakura

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