第4話 ハズレの部屋

 ドアを開いた。ここはハズレの部屋だったようだ。


 ドアを閉めて、廊下を進んで行った。


 いつになったら、当たりの部屋が見つかるのだろうか。


 ドアを開けては閉め、開けては閉め、開けては閉めた。


 諦めかけていたとき、開いた部屋の中に少女がいた。


 白い服を着たその少女は、暗闇のなかぼんやり光っているように見えた。


「こんなところで‥‥」

「こんなところで、何をしているの? 」


 少女は、そっとこちらを向いた。少し、笑いかけると少女も笑い返した。そして彼女は、透き通るような小さな声でこう言った。



 「残念、ここはハズレの部屋だよ」


 そう聞こえた瞬間、ぐおおっと部屋が伸びて広がって、少女が遠ざかっていった。そして自分の体は、廊下の外に放り出されていた。

 あまりの勢いに頭がぐらぐらとし、ぽかんと座り込んでいた。かけていたメガネも、カドの所に少し、ヒビが入ってしまった。

 「それじゃあ‥‥当たりの部屋はどこにあるんだい? 」

 静かに呟くと、どこからかあの透明な声が響いた。


 『当たりの部屋はきっとすぐに見つかるよ。頑張ってね。』

 どうしてか、少女がくすくすと嗤っているような気がした。


 疲れと混乱によりたまらなくなって、どん、と壁を殴った。


 血がにじみ、少し崩れたガレキの中から、髑髏が顔を覗かせた。


 その首もとに古びたメガネも落ちていて、カドに少し、ヒビが入っていた。



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短編集 黒 owl @owl51

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