第2話 蠢く

 内側を食べる悪魔



 内の方からじりじりと齧っていくのです。


 私は悪魔というのは化け物で襲いかかってくるものだと思っていました。


 しかし、そればかりではないようです。


 世の中には内側から食い破る悪魔もたしかに存在するのです。


 今から私はそれに食われます。


 ずっと前から気づいていました。じりじりじりじりと中から食べられているのを。


 最初は嫌だと思っていました。でも今はもう諦めています。食べられてもいいと、仕方ないと思っています。


 守るものも、失いたくないものもなにもありません。気力がありません。


 じりじりと食われてやがては脳みそも齧られて、やがて何も考えられなくなります。


 それはすこし嫌なので、頭のまわりを少し手で覆っています。


 じりじり、じりじりと耳の奥で音がして頭痛のような目の奥の痛みに思わず声を上げた。


 少しずつ意識が遠退いていったかと思うと、私は床に倒れていた。


 

 昨日は飲みすぎてしまったから、変なことを考えてしまったのだ。

コーヒーを淹れて、取っ手を持ち上げたとき、中にいる自分と目があった。


 その瞳は輝きがなく、深い色をしていた。

もぞもぞと、瞳の奥で何かが蠢いているような気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る