パイナップルの日

川谷パルテノン

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「八月十七日。パイナップルの日。たいへん日本的である。パイナップルはパインアップルである。松っぽいリンゴ。日本語だとンアをナと表記する。しかしながらこれはネイティブ的とも言える。発音としてパインアップルではなくパイナップルと聞こえるからだ。いや違う。発音で言うなればパイナポゥのはずだ。パイナップルでもパインアップルでもなくパイナポゥのはずだ。とはいえ八一七を当てはめるならパイナップルかパイナポゥかは些末なこと。なぜならパイナの戒律は守られているので。つまり八月十七日をパイナップルの日とすることは日本的かつネイティブを軽視しない折衷案だったのだ。パイナップルの日、いいじゃないか。誰も傷つけない。だいたいパイナップルの日というのがいい。こうなんと形容すればいいのか言葉を選ばなければバカっぽいではないか。パイナップルの日。もっと大事なことが我々ひとりひとりにあるはずである。結婚記念日の人なんてなおさらではないか。二人の出会いの日が全国的にはパイナップルの日とされる。それはなんだかバカらしく人によっては傷つくかもしれない。でもパイナップルの日だ。パイナップルに怒ってもパイナップルはそれを受け入れる。そうすることしかできないからだ。パイナップルに復讐は出来ない。たとえパイナップル農家に攻撃してもパイナップルに復讐したことにはならないからだ。パイナップルはいつ何時も寛容なのだ。だから冷静に考えてみればみるほどパイナップルは平和的かつ幸福的だ。パイナップルの寛容さに絆されて我々もなんだか度量が増した気さえしてくる。殺伐とした大地に一つのパイナップルが齎す影響を知らなければならない。そういう意味でもパイナップルの日というものは記念的で尊重すべき一日なのだ。この味がちょっと酸いねと言ったから八月十七日はパイナップル記念日。誰も言ってなくても八月十七日は揺るぎなくパイナップルの日なのだ。よって犯人はあんただ!」


 探偵の鋭い眼光が私を睨みつけていた。ここで捕まるわけにはいかない。負けるわけにはいかない。私は奥歯でパイン飴を噛み砕いた。

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パイナップルの日 川谷パルテノン @pefnk

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