誰かにとってのロリトピア
【アネクドート8】少女が際どい恰好をする伝統的な祭りが、「子供が望んで参加しているわけでもないだろうに!」と批判され、子供が望んで参加しているわけでもない伝統行事が規制された。
【アネクドート8】少女が際どい恰好をする伝統的な祭りが、「子供が望んで参加しているわけでもないだろうに!」と批判され、子供が望んで参加しているわけでもない伝統行事が規制された。
【少女が際どい恰好をする伝統的な祭りが、「子供が望んで参加しているわけでもないだろうに!」と批判され、子供が望んで参加しているわけでもない伝統行事が規制された。
後日、さっそくナマハゲが逮捕された。】
月内部に広がる鏡の国の中心ともいうべき、
球状の広大な空間は、旧人類から強奪した二二世紀の最先端科学とプリンス及び
そこに鎮座する山と海と森沿いの街、ちょうど自然と人界の間を分けるような道路を電気自動車たちが走っている。うち一台の車内。
「これはどういう催しだねアル」
後部座席で光源氏は尋ねた。
「デートではないから安心しろ」答えたのは隣のアルベルトだ。「南極で言ったではないか、わしらを理解したいと。どうだ鏡の国は? 随分と久し振りだろう」
運転席には大人が、助手席には子供が座っている。言うまでもなくネオテニーだ。ようするに光原喜郎の見張り役である。でなくとも敵地の真っただ中で丸腰だ、ロリサイがなければ、光源氏といえどもただの不老な初老でしかない。
若紫の方は同じような状況で、白雪姫の方に案内されているそうだ。
「……ああ」故に仕方なく、窓から景色を眺めながら不思議の国のリーダーは答える。「以前よりもさらに素晴らしい発展を遂げているようだな。月だというのに、よくここまで地球の環境を再現できたものだ。
感想は本心だった。
不思議の国も山内部を丸ごと改造することで築かれているが、あくまで地球上だし範囲も山一つ分。根本的な難易度が違う。
それを受けて満足げに、王子は重ねて言う。
「君が手を貸してくれればもっと豊かになるのだがな」
ちょうど進路が街中へと移る。
大きめのビルが林立し、程よく緑も生い茂る街並みだ。一見すると、不思議の国の外たる旧人類の住む地球上にもありうる地方都市程度のようでもある。
ただ、地球のそれらには絶対ないであろうものも多数目についた。以下のような文句が刻まれた看板や張り紙、広告群だ。
『旧人類の擁護は犯罪です。 鏡の国警察』
『旧人類という悪を許すな、入団者募集! 鏡騎士団』
『旧人類への罰則強化、旧人類文化の規制強化を実現します! 鏡党』
旧人類の部分を少女愛に置き換えさえすれば、地球上にあり触れているのが皮肉だが。
「残念ながら、旧人類への嫌悪は受け入れられんな」
と、共存を目指す光源氏は先ほどの問いに答えた。
「そうか」予想通りだったのだろう、アルベルトは平然として話を進める。「やはり案内するコースに間違いはなかったようだな。見えてきたろう、あの建物だ」
運転席と助手席の間に身を乗り出して、彼は斜め前方を指差した。
「病院?」
喜朗が、そこにあったひときわ目立つ巨大な建物に直接書かれている文字を読むや、隣人は認めた。
「まさしく。大きいだろう、旧人類の犠牲になった患者たち専用だからな」
不吉な予感を匂わせられて静まったまま、車は病院の敷地へと入っていった。
同じ頃、若紫は白雪姫に連れられて
聖堂の信徒席には18歳未満であろう少女たちが集っている。祭壇の前には老齢の神父がいて、みなに話をしていた。
「どういうつもりじゃ白雪姫?」
両開きの入り口扉から招き入れられ、最後尾の信徒席に座らされた若紫は隣に掛けた白雪姫へ訊く。
「前の席にいるのはネオテニーの少女たち」隣人は教える。「母親になったことに戸惑いを抱く子達ですわ、いわばその相談に応じる一つのセミナーみたいなものですわね」
似た催しは不思議の国にもある。珍しくもないので意図が読めなかった。
とはいえ、外にはここまで送迎した車にネオテニーの見張りも待機している。逃げ場はないので耳を傾けてみるが、神父はこんなことを話していた。
「老人とされるヨセフのもとに嫁いだとき、聖母マリアは十代前半の少女だったとされています。その時には、すでにイエスを身籠っていたとも」
「不思議の国でも聞ける内容じゃな」
若紫は先取りする。
「当時の法で婚前妊娠は石打ちの刑に該当する犯罪じゃったが、ヨセフはそれを許してマリアを妻として迎え、その子イエスを救世主とされるほどの人間に育て上げた。ネオテニーの母親たちも同じようなものなのだからと、安心させる談話といったところじゃろう」
「でしょうね。けど、先を忘れていますわよ」
驚かずに認めた白雪姫だったが、事実、神父の発言は途中まで若紫の予想通りに進んだ。
違ったのは確かに後だ。
「鏡の国では、科学を超えたロリサイによって物理的には難しい低年齢での出産も安全に行うことが可能となっています。これによって、人類からは出産に対する不安もなくなっていくことでしょう」
そこは不思議の国では言えないことだった。
旧人類との共存を目指す若紫らは、なるべく彼らと差異のなさを強調することでの共同生活を望んでいる。故に、旧人類でも扱える科学によってもまだ難しい低年齢での妊娠出産に繋がることはなるべく控えるよう推奨されている。
わかっていたはずのことだが、敵地に捕らわれる状況での焦りで忘れかけていた。
「一例として、ちょうど近くで行われていたからここを選びましたけれど」
神妙な顔付きとなった若紫の傍らで、白雪姫は付言する。
「他にも。環境、資源、経済、貧困……、ありとあらゆる旧人類の科学が直面している問題を、そんな法則を無視できるロリサイさえ全面的に肯定すれば解決できるのは明らかですわよね」
嫌でも自覚しているところであった。月内部の鏡の国はもちろん、山内部の不思議の国にも、地上と大差ない生活を実現するために論理超能力は使われているのだがら。
「しかし、それではネオテニーと旧人類には――」
「決定的な差が生じますわ」
白雪姫が先取りする。
「科学的な問題を無視できる優れたネオテニーと、あくまで科学に縛られる劣った旧人類。けれども、それが現実ですのよ。あなた方が平等でありたいと、嘘による駄々をこねているだけで」
隣人を確認する若紫に、相手は真正面から視線をぶつけてきていた。
「どころか、旧人類は自分たちを優位だと嘯きネオテニーを貶めている。鏡の国は、これを正してあたくしたちこそが上位だと真実を知らしめようとしているだけですのよ」
結局、幾度も繰り返されてきた流れだった。
負けじと、不思議の国の少女リーダーは指摘する。
「わらわたちが受けている仕打ちを、そのまま旧人類に返して迫害するのじゃろう?」
「旧人類と違って、事実に則した対応に過ぎませんわよ」
「そういう認識で悲劇は繰り返さてきたのだろうに」
「やはり無駄話でしたわね」
どうせ結末はわかっていたかのような口振りで、白雪姫は席を立ってしまった。神父の話も終わったようだ。
そそくさと出口へ向かう鏡の国の少女リーダーの背を、若紫は立ち尽くしてしばし見送ってしまう。
ふと、祭壇の方を振り返る。
若い母親たちは、いくらか安心を得たように話し合っていた。それらの光景を、祭壇上の聖母子像は静かに俯瞰している。
他方、光源氏と王子は辿り着いた病院に入っていた。院内は綺麗だったが、患者の状態は酷いものだった。
病衣の彼らは、四肢欠損など当たり前。頭から爪先まで、自然治癒は不可能だろう傷を負わされている者も珍しくない。
「ここは特に重い外傷を受けた患者たちがいる」
無言になるしかない喜朗を先導して、アルベルトは白い内部を案内していく。後ろからは、病院の警備員たちがついてきていた。
中には王子に気付いて感謝を口する患者たちもいた、逆に源氏には憎悪をぶつけてくる者もいたが警備に阻まれる。
「少女愛狩りによる犠牲者専用の病院だからな。旧人類と仲良くしようなぞという君は、歓迎されんのだろう」
患者たちの中には少女が多かった。旧人類的に表現するのならば、正確には外見が少女なネオテニーだ。
成人などと定めたある年齢の一秒前までは存在しなかった精神の状態が、一秒後にその歳になったら身に付くという非科学的な理屈に基づくのが少女愛禁止法である。少女の年齢さえ超えれば、立派なただのネオテニーであり何をしてもいいというわけで大人と同様に殺傷されていた。
やがて、外傷の目立たない患者たちのいる病棟にも到る。
ぼーっとしていたり、何事かを呟いたり、奇妙な言動を繰り返すだけの者たちがいるのだ。来訪者などろくに認識できていないような有様である。
「こちらは、特に重く心を病んだ者たちだ。先ほどの患者たちも含めてロリサイを用いれば旧人類の社会では不可能な治療も可能だが、それでも人出が不足している」
一帯を俯瞰できる吹き抜けの上階に到ると、手摺りに身を預けてアルベルトは旧友を断罪した。
「おまえは、彼らに旧人類と共存しろと言っているのだぞ。鬼畜の所業ではないかな」
光源氏は隣に並んだ。患者たちを見下ろして挫けそうになりながらも、言う。
「地球にいる少女愛支持者に傷つけられた人々も、同じ気持ちだろう」
呆れたように手摺りを殴る王子。彼は数歩離れると振り返って叱責した。
「本当の意味で少女らを傷つけたのならば、我々も相応の裁きをくだすさ。だが、本来傷つくはずのない正常な恋愛を洗脳によって傷つけられたと誤認してしまうようなものなら傷つけたのは旧人類だ。新人類たるネオテニーに裁かれるべきは、奴らだろう!」
そして隣に戻って顔を覗く。
「なぜ、患者に少女が目立つかわかるよな」
苦しそうに、旧友は答えた。
「……肉体的には幼いままな方が、抵抗力は弱いからか」
ついに、アルベルトは光源氏の襟首をつかんで捲し立てた。
「そうだ、両思いでなくなればロリサイはなくなる。そして少女側は不老とはいえ生物的には未熟な肉体であることが多い。ために、連中は優先して子供の方のパートナーを拷問して恋愛感情を捨てさせるんだ! 中には、それを楽しむ外道もいるという。そんな奴らがなぜ、少女愛を迫害する旧人類社会でのうのうと生きていられるか知ってるな!?」
「……少女を傷つける人間の方が、少女を愛する人間より優遇されているからか」
そう、少女愛禁止法はあくまで性愛関係を禁ずるものだ。
二世紀前から、少女らが単に生まれ持った肌を晒す動画像を規制しだした頃も、子供が肌の露出もなく性的でない暴力を振るわれたり殺害されたりするような動画像にそんな規制はされなかった。結果、少女を愛したい者より少女を殺傷したい者の方がある種生きやすい社会ともなり、ネオテニーの少女らへの殺傷が許容されたこの時代になって明確に社会的な地位まで得た者もいるのだ。
「だからといって、どうしようというのだ」喜朗は苦悩しつつも問う。「わたしたちは旧人類なしにはロリサイが使えないんだぞ。君のいうネオテニーの新人類たる点は、彼らと共にあってこそのものだろう」
「奴らと同じ事を、逆転して行えばいい。少女愛は絶対的に正しいのだと身に染み込ませる洗脳教育を施す。なおも拒絶する者は罰する。少なくとも問題が解決するまでは、ロリサイのために絶滅などさせんさ」
近代以前、少女と大人の関係には世界的に寛容だった。結婚もでき、ということは社会的に容認されていたということで長らくそこに今日のような嫌悪はなかった。そうした関係は、未開の種族ではなおも存属している。ここからから言えることは、少女愛嫌悪は人の生まれ持った生理的嫌悪感などではないということだ。
そこを改めようというのは、光源氏も共感するところではある。だがそのために洗脳したり罰したり、まして根絶やしなどという手段を用いることは断じて容認できない。
「もっと穏便なやり方があるはずだ」故に喜朗は説得しようとした。「対話を続け、理解を得て。世界を変えていく」
「何十年掛けた? その間、今この瞬間にも助けを必要としている何人もの同胞を見殺しにするのか!?」
「だから正午騎士団がある。君が協力してくれれば、旧人類とわかり合うまでの間に救える少女愛支持者も増す」
「だめだ!」
友の呼び掛けを、アルベルト・プリンスは拒絶した。襟首から乱暴に手を離す。
「僅かの犠牲も容認できん。旧人類どもが我らに執った政策、ゼロトレランスさ。少女愛を傷つけた者は一人残らず断罪する!!」
ホールに響き渡るような、力強い宣言だった。
思わず光原喜朗も黙ってしまう。二人の間に、海溝より深い溝が横たわったようだった。
残念そうに、王子は述べる。
「結局、親友であったわしと君さえわかりあえんのだよキロー。人間はこんなものだ、力でものをいわせるしかない。その力がネオテニーの手中にあるうちにな」
対話が終わったのを見計らったように、廊下の奥から鏡の国の幹部がやって来た。速やかに指導者へ身を寄せ、何事か耳打ちする。
「準備が整ったようだ」
聴くと背を向け、アルベルトは終えた。
「チャンスはやったぞキロー。若紫の方の説得も無駄だったらしい。牢に戻ってもらう、それが君らの選択だ」
地球。呂利辺度山の内部に広がる不思議の国の中心ともいうべき、
ドーム状の広大な空間は、ロリ大戦による損失で一般にはまだ復旧しきっていない本来の二二世紀の最先端科学を光原財閥の影響力で活用したもの。かつ、光源氏及びワンダーランドの優秀な人材による論理超能力で居住地として申し分ない環境を保つことで構成している。
さすがに世界中とはいかないが、日本にある環境なら全て体感できるような小さな日本ともいうべき場所だった。やはり山内部なのに空もある。奇しくも、同時期に光源氏とプリンスが訪れていた月の街に似ていた。
こんな不思議の街に、間戸井剛太と飯里沙奈々、戸塚輪恵兎と赤山春伽、加えて悠斗と冨美香が一緒に遊びに来ていた。
ちょうど映画館から出てきたところだった。
「なんだか、すごいもの見ちゃった気がするな」
館を出た悠斗は率直な感想を述べた。少女の下着姿や半裸が多い少女愛禁止法以前のフランス映画『エコール』と、同時上映の現代少女愛映画への感想だった。
街中のほどよい人波の中を歩く一行のうち、剛太が続く。
「昔の方は当時の少女を見れたのはいいが、おれには難解だったな。やっぱ古いし」
「少女愛禁止法ができてああいう映画が作れなくなってから長いからね」と恵兎が館内で買ったパンフレットを参照する。「それでも二一世紀の作品だし、新しい方よ。その頃の日本じゃ少女愛禁止法の前身で、もう同じ感じの映画は作れなくなってたみたいだし」
聞きながら、悠斗は街中を見渡す。
ここには、当時存在しやがて少女愛禁止法関連で絶滅させられていったというジュニアアイドルを起用した広告も普通にある。
遊泳ができる不思議の国内の観光地などを案内する水着姿の少女。いわゆる一般的なアイドル活動をする着飾った彼女らの宣伝、中にはグラビア活動そのもののイメージビデオや写真集の紹介も露出の高い格好の看板やポスターで伝えられていた。
18歳未満の少女たちでもやりたければやれるのだ、生まれ持った肌を恥じる必要もなければ偏見もないので立派な仕事としか認識されない。いずれも、旧人類の社会には存在しえないものだった。
「あたしもゴリラダーリンと同じで、新しい映画の方がよかったね。白雪姫の現代風アレンジがコンセプトとか最高じゃん」
沙奈々も先の映画の感想を述べた。
「エロエロなのはよかったけど、違う部分で過激だったのは好みじゃないかな♥」異論は悠斗と手を繋ぐ冨美香だ。「旧人類が単純な悪役みたいで♥」
「わかる~。あれはちょっと引いたわ」同調したのは春伽だ。「こっちじゃカラオケで人気の『粛聖!! ロリ神レクイエム☆』ですら少女愛に差別的だって声が多いっていう、鏡の国製作らしいっちゃらしいんだけどねぇー」
敵対している鏡の国と不思議の国ではあるが、互いに文化面では別であろうとしている。人類社会に二つしかない少女愛に寛容な国として、生み出された作品の輸出入などの交流は少ないながらも行われていた。
今回『エコール』と同時上映されていたのはそんな作品で、まさしく白雪姫を現代劇にしたようなものだった。
世界で一番美しいとされた原作通りに7歳の白雪姫に、悪役であり旧人類である大人の継母が嫉妬して暗殺を企てるという、鏡の国の主張に沿ったようなストーリー。けれど、グリム童話の原作ではそもそも〝七人の小人〟が〝七人の人殺し〟だったりするのだが、他にも大きく違う点は都合よく無視されていた。
「さて、次はどこ行こっか。カラオケ? ゲーセン? ショッピング?」
先導する戸塚輪恵兎が問いかけ、恋人の赤山春伽が応じる。
「今日は冨美香ちゃんたちに不思議の国の社会を案内するってコンセプトなんだからー、そういうとこにしたらぁ?」
「じゃあ前世紀の写真家ジョック・スタージス展は? 近くでやってるし少女のヌードもあるよ」
「おし賛成、そこに行こう」
真っ先に賛同した間戸井剛太に、恋人の飯里沙奈々が肘打ちでツッコむ。
「おー、随分乗り気じゃん。浮気かダーリン?」
「違うって!」
じゃれ合う少女愛者たちを微笑ましげに見守りながら、悠斗と冨美香は手を繋いでついていく。
ほんの数日前までは考えられなかった光景に、こんな穏やかな日々が続いて欲しいと願いながら。
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