第2話 噂

 今、世界はある噂で持ちきりだった。


 その噂とは。


『SSS級冒険者のヤマトが遂にギルドに愛想を尽かして引退した』


 というものだった。


 SSS級冒険者のヤマトといえば、世界中で似姿絵が公開されており誰もがその存在を知っている超有名人。


 曰く、その細身からは想像もつかない怪力無双。


 曰く、主武装である“カタナ”は神をも斬り殺した。


 曰く、毎日のように食卓には竜肉が並ぶ。


 曰く、曰く……。


“ヤマト”に対する噂は数多く存在し、その中には当然のように多くのウソが混じっているにも関わらず、戦闘能力に関する噂だけはほぼ全てが真実であった。


 そして『ヤマト引退』の噂とともに、もう一つの噂も出てきた。


 それは。


『世界で一番美味しいご飯を作るところにヤマトは居着いている』


 というものだった。


 その噂から、全国各地の飯屋でヤマト捜索、別名“ヤマト狩り”が行われたが、誰一人として彼を見つけることは出来なかったのは余談である。


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 そんな噂の人ことヤマトは、現在とあるダンジョンのボス部屋で、女子高生と一緒に生活していた。


 その女子高生の名前は“サクラ”。


 異世界クラス召喚時に、“通販”というハズレの固有スキルを授かってしまったせいで追放された、自称・惨めな女である。


 因みにこの通販というスキルがなぜハズレ扱いされるかというと、購入するためには魔石が必要で、高価な物を買おうとするならば超強力な魔物から剥ぎ取れる高級魔石が必要になるからだ。


 しかもこのスキルを持つ者に限って戦闘力の低い者が多く、また人望も殆どないため、高級魔石を得られずに固有スキルを腐らせていくのだった。


 かくいうサクラもこの二つの特徴にピッタリと当て嵌まるタイプだった。


 戦闘力は皆無だし、学校では嫌がらせを受けていた。


 もしも彼女が美人であったならば、男からは優しくされただろうが、残念ながら客観的に見て彼女は不細工に分類される人種だったので、男女の別なく双方から嫌がらせを受けた。


 男子からは意図的な無視、女子からは肩パン等の軽めの暴力まで。


 彼女はそれでもめげずに登校し、クラスごと異世界召喚された。


 そしてハズレスキルということもあり王宮を追放され、森の中で騎士に強姦されそうになったところで、そこいら辺をふらふら歩いていたヤマトに助けられたのであった。


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海老で鯛を……伝説の冒険者が釣れたっ!? 今日から俺が勇者 @YuusyaOre

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