海老で鯛を……伝説の冒険者が釣れたっ!?
今日から俺が勇者
第1話 フレーバーとしての最強生活
ゲームは好きだけど、あんまりやったことはない。
ラノベは好きだけど、超有名作しか読んだことない。
そんな俺が、地球と全く異なる星に迷い込んでしまい絶望していたところ、俺には怪物退治の才能が宿っていることが分かった。
緑小鬼“ゴブリン”に始まり、角兎“ホーンラビット”、犬面人“コボルト”、巨大豚“オーク”、赤鬼“オーガ”等々を退治していくと、“冒険者ギルド”とかいう組織の幹部さんに「推薦するので是非加入してくれ」と勧誘された。
なんでも、“冒険者ギルド”とは困っている人を助ける為の組織であるらしく、かつて抱いたヒーロー願望もあってか二つ返事で承諾した。
その結果得られたのは、“Bランク冒険者”という肩書きと、見ず知らずの構成員たちの嫉妬だった。
俺は騙されたのだ。
ヒーロー的な活躍ができると思って組織に加入したにも関わらず、俺に下される指示は全て危機の未然対処のみ。
特撮で例えるならば、怪人が人を襲って漸く登場する正義のヒーローになれるのではなく、人を襲う前の怪人を発見してそのまま倒しておく悪即斬な警察官にされたのだ。
別に職業差別をするつもりなど毛頭ないが、この騙し討ちのような結果には不満が残った。
“Bランク冒険者”という肩書きを得てからも、基本的に俺の生活に変化はなかった。
唯一変わったことは、気の向くままにしていた怪物退治を、組織の命に従って淡々とこなすようになったことぐらい。
科学者の知的好奇心によって生み出された成れの果ての化け物“キメラ”、ギガ爬虫類“ドラゴン”、欧州産の幽霊“リッチー”、小クトゥルフ“クラーケン”等々。
怪物を倒す毎に貰える謎の薬の所為なのか肉体の成長が止まり、ついでに性欲が殆ど無くなった。
そんな今の俺は、見た目だけなら草臥れた細長いオジサンというわけだ。
何が「というわけだ(キリッ)」なのかは自分でもよく分からないが、この頃から、ただ怪物を倒して帰宅し、不味い飯を食って眠るだけのしょうもない生活にはだいぶ嫌気が差していた。
さらに命令をこなす毎になぜか上がっていく階級と怪物の強さ。
A級、S級、SS級、SSS級。
Sを重ねるぐらいなら、A+級とかG級とか作っておけばいいのに、と思っていたが、SS級から先は、俺のために作られた新たな階級だそうだ。
闇人間“魔神アール”を倒して“SSS級冒険者”になってからは、“冒険者ギルド”から下される命令が、怪物退治から傭兵仕事のようなものに変わった。
貴人護衛やら暗殺等々。
要人護衛までは仕方なくこなしたが、暗殺は意味が分からなさすぎて命令を無視した。
“人を助ける為の組織”が下していい命令ではないと思ったからだ。
その結果、次々と嫌がらせのように暗殺の命令ばかりが下されるようになったので、冒険者を引退してスタコラサッサと夜逃げした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます