深夜

白川津 中々

ウィスキーを飲み下す夜、酔ったままに形のない思考に微睡む。

疲れきって帰ってきて、寝る前に酒を入れるなんてのは駄目なオヤジの典型だとずっと嘲笑してきたが、いざ自分が親父になってみるとそう落ちぶれる理由が分かる。意識があるだけ、悩みが多い。


つまらん仕事を朝からこなし、昼飯をかっ喰らうくらいの時間の休憩を挟んでの労働。面白いわけでもないのにやらざるを得ない。金のために、飯のために、俺は時間を捧げ働いている。

死にたいと思いながらも生きるために働くという矛盾が自分の中で消化しきれない。結局俺はなにがしたいのか未だに整理できず、淡々と寿命と健康を削って生きるための日銭を稼ぐ毎日を過ごしている。朝起きて、生きている絶望感を旨にその日が始まるのだ。死ねばいいのにとは、思う。けれど一人の人間がそう簡単に死ねるわけでもなし、やはり結局はなにかにすがって生きていくほかない。だから俺は、酒を飲む。


日付が変わり、酒が減り、明日の事を考えないよう、目を閉じる。

時計の針が進む音がひたすら聞こえる。時間は戻れず、止める事もできず。

少しずつ、少しずつ、終わりに向かって、時が動く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

深夜 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る