やっぱりいつもと違う玲羅さん

 あの男と再開することなく無事映画館に着くことは出来たけど、頭痛いわ。

 もう大丈夫だと思うからいいけど玲羅さんの心の声聞くだけでも結構辛い。けどまぁ、たまにはカンニングなしでもいいか。


「ちょうどいい時間ね」

「そう、だね」


 いつも思ってるけど同じ学年なんだから敬語使う必要ないんだよな。どうしても俺の中の昔の玲羅さんのイメージ的に敬語使っちゃうけど直していこ。


 俺と玲羅さんは飲み物だけを買って玲羅さんに着いてい行く。見る映画は恋愛ものだ。

 

「えっと、玲羅さん?」


 ついさっき敬語を使うのを直していこうと思った矢先だが仕方ないと思う。だって俺の目の前でさも当然のように、いわゆるカップルシートという物に座った玲羅さんが顔を赤らめながら俺の反応を伺うようにチラチラ見てくるのだから。


「何?」

「いや、なんでもないです」


 良く考えれば不思議に思うことはあるものの、俺にとって不都合は無いのでそのまま座ることにした。

 俺が座ったことで玲羅さんは安堵しているようだったがそんなことに気がつく余裕は今の俺にはない。

 だって近すぎだって、映画に集中できねーよ。なんでカップルシートを選んだのかめっちゃ聞きたいけど流石に聞けねーよ。くそ、この頭痛さえなければ心の声を聞いてるとこなのに。


 そんなことを考えてるうちに映画が始まった。

 

「ーーッ」


 何故か急に手を握られ思わず声が出そうになるのを抑える。

 玲羅さんの方を見るが暗闇であんまり分からない。

 取り敢えず玲羅さんの手を握り返しておくと玲羅の方から息を飲むような音が聞こえてきたが今度は玲羅さんの顔は見れなかった。恥ずかしい事してる自覚はあるので。すると玲羅さんも手に力を入れて握って来るので俺もそれに応えていたら手をニギニギしてる間に映画が終わってしまった。


 やばい、まったく映画に集中出来なかったんだが。


「こ、弘くん、映画、終わったわよ」

「そ、そうだね」


 映画館を出る間お互い無言ではあったが手は離さなかった。

 話題がねぇ。映画を見たあとなんだから映画の話を出来ると思ってた数時間前の俺をしばきたい。


「映画も見たので私は帰るわね」

「あ、うん」


 俺のコミュ力がもっと高ければ......仕方ないか。そう思い俺も玲羅さんに背を向けて帰ろうとすると違和感を感じ振り向いてみると俺の服を指でちょこんと摘んでいる玲羅さんがいた。

 何この生き物。可愛い。じゃなくて。なんで? 忘れ物......はないよな。伝え忘れたこと? 連絡先交換したし。じゃあなんだよ!?


「あ、これは......その、私、弘くん......が、好きです」


 ん? あれ? 俺今告白された? いやいや、幻聴か? て、ちょっと待て、俺はそんな幻聴を聞く予定もなければ聞く気もない。ということは......まじで告られた?! 正直いつ告白しようかすごい迷ってたんだけど俺。下手に言っても照れ隠しで断られそうだったし。いやいや、今はそんなこと考えてる場合じゃなくて返事だ。


「......俺も、玲羅さんのこと、好き、です」

「ほん、とに?」

「はーーうん」

「そ、そう、私が弘くんを好きになる事なんて奇跡に近いんだから、その、ちゃんと幸せにしなさいよ」

「もちろん」

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ある日心が読めるようになった俺が素直になれない毒舌女子と付き合うまで シャルねる @neru3656

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