いつもと違う玲羅さん
あれから俺は数十分ぐらしてから教室に戻った。一人で。
もちろん響平も連れていこうとしたが目を覚ますことはなかった。尊い犠牲だった。俺は響平の事を二日ぐらいは忘れないだろう。
そして響平がそうなってしまった元凶の玲羅さんはと言えば、響平のことなんて気にした素振りも見せず俺の方をチラチラ見てくる。
やめてくれ、そんなことされるとさっきのことを思い出してまた恥ずかしくなってくるだろ。
そしてチャイムがなった。
☆ ☆ ☆
あっという間の日曜日。玲羅さんと映画を見に行く約束の日だ。待ち合わせ時間は10:30。俺は待ち合わせ場所に着くなり時間を確認するが何度見ても9:30だ。早く着きすぎた。てか早すぎだろいくら楽しみにしてたってこんな早くつかねぇよ。
暇だし周りの人の心の声でも聞くか。ここあんまり人通り少ないし。
【くそっ、四股かけたぐらいであんな怒ることねぇだろ! くそがっ!】
そりゃ怒るだろ。四股とかガチでかけるやついるのかよ。
【どうしよう、早くつきすぎちゃったかな......弘くんと早く会いたすぎて......えっ、弘くん!? もしかして弘くんも私と早く会いたくて早くついたのかな......】
なんかすごい知ってる声だ。
あっ、目が合った。てか私服可愛すぎだろ! 説明は難しいけどとにかく可愛い......て、見とれてる場合じゃなくて声掛けないと。
【あぁ、あの子可愛いなぁ、俺頑張ってるしちょっとぐらいいいよな。カバンに入れて置いた包丁は......よし、ちゃんとあるな。こんなくそみたいな人生、最後の瞬間ぐらいはいい思いしてもいいだろ】
え、まって、この声も知ってるぞ!? 俺が初めて心の声が聞こえるようになった日朝に石に躓いてめっちゃ切れてた人だ。しかもこいつなんつった? 包丁? 包丁持ってんの? え......俺は取り敢えず狙われているのが玲羅さんだと分かったので手を引いてそいつから離れる。
「玲羅さん、ごめん! ちょっとだけ走って」
「え、あ、ちょっと!?」
俺は玲羅さんの手を引いてあいつの心の声が聞こえなくなるまで走った。
「な、なんでいきなり走ってるのよ! 馬鹿なの? 普通出会ってすぐ走るとかありえないんだけど」
「ご、ごめん」
【い、いきなり走り出したのにはびっくりしたけど弘くんと私手繋いでる......しかも弘くん私の事名前で呼んでくれてる! ふふふ、この手だって弘くんから繋いできたんだから絶対離さないから! ちょっと疲れたけどどうでもいい。ずっとこの時間が続いて欲しい】
......手繋いだって言えるのか? あれ。まぁ、玲羅さんがそう思うならいいか。
「玲羅さんの私服すごい似合ってると思います」
普通は待ち合わせ場所に来た時に言う言葉なんだろうけど今回ばかりは仕方ない。てか追放した方がいいのか? いや、でも未遂だしな。そもそも包丁が入ってるからって犯罪なったりしないよな? んー、法律はよく分からんけど、包丁出して脅された訳でもないし追放しても無駄か......そもそもなんで気づいたんだって話になるし。
「感謝しなさいよ? あなた......弘くんなんかに私の私服を見せてあげてるんだから。まぁ弘くんも平均よりは上だと思うわ」
「ははは、ありがーーえ?」
俺今褒められた? 平均より上って褒められてないか? もし相手が玲羅さんじゃなかったら褒められたとは思えないけど玲羅さんだったら話が変わってくるぞ? すげぇ嬉しいんだけど。まって。やばい。
「じゃあ早く映画館へ行くわよ」
「何時からのですか?」
「......11時のを予約してるわ」
「今は10時ですね」
「待ち合わせ時間は10時30分だったはずでしょ? なんでこんなに早くいるのよ」
「楽しみだったのと玲羅さんを待たせる訳にはいかないと思ったので」
実際早く来てて良かったよな。俺が暇を持て余して適当に心の声を聞いてたからあの変なやつにも気づけたんだし。
「......そう、弘くんにしてはいい心がけじゃない」
「逆に玲羅さんはなんで待ち合わせ時間より早く来てたんですか?」
最初に心の声でなんでかは知ってるんだけどね。なんて答えるんだろ。
「それは......こ、弘くんに早く会いたくて」
「ーーッ」
ちょ、最後の方は声が小さくなっていっていたがしっかりと聞こえた。最近玲羅さんなんか素直になってきてないか?! 少し前だったら罵倒を浴びせられてたと思うんだが。
「そ、そうですか。お、れもほんとは早く玲羅さんに会いたかったから......その、早く来ました」
こ、こんなことなら最初から素直に言っとけば良かった。まさか玲羅さんがこんな風に言ってくるとは思わないだろ。
【は、恥ずかしかったけど正直に言ってよかったぁ。弘くんも私に早く会いたかったから早く来てたんだ......えへへ、そっかぁ。弘くん言ってたもんね私の事美少女って、勇気出してよかった】
俺が美少女って言ったからか!
「そう、まぁ、弘くんが変なとこに走ったからここから映画館まで行けばちょうどいい時間になりそうね。早く行くわよ」
「あ、はい」
そして俺と玲羅さんは手を繋ぎながら映画館へ向かうのだった。もちろん周りの心の声を聞きさっきのやつが居ないかを確認しながら。
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