エピローグ
十二月某日世間はすっかりクリスマスムードの中、俺は原稿用紙と向かい合い筆を走らせていた。
人工熱で暖められた指先から黒のインクが引かれる。
程なくして手元に置いてあったスマートフォンから着信音が軽快な音を立てて鳴った。
「はい、もしもし」
「あ、真澄!久しぶり〜聞いたよ、大手漫画誌主催のコンテストで大賞取ったらしいじゃん!おめでとう」
後にも先にも俺を真澄と呼ぶ女は一人しかいない、久しぶりに電話越しに聞いた声はまるで飛び跳ねて喜んでいるかの様に俺を称えた。
「ありがとう。それでこっちには後どれくらいで着きそう?」
「んーあと20分ちょいかな?それにしてもまさか真澄がここまで有名になるとはちょっと驚いたかも…会うの楽しみにしてるね」
「俺も楽しみにしてるよ、20分ぐらいで着くならそろそろ駅まで迎えに行くね」
「迎えに来てくれるのありがたいわぁ〜、じゃあまた後で」
プツンと音がし通信が途絶える。
俺は筆から手を離し原稿用紙をまとめるとコートを纏い家を出た。
今日は一段と冷え込み、息が凍るように冷たい。
「あ」
はらりはらりと白い結晶が舞い降りてくる。
見上げると空には無数の雪が広がっていた。
今頃、アイツも同じ景色を見ているのかな?
俺は足早に駅に向かった。
平日逃避行 英 @shinozaki_
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