逃げる人と追いかける人とそれを追いかける人と追いかける人を追いかける人を追いかける逃げる人

黒羽椿

逃げる人と追いかける人とそれを追いかける人と追いかける人を追いかける人を追いかける逃げる人

 日も沈み、人気が全く感じられなくなった午後九時ごろ。僕は誰もいなくなった廃校に、足を運んでいた。校門をよじ登り、指定された場所の窓を開け中に侵入する。全て渡された手紙に記されていた通りだった。


 数日前にポストに入っていた宛名の無い封筒。そこに書かれていたのは、僕にとって魅惑的な内容だった。というのも、あるゲームに参加すれば僕の望みを叶えてくれるというのだ。


 『五十嵐奏多いがらしかなた、君が秋月麗花あきづきれいかにこっ酷く振られたのは知っている。だが、このゲームに参加したならば合法的に彼女と親密になることができる。君ならきっと、ここに来ると信じている。場所は―』


 差出人不明の手紙に、僕の名前と昔僕が体験した事実が書かれていたのは少し怖かった。しかし、それよりも彼女と親密になれるという部分に惹かれ、この怪しさ満点の誘いに乗ることにした。


 僕がこんな馬鹿げた手紙に縋るのには理由がある。それは僕が麗花に嫌われているからだ。彼女は、男性が例外なく嫌いなのだ。ほぼ幼馴染といって過言ないほどの付き合いがあるほどの僕でも、それは変わらない。


 小学生の頃から、僕は麗花のことが好きだった。昔から男嫌いの麗花に罵倒を受けながらも、関係を続けるために努力を続けた。勉強も運動も、彼女のためだと思えば苦じゃなかった。そして中学二年の秋ごろ、部活で好成績を残したその日に告白し、見事に玉砕した。


 「付き合ってください? なんであたしが、あんたと付き合わなくちゃいけないのよ。ちょっと最近モテだしたからって、調子に乗らないでくれる? あんたなんて、初めて会ったときから大嫌いよ」


 自信満々だった僕は、その現実を受け入れられなかった。確かに、彼女が男嫌いなのは知っている。けど僕は、その限りじゃないと思っていた。僕は彼女のその障壁を乗り越えるために、努力を続けてきた。見た目や振る舞いにも気を使い、何人かに告白されるくらいには容姿を整えた。


 なのに,,,こんなに頑張ったのに、僕は彼女と特別な関係になれなかった。それだけには飽き足らず、彼女は女子高に進学した。同じ空間にいることすら、彼女は僕から奪ったのだ。


 麗花に近づこうとしたら、ストーカーとして通報される始末。このまま彼女に近づこうとすれば、僕は警察のお世話になってしまう。だから、こんな胡散臭いものを信じてここに来たのだ。これで駄目だったら、一線を越えることになってしまう。それは最終手段だ。


 「ここ、か」


 指定された体育館に到着した。月明りだけが周囲を微かに照らし、壇上辺りは全く見えない。近くにあったスイッチを押しても、電気はつかない。廃校だからだろうか。


 「ふふっ,,,本当に来ましたね」


 「っ!」


 声がした方を向く。暗闇の中から、誰かが出てきた。麗花ではない、どこかで聞いたことのある声だ。現れたのは、長い黒髪に高身長の女だ。彼女は確か,,,


 「上野,,,さん?」


 「はいっ! 上野桜うえのさくらです! 覚えていてくれたんですね」


 上野桜は、僕の同級生の一人だ。そして、僕に告白してきた内の一人でもある。彼女と僕の関係を説明するのは、たったそれだけで事足りてしまう。僕が麗花以外の女性に微塵も興味が無いというのもあるが、そんな彼女がどうしてここにいるのだろう。


 「奏多君とお付き合いできるって聞いて、半信半疑でここまで来ましたが,,,来た甲斐はあったみたいです」


 「何言って,,,」


 「奏多君が悪いんですよ? あんなに熱心にラブコールしたのに、振り向いてくれないんですから」


 「いや、僕は麗花のことが好きだって言ったよね?」


 「どうして,,,あんな女より、絶対私の方が奏多君を幸せにできるのに,,,でも、それも今日で最後です。奏多君は、私のものになるんですから」


 意味不明なことを言いながらニコニコと笑う彼女に少しの恐怖を抱く。彼女は前から、僕に対して重すぎる思いを抱いていて、正直怖い。


 上野さんから後ずさりすると、不意に後ろの扉が開かれる音がした。振り向くと、月光でその金色の髪を煌めかせる僕の思い人、麗花がそこにいた。


 「麗花!」


 「その無駄に整った顔とうざったい声,,,もしかして五十嵐? なんであんたがここ、に」


 麗花は、僕を見て不機嫌そうな顔をした後、ある一点を見つめて固まった。その先には、何故か苦い顔をした上野さんがいて,,,


 「桜姉さま! 本当に来てたんですね!」


 「秋月麗花,,,どうしてあなたがここに,,,」


 「私の家に宛名のない手紙が届いていて、この変態ストーカー野郎のものかと思って確認したんです。そうしたら、桜姉さまと特別な関係になれるって書いてあったので、ダメ元で来てみました!」


 どうやら、麗花も僕と同じような手紙をもらったらしい。しかし、どうして麗花は上野さんにこんなに食いつくのだろう。しかも、特別な関係なんて,,,もしかして、麗花が男嫌いなのはそういうことなのか?


 「嫌ですよ! あなた、学校でそういう趣味の人って有名ですよ! 私は同姓異性関係なく、奏多君にしか興味ないです!」


 「っち,,,だからお前が嫌いなんだよ! 五十嵐ぃ!」


 胸倉を掴まれて、勢いよく揺さぶられる。僕にそういった性癖は無いが、麗花に罵倒されるならそれもありかもしれない。


 「私だって奏多君が好きなのに、奏多君は秋月さんしか見てない! そのくせ、秋月さんは私のことが好きだとか言いますし,,,私の方こそ、あなたのことが嫌いです!」


 「なっ! 麗花の求愛を受けていながら、それを無下にするなんて,,,上野さんは僕の敵だ! 僕が欲しいものがすぐに手に入るのに、それをドブに捨てて,,,そんな上野さんなんて、嫌いだ!」


 落ち込む上野さん、怒る麗花,,,三竦みの状態の中、突然耳障りな声が体育館中に響き渡った。


 『ようやく揃いましたね! 今日の日を、どれだけ待ち望んだか,,,! 五十嵐奏多さん、秋月麗花さん、上野桜さん。あなたたちの恋路、私はとっても応援したいのですよ!』


 「なんだこの声,,,無性にムカつく」


 「癪だけど同感ね。多分女っぽいけど、タイプじゃないわ」


 「奏多君以外は興味ないです」


 『はいはーい、悪口は聞こえませーん。早速、皆さんにあるゲームをしてもらいまーす! そのゲームの勝者にはなんと、各々の思い人と二人っきりで一日間、密室に閉じ込められまーす! その密室には、あれな道具やあんなお薬まで沢山あるので、出てくるころにはお二人はラブラブ間違いなしです!』


 「ほう,,,」


 「へぇ,,,」


 「ふふっ,,,」


 『三人とも、興味がおありのようですね?』


 麗花と恋人になるには、それこそ正攻法では無理だろう。それこそ、僕しか考えられなくなるほどにしなければ,,,だが思いっきり犯罪だ、そこはどうなのだろう。


 『通報の危険もご安心下さい! 五十嵐君の両親は旅行中で、秋月さんの両親は海外出張中、上野さんに関しては一人暮らしです。一日いなくなったくらいでは通報の危険はありません』


 「随分と手が込んでるね」

 

 『そりゃもう、この日のために準備頑張りましたからね! じゃあ、早速ルールの説明をしますよ!』


 やかましい声がスピーカーから響く。明らかにこちらの声が聞こえているが、面倒なので無視することにした。


 『ルールは簡単です! 五十嵐君は麗花さんを、麗花さんは上野さんを、上野さんは五十嵐君を追いかけるだけです! 対象者を捕まえることができた人に、例の密室の招待券をプレゼントします!』


 「準備の割には、しょうもないルールね」


 「私は奏多君と一緒になれればそれでいいです」


 『場所はこの校舎全部です! 誰かが対象者を捕まえた時点で、その人を密室にご招待します! 警察に行かれると後始末が面倒なので、敗者はお口チャックしてお帰り下さいね! じゃ、始めますよー!』


 心底楽しそうにルールを話す誰かは、陽気にゲームのカウントダウンを始めた。僕は麗花を捉えつつも、後ろの上野さんの視線をひしひしと感じていた。それは麗花も、上野さんも同じだ。僕たちは逃亡者であると同時に、追跡者でもあるのだ。


 『3、2、1、スタートです!』


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 「くふふっ,,,始まりましたねー」


 私は、ある廃校の放送室を改造した場所で、体育館の映像をモニタリングする。映る三人はもちろん、変態三角関係組だ。彼らのこの関係に気付いたのは、全くの偶然だった。


 彼と彼女らは全て同じ中学に在籍していた。そのうちの名もなきモブ、それが私だ。それはあの三人が揃いも揃って、自分の思い人以外に興味がなさ過ぎただけで、五十嵐君とは隣の席になったこともあるのだが,,,まぁ、彼は覚えていないだろう。


 きっかけは、やはり彼と席が隣になったことだろう。当時の私は、代り映えしない日常に飽きていて、もっと面白いことがしたいと思っていた。ネットに転がる偽物ではなく、確かな本物が見たかった。


 五十嵐君はその点、私の興味を大いに引いた。中学生という多感な時期の男子が、あれほど紳士的に振る舞えるのは凄いというより、異常といってよかったからだ。そんな彼の秘密が知りたくて、ちょーっと彼のスマホのデータを盗んで確認してみたら、なんと大当たり。秋月麗花に対する思いが、キモいくらいメモ帳に書き連ねてあった。


 覚えたてのプログラミングやハックの知識を使いたかった私は、この遊びにどんどんのめり込んでいった。彼の行動や検索履歴を調べるたびに、やっぱ本物は違うと思った。ストーカーまがいのことをしておきながら、本人にその自覚が無いのはマジでやばいと思う。


 そこから先は、かなりトントン拍子だ。秋月麗花のことを探ってみたら、彼女が上野桜という女子に特別な思いを抱いていると分かり、上野桜は五十嵐君のことを好いていた。どいつもこいつも、自分のことが客観視できていないというか。自分がやられるとストーカーだ変態だという癖に、自分がそれに類する行為をすると、これは違うという。頭まで変態しているだろう、これは。


 「,,,なんでこの人たちは体育館をぐるぐる回ってるんです?」


 開始数分で、その異常な光景に私の頭ははてなマークで一杯だった。彼らは、開けた体育館でずっとつかず離れずで回転していたからだ。私の予定では、五十嵐が秋月を捕まえて、その隙に上野がどうにかして動くということになると思っていたのだが…


 『よし! 捕まえたぞ!』


 『触んな! 変態!』


 『ご、ごめん!』


 「五十嵐ぃ,,,! お前は犬ですか! そんな命令聞かずに、とっとと捕まえるなり欲望をぶつけるなりしなさい!」


 五十嵐奏多は秋月麗花にほぼ絶対服従。彼は秋月麗花からのお願い事を断ったことは一度もないと言われている。まさか、そんなことがあり得るのか? 捕まえてしまえばどうにでもできるこの状況で、彼女からのお願い事を優先するなんてことが。


 『桜姉さま! 私を受けいれて!』


 『嫌です、触らないでください。触ったら二度と口聞きませんよ』


 『それは嫌です!』


 「秋月、お前もか!」


 淡々と冷たい言葉を吐かれた秋月は、あと一歩で捕まえられるというところでその手を止めた。彼女もまた、異性に対してはとんでもなく冷たいが、同性に対しては度が過ぎるほど優しいらしい。幼馴染二人組は、どっちも駄目だ。変態のくせに、妙なところで線引きがされている。監禁するのは良いのに、体に触るのは同意制とか頭おかしいんじゃないか?


 「くそっ! 上野桜はどうだ! お前、全国模試で私の一個下の全国18位だろ! 流石にそんな馬鹿なことは,,,」


 『奏多君、捕まえました!』


 「よし! キタコレ!」


 『上野さん、お願いだから触らないでくれ』


 『はい! 奏多君のお願いは何でも聞きます!』


 「ここには馬鹿しかいないんですか!」


 誤算が過ぎる。私が見たいのは、もっとドロドロとした、お互いの欲望をぶつけ合う男女の醜い惨状だ。こんな、ギャグみたいなやりとりを望んでいるわけじゃない。仕方ない、ここは私が何とかするしかないでしょう。世話の焼ける変態達ですね。


 「こらー! そんなお遊び辞めて、もっと真剣にやってください! そんなことしてたら朝になっちゃいますよ!」


 『やはり、僕には麗花のお願いを断ることなんてできない。なら、僕は僕なりのやり方で麗花を落として見せる!』


 「それが出来ないからここに来たんでしょーが! 心変わり早すぎるんですよ!」


 そうだ、こいつスペックお化けのくせして秋月麗花のことになると、極端に馬鹿になるんだった。この馬鹿に期待するのが間違いだったのだ。なら、他の二人に期待するしか,,,


 『ふん! 変態のくせにいいこと言うじゃない、ちょっとだけ見直したわ』


 『あら、あなたも奏多君の良さにようやく気付き始めたんですか? そこは感心しますが、彼はあげませんよ?』


 「なんであなたたち仲良くなってんですか,,,!」


 しまいには、ぐるぐる回ることを辞めて会話し始めてしまった。違う、私はそんな仲良しこよしな関係が見たかったわけじゃないのだ。


 「ちょっと,,,友達みたいにお話してないで、ちゃんとゲームしてくださいよぉ,,,」


 『上野さんも、麗花の良さに気付いたみたいだね。麗花には、他人を認める器量もあるんだよ。そこに着目するとは、上野さんも中々見る目あるね』


 『ふふっ、ありがとうございます』


 『私の前でイチャイチャしないで! 多少は見直してあげたけど、あんたのことなんて大っ嫌いなんだからね!』


 『罵倒の言葉もいいね,,,』


 「無視しないでくださいよぉ,,,」


 もう台無しだ。この日のために色々と準備して、わざわざ三人のスケジュールを裏で調整してきたのに、それも全部無駄になった。ネジが2,3本どころか20本くらい抜けてる変態三人衆を争わせるのは、やはり無理があったのだろうか。


 「あんなに嫌いあってたのに、なんで仲良くなっちゃうんですかぁ,,,」


 『あ、思い出したわ。あなた、中学のクラスメイトの江戸川さんよね? 女子の名前と声は忘れないのよ、私』


 「うぇっ! へ、変態すぎますよ,,,!」


 『あぁ,,,授業中にぶつぶつ言いながら変な暗号書いてた子か。席が隣になって一週間で告白してきた江戸川さん、よく覚えてるよ』


 『私も覚えていますよ。模試で私より一つ上だったってだけで、沢山マウント取ってきましたからね。次の模試で抜き返したら、顔を真っ赤にして帰っちゃったのが思い出深いです』


 「やめろぉ! それらは私の黒歴史なんです!」


 自信満々に順位聞きに行ったら、全部の教科で負けてたあの時の屈辱。勉強が大きな取り柄だった私にとって、それすら奴らに勝てないというのは悔しすぎた。


 五十嵐君の件に関しては、あれは彼が悪い。だって、あんなに優しくしてくれたら、私のことが好きなのかなって思うじゃん! なのに、開口一番「ごめん、麗花以外の女性に興味はないんだ」とか言って、私の純情を弄んだのだ。


 結局、なんやかんや言いつつも私は復讐したかったのだ。私の純情を弄んだ五十嵐奏多と、私が欲しかったものを簡単に捨てる秋月麗花。全て持ってるくせに、勉強すらも勝たせてくれない上野桜に、復讐したかったのだ。


 最後に、嫌がらせをしてやろう。少しくらいは痛い目にあったほうが、この変態達には薬になるだろう。


 「これで終われるかってんです! この学校は防犯装置を切ってありますが、それを再起動して警備会社に通報してやります! せめてお前ら三人とも、不法侵入で捕まってくださ」


 「その必要はないわ」


 「え?」


 声がした方向を振り向くと、何故かそこには秋月麗花がいた。呆気に取られていると、あっという間に視線が下に向いて組み伏せられてしまった。こいつ、手際良すぎです!


 「助けてー! 私はノーマルですー!」


 「あなたは私のタイプじゃないわ。心配しなくても、縛って放置するだけよ」


 「あ、そうなんですか? 良かった,,,いや、そうじゃなくて! なんでここが分かったんですか!」


 この放送室はネームプレートも無いし、見取り図が無ければ倉庫と見分けがつかないはずだ。鍵もかけていたし、この短時間でここを見つけて侵入できるはずがない。


 「それはあれよ、女の子の匂いがしたからよ。鍵もかけていたようだけど、私にかかればこんなもの三秒で粉砕できるわ」


 「あなた、本当に人間ですか,,,」


 呆れた。変態だとは思っていたが、ここまで極まっているとは思わなかった。そこを見誤った時点で、私の負けだったのか。


 「,,,なんか縛り方おかしくないですか?」


 「女の子を縛るって言ったら、亀甲縛りに決まってるでしょ」


 「誰かー! 変態に汚されるー!」


 「あら、中々際どい恰好をなさっていますね、江戸川さん」


 「麗花、それは流石にやりすぎなんじゃ,,,」


 「うっさい」


 ついには変態三人衆がここに揃ってしまった。結局、ただのモブでしかない私が、大それたことをするのが間違いだったのだ。こいつらが、変態すぎたというのもあったが。


 「さて、黒幕さんも捕らえたことですし、これからどうします? ゲームの続きしますか?」


 「これ以上やっても、泥沼な気がするよね」


 「あんたは私に頭が上がらないし、私は桜姉さまの命令に逆らえない。桜姉さまも同じだし、永遠に決着つかないわよ」


 「ではいっそのこと、三人でゴールするというのはどうでしょうか?」


 「お互いに監視し合うってこと? まぁ、桜姉さまが一緒に居てくれるなら、この変態も我慢できるかもだけど,,,あんたはどうなの?」


 「僕は麗花と一緒なら何でもいいよ」


 変態達が妥協案を出し始めた。いや、それよりこのままだと私、ここに放置されないか? こんな格好で廃校に放置とか、冗談じゃないぞ。


 「ちょ、ちょっと! 私のこと置いてかないでよ! せめて拘束を解いてからにして!」


 「それだと、また通報するかもじゃない。大丈夫よ、あなたが用意した密室とやらを堪能したら、解放してあげるから」


 「なんでもするから! 三人がイチャイチャできるように家事から買出しまで、なんでもするから置いてかないでー!」


 若干涙目になりながら、私は懇願した。もう、恥だとか羞恥だとかはとっくに捨てていた。こいつらは、置いてくと決めたら本当に置いていく。そういう奴らだ。


 「まぁ、それは本当ですか? でしたら、私たちのお手伝いとして頑張ってもらいましょう。知らない仲じゃないですしね」


 「うん、流石に可哀想だよ。こうして僕たちのために、色々と便宜を図ってくれたんだからさ」


 「ありがとうございます!」


 私は、とんでもない者たちに手を出してしまったのかもしれない。今更ながら、そんなことを考えていた。


 こうして、私のささやかな復讐劇は惨敗に終わり、その後散々変態達にこき使われるのでした。ですが、この変態達に復讐することを私は諦めていません。五十嵐奏多も、秋月麗花も、上野桜も美男美女です。探せばきっと、三人に恋慕を抱く人もいるでしょう。


 今度はそいつらを見繕って、三人の中を引き裂いてやろう。今回は結果として、変態達の仲介をしてしまったが、きっと今度こそ私の復讐劇を完遂して見せます!


 「よーし! 頑張りますよー!」

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