第4話 衝動
カーテンの隙間から光が差し込み、
その眩しさに目を覚ます。
いつもなら眉間に皺を寄せて苛立ちながら起きていたが、今は爽快な気分で目覚める。
「久しぶりのベッドは、気持ち良いな〜」
隣に眠るクロちゃんを見ると、
お腹を出して寝転がっている。
チョンチョンとお腹をつつくと、
渋い声のクロちゃんが声を出した。
「くすぐったい起こし方は止めてくれ」
相変わらず面白くて笑える。
嫌がるのを無視して遊んでいると、
クロちゃんはベットから逃げてしまった。
「私が目覚まし時計にならなくても、
ちゃんと起きれるじゃないか…」
「吸血鬼になって、目覚めは良いみたい…
でも吸血鬼って光に弱いと思うんだけど」
私の中でのイメージは、吸血鬼は夜しか行動できない。
そのまま学校に行って灰になるのは嫌だ。
「それは安心しろ、ルキアの血は特別だ…
なんといっても魔王の血だからな…」
そういえばサラが言っていた。
吸血鬼の王、でも魔王だったなんて…
とんでもない城に迷い込んでいたのね。
「さて、学校に行く支度をしましょう!」
そして私は制服に着替えて、イヤリングに変化したクロちゃんを身に付けた。
家族には軽く挨拶を済ませ私達は家を出た。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ルミナス魔法学園、全部で8棟の校舎があり、
毎年多くの生徒が入学する。
ちなみに私は中等部2年に所属していて、
成績優秀者の集まるAクラスだ。
「ルキア様、おはようございます」
「おはよう、マリー」
マリーは、男爵家の令嬢だ。
平民ながらも商人で成功した成り上がりの家系だ。
茶色の短髪に大きな目は愛らしい。
誰にでも好かれる振る舞いは商人である両親を見て覚えたのだろう。
そういえばゲームの世界でも私の近くに一緒にいたのは、公爵家との繋がりを持つためだろうか…
「ルキア様、一ヶ月も音沙汰なかったので、
心配していましたよ…」
私は迷いの森に捨てられて無断欠席が続いている。
それを心配してマリーは声をかけてくれた。
「ありがとう、マリー
病気が治って復帰できるようになったのよ」
「だ、大丈夫なんですか?」
私が軽く笑いながら、返事をするとマリーは安堵の表情を浮かべた。
学園の中で私に取り入ろうとする者も多い。
それは何かしらの利益を狙い近づくか、
もしくは悪意を持って接触するかだ。
「ルキア、すぐに教室に行こう、
私は人混みが嫌いなんだ…」
いきなりクロちゃんからテレパシーで会話があった。
一緒に学園に来ておいて、人混みが嫌いだと言い始めた。
我が儘な使い魔だなと心の中で文句を呟く。
「ルキア、聞こえているぞ…」
どうやら口に出ていたようだ。
クロちゃんと話すときは周りに怪しまれないように気をつけなければならない。
クラスが違うマリーとは、ここで別れて自分の教室に向かって歩き出した。
そして階段を登り廊下を歩いていると、
私は強烈な衝動を感じてしまう。
それは視線の先にアイツがいたからだ。
「ルキア、大丈夫か?」
クロちゃんも私の異変に気づいたようだ。
そう、私は強烈な吸血衝動に駆られている。
目の前で他の令嬢に虐められている人物、
この物語の主人公であるエミリアを見たからだ。
エミリアは、現在は平民であるが、
実は王家の血が流れており後に聖女となる。
回復魔法はレベル3だが、数々の試練を乗り越えて歴代最高へ至る存在だ。
「や、やめてください…
私は、そんなつもりはないです…」
「平民の癖にスキルが良いからって、
馬鹿にした目で笑っただろう」
エミリアはシルクのような金髪に、
透き通るほどに白い肌、目も可愛らしい。
とても平民とは思えない容姿に嫉妬されてしまう。
「そういうところが、
前から気に入らなかったんだよ!」
令嬢たちが蹴りや叩いたりと暴力を振るうと私は居ても立っても居られなくなり、
エミリアの手を取り走り抜けた。
「へ?」
「いいから、走るわよ!」
そして、私達は屋上まで走り続けた。
止まらずに走り続けたため、2人とも息が上がっている。
「はぁ…はぁ…」
エミリアの吐息が聞こえる…
それが、私の本能を刺激する…
「あの…公爵家の…ルキア様ですよね?
助けて頂き、ありがとうございます!」
エミリアは、深々とお辞儀する。
よほど嬉しかったのか目尻に涙が溜まっている。
「良いのよ…
貴方が助かって良かったわ…」
私は意識が朦朧としながら必死にエミリアと会話するが、強い衝動に身体がふらついてしまう。
それをエミリアが抱きしめるような形で支えた。
目の前には綺麗なエミリアの首筋が見えた。
私は、今まで以上の強烈な吸血衝動に駆られている。
「はぁ……はぁ」
我慢が出来ない…
今すぐにエミリア…
「ルキア様、大丈夫ですか?
具合が悪いのですか?」
もうだめ…
私は欲望に耐えられない…
「エミリア、貴方が欲しい…」
私がそう口にすると、エミリアは驚きに目を見開き、私を見つめているのであった…
吸血鬼の悪役令嬢〜追放されて復讐を誓った私は魔剣の力で王や勇者でさえも断罪する〜 ゆう @everfree6953
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