第3話 使い魔
迷いの森でオークを倒してから、
無事にルミナスへ帰還することに成功した。
そして昨日は吸血鬼の血液によって、レベルアップを繰り返したが、その後オークを複数倒してもレベルは上がらなかった。
「強い敵を倒すか、血を吸わないと、
レベルと魔力は上がらないのかも…」
森に捨てられてから1ヶ月ぶりに家に着く。
死んだと思われている可能性が高いけど、
ここは平然としていなければ…
今は鬼神化スキルを解いておこう。
魔力がなくなればすぐに殺されてしまうし、
いざという時に発動して対処できる。
「お、お嬢様…
お帰りなさいませ」
執事が私を見るなり驚愕して、慌てている。
それもそうだろう。
私は1か月ぶりに帰宅して服も汚れている。
そして執事がイレーヌを連れてきた。
イレーヌは、驚きに目を見開いている。
まるで私を殺した筈なのに幽霊でも見ているかのように驚愕している。
「私が生きていて嫌だったのかしら?」
「そ、そんなわけないでしょう…
やっと帰ってきて、安心しているのよ」
焦りながらイレーヌは自室に戻っていく。
イレーヌは義理の母だ。
私の母が幼い頃に亡くなってから、新しく家に迎え入れた2人目の公爵夫人。
私を疎ましく思い森に捨てて殺そうとした張本人だ。
「相変わらず、空気が悪いわ…」
そんな中でも唯一私に悪意なく接してくれるのが私のペット、黒猫のクロだ。
小さい頃に母に頼みに頼み込んで飼わせてもらった。
そんなクロが私を優しく出迎えてくれた。
「ただいま〜、クロ」
「おかえりなさい、ご主人」
「はい?」
一瞬、意味が分からないで停止する。
何故クロから渋いおじさんみたいな声がしているのか理解できない。
「そんなところで突っ立ってないで、
部屋に行こう」
「ちょ、ちょっと待ってよ…」
慌てて私は、クロの後を付いていく。
久しぶりの自室に着くと、そこには私の私物が綺麗に捨てられていた。
「はぁ〜?」
私が死んだのは確実と見込んで捨てていたのだろう。
捨てられた物の中には学園の教科書なども含まれており、怒りに震えてしまう…
「今すぐに殺してやりたい…」
でも、ただ殺してしまっては勿体無い気もしてきた。
これは相応の苦しみを味合わせなければ気が済まない。
「しばらくこのまま牙を隠して生きよう」
「それが良いだろうさ、ご主人」
私はまだクロちゃんから渋いおじ様の声が聞こえてくる事に慣れていない。
容姿とはアンバランスな声につい吹き出してしまう。
「ふふふ、やっぱり、
クロちゃんには似合わないな〜」
「仕方ないだろう、
人間にも声の高低があるように、
猫にもあるのだ」
男性のハスキーボイスに思わず、うっとりしてしまう女子もいるだろうが、その声を発しているのは愛らしい黒猫だ。
また一つクロちゃんの秘密を知れたことが嬉しくて仕方ない。
「どうしてクロちゃんの声、
聞こえるようになったんだろう?」
「それはルキアが魔族の血を得たからだろう
私は、もうルキアの使い魔さ」
クロちゃんから言われた魔族と使い魔の単語で頭が一杯になってしまう。
私の攻略情報では、二つとも敵の情報だ。
「つ、つまり私は、吸血鬼の能力を得て、
魔族の血が流れているってこと?」
私の言葉にクロちゃんは無言で頷いた。
そして、更に驚愕の事実を告げられる。
「学園にも魔族は隠れ住んでいる…
人間が気づいていないだけでな」
今まで隣にいた人物がもしかしたら魔族かもしれない。
もしかしたら私のように吸血鬼と同じような魔族が…
「これから、どうしよう…」
「ひとまず正体を隠して生活することだ…
ルキアの魔力は強すぎる…
吸血鬼になった瞬間に近場の魔族には、
気付かれてしまうだろう」
分かってはいたが、やはり自分は強くなりすぎてしまったようだ。
しかし、この先何があるか分からない。
このゲーム同様にイベントを進めて力を獲得していこう。
そして今後についてクロちゃんが口を開く。
「これからどうする?
ひっそりと暮らすか?」
「明日から学園に通い始めるわ
何があるか分からない…
持っている知識を使い力を付ける」
攻略情報は全て頭の中だ。
まずは主人公に出会い、その全てを私のものにする。
その後の事はそれから考えよう…
「よし、私もご主人に協力しよう!」
すると、クロちゃんがいきなりネコ型のイヤリングに変化した。
「これでご主人といつも一緒にいれる…
ちなみに声はテレパシーだから、
誰にも聞こえない」
テレパシーでそんな渋い声が聞こえてくると思うと、笑みが溢れてしまう。
「私の知らない魔族のことは、
クロちゃんが教えてね」
そして、私は明日から学園に通う。
学園とは、ルミナス魔法学園。
この乙女ゲームの主戦場となる場所で、
女子達が男を捕まえるための戦場。
どれだけ良い身分、条件の男を捕まえるか、
女達の骨肉の争いが魔法学園で繰り広げられる。
「クロちゃん、明日起こしてね…」
「おい、ご主人…
私は目覚まし時計じゃないぞ」
そして私は眠りについた。
明日から魔法学園に通い、このゲームと同じ世界を攻略していく。
しかし、予想外の展開に話が進み悩まされてしまうとは思いもしないのだった…
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