『ばすたぶるけのわん』 その7 最終回


 やましんは、さらに、苦境に陥った。


 『まずい。大のほうだい。そういや、便秘で下剤のんだよな。こ、これは、きたあ!く、く、く。まてまて。このくるしさ。並みでない。まてまて。なんとかしなくては。でる、でる。く、く、くるしい。ぎ、ぎ、ぎ………』


 年老いた父が、お手洗いの蓋を開けずに、『解放だ。自由だ。ばんざい? 🙌』と、やっていたことを思い出す。


 父には、後始末するやましんがいたが。


 びーちゃんに、やらせたくはないよな。


 だから、いま、なにか、やらなくては。


 やましんは、ラジオのチューニングをいじり、放送がない所に合わせた。


 搬送波も入らないし、ラジオの性能も低いから、ざざざ、たまに、じりじり、と、雑音が入るだけ。


 ばすたぶに口をくっ付け、放送した。


 『緊急、緊急。太平洋上から、複数のミサイル発射。SLBMの可能性高し。頑丈な場所に移動してください。できれば、地下に入ってください。』


 おおばくち、だったが、これが効いた。


 内部の存在は、おったまげた。


 『な、な、な。それは、絶対的に忌しき単語とされることばのひとつ。ICBM、SLBM。これを聴いたら、直ぐに退避して構わない。絶対的忌避用語だ。緊急退避、発動。』


 すると、その、岩みたいな物体が叫んだ。


 物体は、居場所を認識していたらしい。日本語と英語で叫んだ。 


 『キンキュウタイヒハツドウ。コチラ、ルケノ・ワン。15フィートイナイキンシ。ハンイナイノセイメイハ、スイチュウヒナンセヨ。』



    ビワ〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️ん



 やましんは、とっさに、ばすたぶに沈んだ。


 永遠のような、わずか、10秒足らずだった。


 間もなく、音がしなくなった。


 やましんが、首を、ばすたぶからあげると、何もいなかったのである。


 『な、な。なんだったのだ? ルケノわん、て、なに。夢か現か、幻か。』


 その時、予定外に、びーちゃんが現れた。


 『なに、なんの音?』


 びーちゃんは、まさに、危機一髪だったのである。


 しばらく、ごきさんとか、出なくなった。


 

     ・・・・・・・・・・・



 それ以来、はるかな未来の内部資料に、こんなデータが載った。


 『2022年、当時の東部アジアにて、核による攻撃があったと、推察されるが、詳細はまだ、わかっていない。その後の、いわゆる、第1次核大戦の初動事例であったのかもしれない。きわめて、貴重な情報である。』



       ・・・・・・・・・・

 


 


 

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デジタルオンチーマンシリーズ 『ばすたぶるけのわん』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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