第27話心歪病のない世界で
世界から心歪病はなくなって、何もかも日常に戻った。それでも心歪病でできた縁は残り続けている。実際小鳥遊先輩と冬花に説明をしている。
「それで、あなた達は付き合い始めたのね」
「はい」
「君たちの自由だとは思うけどさー死んだ人たちの責任とれるの?」
心歪病はなくなったし、科学的に叶を犯人とする証拠は絶対にでない。
ただ、被害者はどの災害よりも多かったはずだ。死んだ者は戻らないし、壊れたものは壊れたままだ。心歪病の二次被害的に起きた犯罪だってある。その責任は確かにとるべきだ。
「私たちにできることは何もない」
これが結論だった。僕らはこれからそのことを放ってのうのうと生きていこうとしている。
「そう」
「償い方で正しい方法をとることができない以上、支援という形しかとれないです。僕は正直言って、叶を犯人としてつるし上げてほしくない。わがままですけど、大切な人と普通に生きたいから。その代わりじゃないですけど、デリバリーハピネスのお金は全部被災者の支援に寄付しました。」
「私は責める気はない。私は心歪病で人を殺してる。けど、罪として償うことはしてないから責める権利はない」
「私は納得してないよ。心歪病で苦しんだ。良いことを差し引いてもマイナスだった。」
冬花はマグロちゃんとしての人生を心歪病でなくした。冬花側の意見が多いだろう。
叶を救えて、ハッピーエンドではない。その他大勢をバッドエンドに導いた。
「私たち被害者はあなたに何もできないそれを忘れないで、叶を犯人だと知って、たとえ殺してもその人は罪にとわれる」
冬花は事務所で働く中で多くの依頼を受けて、死や苦しみをもっとも近くで見ていた。冬花自身はたぶん恨んでるわけじゃない。優しいから僕と叶を刺している。友達だから厳しくいってる。
「わかってる。きちんと理解できるようになった。」
「そっかそれなら良かった。でも、私はさよならさせてもらう。」
「冬花さんは友達をやめるの」
「それが責任の取り方」
冬花は去ってしまった。僕の周りが全員幸せになるなんてことはない。
友達が一人いなくなった。これじゃ冬花が一番責任を取っている。一番つらい思いをしている。それはダメだ。僕は追いかけた。
「待って」
「なに」
「僕は冬花を友達だと思ってる。嫌なんだ友達じゃなくなるのは」
「ほんと自分勝手になったね」
「わかってる。それが責任の取り方で罪なら執行猶予をください」
「は?」
「全部をここで捨てないで、もし納得できる日が来たらまた友達になってください」
「ほんとばか、またね」
いつかとは違う言葉で別れを告げられた。僕らにとってもバッドエンドは少しだけましになった。
***
僕と叶はどこにでもいるカップルと同じように日々を過ごしながら、高校では小鳥遊先輩や鎌田、委員長とともに行事をやって、卒業した。最後の日は花束を渡された。
「久しぶり、卒業おめでと」
「冬花さん……」
「泣いてるね」
「卒業したから」
「私が思ってたより、世の中はあの出来事を引きずってないみたい」
「そうなんですかね」
「今日で執行猶予も卒業です。また、友達になろう」
「今日はいろんな記念日になりそうです」
「私マグロちゃんになろうと思うんだ」
「まじ」
「うん、一年ちょっと社会人やってみてようやく人と関われると思ったから」
「推し確定だ」
「叶怒るんじゃない」
「怒らないよ。僕が叶を一番愛してるってことは一番理解してるから」
「噂をすればなんとやらだね」
車に乗った叶が車窓から顔を出した。
「迎えに来たよ、小鳥遊さんとね」
「卒業おめでとう」
「これから家でお祝いを開くけど、冬花も来る?」
「もちろん」
「鎌田くんと橋本さんもぜひ」
「ありがとうございます」
「やったー行きます」
この日が僕らにとって本当の意味で心歪病を乗り越えた日なのだろう。
バットエンドで終わろうといつかハッピーエンドとなる日が来るはずだと信じてから一年とちょっと。笑えているのはここにいるみんなのおかげだ。
ジュースの入ったコップを持って蟹蟹蟹蟹蟹尽くしクリームピザを囲む。
「「「「「「乾杯!!!!!」」」」」」
君が好き〜あなたのために心歪病を解決します〜 さかな @fog-sky
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