最終話 魔法少女、付き合っちゃいました!?

あの出来事の翌朝。

俺は自分の身に起きたことが信じられず、

放心状態のまま、学校に登校するべく歩いていた。


魔法少女で、同級生の女の子と、抱きしめ

合ってしまったのだ…。

あの時の感触、匂い、いろんな物が蘇ると、俺は悶々とした気持ちになった…。


なんだか申し訳ない気持ちだ…。

本当に俺なんかで良いんだろうか…?

甘崎さんは、もっとイケメンで素敵な男性といくらでもお付き合い出来るであろうに…。


『 ボ ッ カ ー ン ! 』


しばらく歩いていると、聞き覚えのある音が

辺りに響いていた。

この方角はあの時の公園だろうか…。

魔法少女マジカルスイートと初めて会った、

あの公園…。


噴水のある少し大きな公園にたどり着くと、

巨大な将棋の駒に手足が付いた怪物が、

二本足で立っていた。

何を言ってるか分からないと思うが、

俺も分からない…。なんだあれは…。

てっきり生き物だけかと思っていたが、

ああいうタイプもいるのか…。


「お待ちなさい!」


聞き覚えのある声だ。

甘崎さんが勢いよく駆けてきた。


「ここは私にまかせてっ!!」


甘崎さんはパチッとウインクをしてきた。

なんだそれ…。可愛いなオイ…。


今、この公園には俺と甘崎さんとあの変な

将棋の駒しかいない。思う存分変身出来るであろう。


「結心!変身だプニョ!」


相変わらず怪しげなマスコットキャラも

一緒にいた。あいつは俺がしっかり監視

しなければと思った…。


「マジカルチェーンジッ!!」


甘崎さんがそう叫ぶと、全身が光に包まれ、

服が弾け飛んだ。…そうだった。

変身シーンのことを忘れていた…。

相変わらず刺激的な変身シーンだが、

本人は恥ずかしくないのだろうか…?


抱きしめ合った体の感触通りの、美しい

曲線美が俺の前に露わになった…。


相変わらず、光り輝いているので、

大事な部分はよく見えないが…。


「甘い香りでも甘くない!!」

「魔法少女マジカルスイート!!」


…この決め台詞は、甘崎さんが自分で考えたんだろうか…。俺は少し気になった。

甘い香りなのは、揺るぎない事実だが…。


そんなこんなで、将棋の駒は、昨日

パワーアップしたマジカルスイートには

手も足も出ず、フルボッコであっという間に

やられて、元の将棋の駒に戻ったのだった。


完全勝利したマジカルスイートはごきげんな

様子で変身を解き、甘崎結心さんに戻った。


すると、甘崎さんはてててっと可愛らしい

足音を鳴らしながら、俺の方に駆け寄って

きた。


正直、俺は昨日彼女と抱きしめ合った後

なので、とても気まずい気持ちになって

いた…。

顔を合わせたら一体何を話せば良いのかと…俺は緊張しながら彼女を見た。


「君、見ててくれた!?今日あっという間に

 倒せたよね…!?最速記録更新したかも

 しれないよ!」


「凄かった…?頑張った…?偉い…?

 そ、そう…え、えへへ…。」


俺は自分の語彙力の無さに絶望していたが、

どうやら甘崎さんは喜んでくれたようだ。

じゃあ学校行こっか。と俺が踵を返そうと

すると、制服の裾が後ろから引っ張られた。


「あ、甘崎さん…?どうしたの…?」


甘崎さんは子犬のような瞳をうるうる

させて、もじもじしながら物欲しそうな顔で、俺のことを見つめている…。


ど、どうしたんだろうか…。早く学校に行かないと、また遅刻ギリギリになってしまうのだが…。


「…ん。…むぅ。」


「あ、甘崎さん…?」


「あ、あ…頭…。」


「…え?」


「頭、撫でて欲しいなって…。

 だ、駄目…かな…?」


「!!!!」


女性は髪が乱れるのを嫌がりそうだと思っていたので、俺は正直迷っていたのだが…。

彼女の方から言ってくれたのでありがた

かった…。俺も頭を撫でてあげたくて

しょうがなかった…。


なんか変なプニョプニョした生き物に

見られているが…気にするもんかと思った。


「…ん。」


「…ふふっ。…ありがとう。」


「君の手、大きくて、でも優しくて、

 私、大好き…。」


「こんな私だけど…よろしくね…?」


俺は絶対、この可愛らしい魔法少女で同級生の尊い彼女を、不幸にしないと心に誓った。

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魔法少女、バレちゃいました!?『あなたの心を離さない“魔法少女な”あの子』 ざとういち @zatou01

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