第1章 第2話
中々寝付けずにキッチンで冷蔵庫を漁っていた。
「ちょっとリック!何してるの!!」
「いや、なかなか寝付けなくて...」
「また太るわよ」
説教が始まるかと思われたとき、突然仕事用のスマホが鳴った。なんとか助かった。
「チーフ!!アーロンですテレビをつけてください!!」
アーロンは軍人時代の部下で、自分が引き抜いて連れてきた信頼できる武官だ。銃撃戦でも冷静だったが、珍しく興奮している。
リビングでテレビを小さい音で付けた。画面には中東のある国で爆発事件とのニュースがやっていた。
「状況は?」
「正直何もわかってないです。今そっちに向かってます。10分くらいで着きます」
「わかった、準備する」
門番にアーロンが来ることを連絡した後、スラックスとボタウンダウンを着てからキッチンで顔を洗った。
「リックどうしたの?まさか」
「正直わからない、今から行ってくる。戸締りをして寝てくれ」
「分かったわ、気を付けてね」
「ああ」
門番からの連絡があり車に乗り込んだ。
「今わかっていることは?」
「ホテルで大規模の爆発があったようです。そこで政財界の有力者を集めたレセプションがあったそうです、生存者はわかっていません。
アーロンが焦るわけだ。
「メンバーは?」
「緊急招集をかけました」
「よし、着いたら地域担当官と中央の爺さんをたたき起こそう」
「爺さんからは連絡がありました。明朝一番の便で来ると」
今回の事件の関係者はよっぽどの大物らしい。爺さん事ラリー・ハウは冷戦中に活動し現場からは退いたものの、今は報告書に何を載せるのかを決めれるポジションにいる。つまり、巣穴から引きずり出した形になるが、引きずり出した奴に同情するほどラリーは手強い。建物につきオフィスにつくとグループに声をかけた。
「明日の朝までにとにかく何でも良いから情報を集めるんだ」
「リック中東担当官がつきました」
「通してくれ」
急いでて来たのであるうTシャツとジーンズといったラフな格好だった。
「オマル、現在わかっている情報は」
「現地は大混乱です。当局には、生存者を調べる技術も機材もないですし、救助されたとしても満足な治療を受けることができるのは、政財界の有力者だけでしょう」
「わが国が介入はできないよな?」
「できません。テロでないとしたら手出自体無理です。テロだとしても国内の混乱を認めることになるので、認めることもあり得ません」
「衛星は?」
「現在位置調節中です。それと、今現在は被害者の身元を伏せているので、攻撃をたたえる投稿や書き込みはないですし、どこのグループも犯罪声明を出していません」
オフィスに設置されたモニーターからは現場を遠くから撮影している映像や静止画が流れている。
「アーロン情報はどこから?」
「大使館警備の海兵隊員からですJSOCの任務で何回か組んだことがあるやつです。アラビア語ができるので大使館警備に配置転換になったんです」
「大使館からは何かあったか?」
「大使館は全面協力の申し出はありました」
「当然か、奥方が犠牲になっているからな」
こんな状況じゃ関係者が増えすぎて、作戦や自分のチームが活動しにくくなる。統合作戦本部も首を突っ込んでくるだろうし、中央の政治にも巻き込まれそうだ。越境暗殺作戦を決行して以来、意思決定過程の時点から軍事作戦がオプションの一つに入ってて来る。そうなると、ろくに情報がないうちに人員を送り込むことになる。それだけは避けたい。
「オマルそっちのチームは?」
「情報分析官は全員来てます」
「仮眠を交代でとらせながら
「わかりました」
「あと爺さんが来る前にスーツに着替えた方がいい」
自分のチームはみんなエナジードリンクを飲みながらパソコンと睨みあってる。
現状できることはないが、何かできるかを考えてないかしらやるしかないのも現状だ。
朝早くにビジネスジェットに乗るのは初めではないが、いつもよくない時だ。東西冷戦の頃は正直わかりやすかった。コミュニストとそれ以外、もっと言うとソ連とそれに対抗する国や組織を支援したりするが、表立って直接対決はしない。だが、ソ連崩壊後の戦略は対麻薬や対テロリストいった相手が対象となってきた。そういった相手は無数に枝分かれし、頭を潰しても新しい頭が生えてくる。ルールなしの何でもありだし、色々な機関や組織が関わりすぎている。関わる人が増えると情報が漏れやすくなる。今回も中央を含め既に色々首を突っ込んできている。手綱を取りたがる上がいるのも問題だ。現場では事態は複雑かつ流動的なので判断を仰ぐ暇などないが、勝手に動くと後で面倒になる。だいたい現場を知らない連中のやりそうな事ではある。その点リックは現場経験も戦闘経験もありチームメンバーも優秀だが、自由に動けなくては本来の能力を発揮できないのはわかりきっている。今回のやるべきことは渡す情報と渡さない情報を判別し、中央の力を削ぐことだ。知る必要のない情報もあるのだ。
明け方まで交代しながら、情報を集めてくれたスタッフに仮眠をとらせた。その間に、アーロンとオマルを呼んで爺さんにあげる情報を纏めた。
「オマル
「特にないです。爆発があったこととそれに付随して起きた火事が消火されたことくらいです」
「アーロン?」
「友人は大使館の友人は部隊の再編と編成で手一杯みたです。追加情報はなにも」
「衛星はどうなった?」
「火事の影響で赤外線でも特に収穫はないです」
警備から爺さんがついたとの知らせが届いた。アーロンとオマルにそれぞれ情報分析官を起こしに行かせた。近くの会議室の電気をつけ、洗面に顔を洗いに行った。そこにハウが入ってきた。
「年取るとトイレが近くてかなわん」
「会議首が用意できてます」
顔を拭きながら鏡越しで話した。
「前に会った時から少しふとったか?この国に赴任した時は痩せる筈」
真顔で冗談を言ってくるのでいつも判断に困る。
「コーヒーか紅茶を用意させますか?」
「エスプレッソをバリスタに作らせてくれ。居ればだが」
ハウの下で働いていた間に情報機関のイロハを学んだ。軍部からこちらの機関に移ったのも彼の勧めがあったからだ。
「用意させまさす。会議室に案内します」
会議室は情報分析官が使うデスクトップが並ぶデスクと自分の個室と大体等間隔にあるガラス張りの部屋だ。
「オフィスもだいぶ変わったな。ガラス張りで、まるでSF映画に出てくる部屋みたいだ」
「色々透明性が必要ですから」
「ジョークのキレが悪いぞ眠いのか?」
「まあ、そんなところです」
会議室に着くと、アーロンとオマルが待っていた。
「お久しぶりです。アーロンです」
「武官を引き抜いたとは聞いていたが、彼を引きぬいたのか」
「優秀ですから」
「あのお前が熱を上げてた憲兵かと思っていたが」
「今はリックの奥さんですよ」
「世帯を持ったのか?女はソ連のスパイより強敵だぞ?」
オマルが唖然としていた。
「どうした、君はどこの担当だ?」
「中東担当官のオマルです。伝説的な人物を目の前にして」
「ただの老人だよ前時代のな。それより報告を」
会議室のモニターが見える位置に全員座った。アーロンがスライドをポインターを使って画像を出しながら始めた。
「正直何もわかっていないです。ただ、爆発があった後に火事が起こっていたようで生前者はいないようです」
「爆発のパターンや爆発規模は?」
「オマルが衛星の位置を調整して確認しました。黒煙が酷くて赤外線で観測したのですが火事での建物の崩壊なのか爆発での崩壊かはやはり現場でないと」
「ドローンを飛ばせないか?」
「同盟国からのドローンを発進すれば航続距離的には可能ですが、敵国領空を通るので撃墜もしくは鹵獲される可能性があります」
ハウがカバンから書類を出した。
「ご丁寧に先方の大使館から介入は不要との連絡が来たよ。まあ、テロでああれ何であれ自国の要人が死んでる以上自国で解決しないと、内戦に逆戻りするのは目にみえてるからな」
内線の卓上スピーカーでオマルの情報分析官の
「まだ裏は取れいませんが、昨晩港湾都市で警備員の7人が射殺体が発見されたようです。襲撃を受けたのは開発企業の倉庫のようです」
「オマル射殺体の状況はわかるのか?」
「恐らく複数犯で訓練された人員かと」
「なぜわかる?」
「はい、門番は脳幹をうたれ、監視塔の監視員はバイタルを撃たれてます。極めつけは地上にいた残りの4人は確認殺害をしっかり行っています。」
「それを聞く限りテロリストじゃなさそうだな。リックその近辺で軍事訓練を受けた集団の行動は確認されているか?」
「報告は上がってきていません。それに訓練を受けた少数の工作チームであればこちらのレーダーにかからない方法もここれえておるでしょう
「それもそうか」
「アーロン一海兵隊の警護チームに小規模の工作チームが展開している可能性があると伝えてくれ」
「わかりました」
リックは自分のデスクに向かった。
「それにしても開発業者の倉庫を襲うわけが分からん。攪乱するなら大規模にやらなければ効果もないどろうし。オマル盗まれたもののリストは?」
「軍が棋聖戦を張ってるせいで現場には入れないそうです。
「全くこれじゃ中央は勝手な妄想を膨らませるな。今回のレセプションパーティーは非公開だったのか?
「招待制でしたが、別に秘密というわけでもありません」
「情報はどこから漏れた?」
「どこからでも、大使館の現地職員や政府高官のメイドや庭師など上げたらきりがありません」
「そうかオマル引き続きチームと情報を集めてくれ
「了解です。失礼します」
足早に会議室を出て行った。
「なあリック、今回の事件は不可解な事が多すぎる。テロだとすると、標的は大使の奥方か政府高官だというのは納得できる。だが目的はなんだ?外国人を殺すだけなら空港や近隣諸国のリゾート地を襲った方が手っ取り早いだろうに」
「可能性ですが、この国自体が微妙なバランスでなんとかなりたったいます。この国で内戦をやりなおしたい勢力がいるのかもしれません」
「なら声明がないのが不可思議だ。武装闘争なら攻撃を大々的に打ち出し民衆をあおるはずだ。これは出席者をあらいだすしかないな」
「チームに洗うよう伝えます」
長い一日が始まることはわかっていたが、今回は何を探せばいいかもわからない状態だった。
部屋で仮眠をとっていると所をオマルに揺り起こされた。
「どうした?」
「鎮火ができた現場が資産アセットから映像が来ました。報道ヘリからの映像なんで荒いですが、爆発のパターン解析させたところ、どうやらアンホ爆弾の爆発かと。それがどうやらガス管に引火したみたいです」
「狙っていたか?」
「そこまでは...」
「となると工作チームの線は薄いか?」
「情報が少なすぎてなんとも。わかりません」
「とりあえず報告会が30分後にある。今ある情報を集めて纏めておいてくれ。それとリックすこし話せるか?」
リックのオフィスに入り扉を閉めたあと、ハウは懐からシガレットケースを取り出しマッチを取り出し手巻きの煙草を深々と吸ってから話した。
「吸わないのか?」
「全館禁煙ですよ
「言わなきゃバレない。禁煙したのか?」
「妻に言われて」
「言わなきゃバレないだろう?」
「匂いでバレます」
「やはりソ連のスパイより女は手強い」
ハウがシャッツの第一ボタンを開けながら話始めた。
「大統領はFBIのテロ対策班を投入する腹づもりだ」
「つまり?」
「情報 、機材、人材を始め奴らが欲しがっていたらマグカップも提供しなきゃならん」
「ここの指揮権を渡せと?」
「それは無い。当局から被害者にアメリカ国籍が複数人いて高官が含まれるので、捜査官の派遣を受け入れるとの回答があった」
「要は自分達を送るなって事で」
イスラエル陣営とシリア陣営で危うい均衡が保たれていたが、そこにアメリカが大義名分のもとに参入してくれば近郊は崩れ、良くて国土が文字通りに焦土に帰すことになる。
「政府としはテロより事故として処理したい。天然資源の利権に反発した地元民のテロとなったら部隊を展開してもしなくても政権は終わる。向うの当局もイラクの二の舞は困る。利害の一致っことだろう。」
「送るのも上級特別捜査課様方。まあ、政治家だな」
「あなたが来た理由は?」
「支援要員としてアラビア語とペルシャ語を話せる局員をねじ込んだ。彼ら諜報と防諜班から引っ張ってきたからやつだ。彼らに状況を知らせる為に誰かをサウジに送ってくれ。リック君は残るんだ」
「何故です?」
「DCから上級特別捜査官殿が来るんだ。管理職員の君がいないと馬鹿でも不審がるし、今夏の件につての情報に関してのみの情報提供だ。それ以外の件以外に関しては教えてやる義理はない。」
「ねじ込んだ局員とは?」
「彼らは国内でのでコミュニティに対しての作戦行動をしてる。こっちの領分の人間だし、DIAやDHS手を出せない状況で活動してる。」
「リックが行けないなら、自分が行きます。今回の騒動で大使館にされた海兵隊の指揮官とは面識があるので、彼ら話を通しておけば何かと融通してくれるでしょう。」
「クリアランスは大丈夫なのか。」
「TER1とは行きませんが、JSOG関連の友人なのでそのあたりは心得ていますし、彼から情報の問い合わせがあったので現地情報もある程度わかるかと。」
「なら早ほうが良いな。ドイツまでは呼び出せててこれから同乗shてくれ。そこからは軍用機でサウ入りしてもらう。今から向かえばちょうどいい位だろう」
ワイヤー @vandraku
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