第12話 命を賭ける
「結構登ってきたんじゃねえか?」
「そうね、多分二十階くらいは登ったと思う。でもダンジョンって登りきるまでは何階まであるのか分からないの。もしかしたら百階まであるなんてことも……」
「百階!? お前俺がいなかったら絶対死んでたぞ! ここまででも結構ギリギリだったのに」
「普通ダンジョンってチームで入るところだからね。死んでたかもしれないのは反論できないな」
「あア?」
言っている意味が分からない。
つまりこいつは死ぬつもりでダンジョンに来たのか? 全く理解できねえな、生きてりゃあ良いことなんていくらでもあんのによ。
「死ぬ気はないよ。ただ死ぬ覚悟があっただけ。それだけ神器っていうのは強力な武器なの」
「お前も最強目指してンのか?」
「まさか。考えたことも無かった」
「じゃあお前は俺より馬鹿だな」
「は?」
「俺は夢の為には命賭けれるけどよぉ、それ以外のことに命はかけねえんだ。一番大事なのが命でえ、二番目が夢だからな」
「アンタの夢って」
「日々更新中。いっぱいあるぜ?」
そう、夢は多けりゃ多いほどいい。目標も増えるし、何より生きることの楽しさが増えるからな。でも夢を実行するには命が必要だ。
だから一位が命で二位が夢。これだけは譲れねえな。
するとアサは急に暗い顔をした。
「アンタの夢なんてどうせ王国の連中への復讐とかそんな事でしょ。そんなことで勝ち誇らないで欲しいな」
「復讐~? んな暗えこと考えてても暗くなるだけだろ。面白くねえし」
俺は口角を意識的に釣り上げた。
「夢のためには命賭けられっけど人のためには賭けられねえなあ」
「……っ」
アサは再び何かを言いかけたが、口をつぐんだ。
俺はアサのことをほとんど知らねえが、分かることもある。
きっとこいつはあれだな、間違いを指摘してくれる友達いなかったんだろーなあ。まあ分かるぜ俺も友達いねえからなあ。
全く世の中むずいよなあ。人の気持ちとか考えて誰得なんだっつーの。
「まあ機嫌直せよ。友達が欲しいなら俺がなってやるからさあ」
「何で上から? と言うか何でその答えに至ったのか分かんないんだけど」
「え、違えーの?」
「違うしアンタとは友達にならない」
「うへえ」
俺は血で汚れボロボロになった剣を眺める。
血で赤くなった部分を指でこすってみる。こすったところの汚れが剥がれ落ち、爪の間が赤くなった。
「今までは全部この剣で倒せてたけどよ、次はもうもたねえかもな」
「……斧、使ってなかったもんね」
「おー、まあお楽しみは最後に取っとくもんだろ」
「そ」
まあ実際はどうやって小さくなった斧を元の大きさに戻すのか知らねえだけなんだけどな。
秘密道具も扱い方を知らなかったら、ただのゴミになっちゃったなあ。
と、ここでアサから鋭い突込みが入る。
「とか言いつつ、縮小テープの戻し方知らないだけなんじゃないの?」
「……お前、すっげえな。クラススキルか?」
「バカ」
バーサーク勇者~クラスで異世界転生しても、俺だけ悪役ポジションらしいのでどの勇者よりも強くなってダンジョンも全部ぶち壊す~ 多雨ヨキリ @tauyokiri
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