第2話
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「はぁー…」
高校生になって初めて口から出たのは、ため息だった。
俺の今日のシュミレーションは完璧だった。推敲に推敲を重ねて(文章ではないが)、話しかけられたときの最善の返しをあらゆるパターンで考えた。
それなのに、どういうことだ?誰にも話しかけられない。
自分で言うのも何だが、顔はイケてる方だと思う。
そんなくだらんことを考えながらふと、教室の入り口に目をやった。
人集りができているではないか。
あの中心にいるやつか、俺の華の高校生活の出鼻を思っきしへし折ったのは。
どんな面してんだ。
そう思ったとき、ちょうど人と人の隙間からそいつの顔を見ることができた。
見えたのは一瞬だったが、俺の心を完全に壊すには十分にわかる時間だった。
アレは勝てねえ。
なんかもう次元が違いすぎて、むしろ心が浄化されてしまった。
俺が愚かでしたお許しください、と心のなかで全力の土下座をした。
第一印象がありがとうございますなのは初めてだった。
そうは言っても話しかけてくれたやつはいたわけで…
初対面ですっかり意気投合した俺達は、初対面だったが、たまたま帰り道が同じだったので、一緒に帰ることになった。
そいつの名前は清里久遠といった。話題はまあ予想どうり…
「入学式早々えっらい美人いたなー」
「今日の出来事と言ったらそれしかないしな」
そう言って俺は軽く笑った。
「でもさ、せっかく同じクラスになったんだし一回くらいは話してみたくね?」
「お前見かけによらず多くを望まないタイプなんだな」
「うおいっ俺はどんな見かけしてんだ」
久遠は初対面でもノリがいいタイプだった。
一緒にいて波長が合う。
とにかく初対面あるあるのきまづい雰囲気は避けることができそうだ。
「白夜はどうよ、あの美人」
久遠がニヤニヤしながらこっちを見てくる。
あ、そうそう俺の名前は木村白夜。
すっかり自己紹介のタイミングを失った。
まあそれは置いといて。
「別にどうもねぇだろ。あんだけ顔が完璧だと存在してるだけで感謝しかねぇよ。」
「お前…」
「何だよ」
「べた惚れじゃねえか」
「なっ…、違えだろ!俺は!高嶺の華だって言ってんの!」
「あーそっちね」
「そっちってどっちだ」
俺たちはいつの間にか別れ道についていたが、立ち止まって話していた。
「まあ確かになぁー。でもああゆう美人に限って性格悪いやつ多いから、気をつけろよ?白夜」
地味にニヤついてるのが腹立つ。
「でもってなんだよ、違うって言ってんだろ!」
「あーはいはーい、じゃあまた明日なー」
久遠がヘラヘラ手を降りながら、自転車こぎだして、右へ曲がっていった。
俺は久遠の行った言葉を、もう一度頭で再生していた。
ー美人に限って性格悪いやつ多いからな
そうか、まあそうだよな。
いや、でもまだ話したことないし…
別に彼女のことを好きだとか、そういう気持ちはほんとになかったのだけれど、彼女に対して勝手な理想を抱いていた分、少し心に靄がかかったような、どことなく悲しい気持ちになった。
俺はペダルにかけていた足に力を入れ、左へ曲がった。
雪解け 美湖 @sayonarasankaku0655
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