関わるだけで相手に頭痛や吐き気を与えてしまう「呪い」を抱えた少女の物語。苦痛と不幸を振りまくことしかできないと自覚した少女は人との関わりを避け、1人で過ごすようになる。
そんな日々が、中学への進級を機に変わっていく──。
一人称の物語。主人公の少女が持つ呪い故に、物語全体には暗く、鬱々とした雰囲気がたちこめています。一方で物語はテンポよく進み、内容は辛いけど読むことは辛くない、そんな印象を受けました。
物語は人との関わり合いの中、自身の呪いに振り回される主人公に主眼が置かれています。その心理描写は繊細で、何度も何度も“諦めてきた”主人公の性格や考え方がよく伝わってくる。期待せず、拒絶して、遠ざけて、相手と自分を守る。そんな臆病さと優しさが垣間見えました。
だからこそ、呪いを気にせずグイグイ来る彼や彼女に困惑してしまう。いつものように諦めさせてくれず、少女から言い訳という逃げ場を奪って、心の奥底に閉じ込めていた感情を引き出してくる。そうして、冷たい世界を生きてきた主人公がじわりじわりと温もりに包まれていく様は胸が温かくなりました。
一方で、呪いが消えたわけではありません、人と触れ合うたびに主人公が見る呪いの“影響”。各所に散りばめられたそれが本作ならではの薄暗い雰囲気を醸し出し、緊張感を持続させてくれる。そのおかげで訪れるであろう未来に期待を抱き、やがて訪れる“大きな転機”にも妙な納得感がありました。
こうして作り出された世界観だからこそ、途中で明かされる呪いを解く方法、つまりはある種の救いがとても輝いて見える。一体、主人公はどうやって呪いを解くに至るのか、作風と相まってとても興味をそそられました。
個人的には、各話の冒頭にある主人公の一人語りが好きで、物語の空気感に没入できる素敵な部分だと思いました。
人と関わるようになり、人生最大と言ってもいい苦難・転機を何度もくぐり抜けた先。主人公はどんな結末を迎えるのでしょうか。救いなどなく鬱々としたものか。それとも、例えば呪いを解いた晴れやかなものになるのか。どちらでも納得できそうな、一風変わった魅力のある作品。
暗くジメッとした雰囲気の作品が好きな方には特にオススメしたい作品です!