恋人#9
愛とは、恋とは、付き合うと言う関係とは、恋愛とは、双方が互いに愛し合って成り立っているのだとしたら、私は酷い人間なのだろう。彼に求め、彼に縋り、愛すことはしても、愛されることは無い。私たちは本当はそう言う関係なのかもしれない。
「ごめん、待ったかしら?」
「全然、今来たところ。」
デートではお決まりのような、決まり文句を互いに口にする。今日は12月24日。クリスマスイブであり、聖の一日と言われる日でもある。私たちは冬休みに入り、初日にデートの約束をしていた。いわゆるクリスマスデート。
「なんて言うんだろ、、今日も、似合ってるよ。、、」
ただ口元を隠し、顔を真っ赤にして照れながら秋田くんはそう言った。
「ありがとう。頑張って選んだから嬉しい。」
少し男らしく、暗めのジーパンに白くて薄いトップにを中に着て、外から水色のシャツ。
最後に上から分厚目の深緑のコートを着選んだ。女らしくスカートを履いてこようか迷ったが寒いのはあまり好きじゃ無い。それにこれで風邪をひいてしまっては元も子もない。
「イルミネーションまでまだまだ時間あるしどこか回ろうか?」
「そうね。あれなんてどうかしら?」
「良いね、コーヒーカップ」
私たちは有名デートスポットとされるフェルターパークに来ていた。流石有名デートスポットなだけはあり、昼頃でも多くのカップルが入園していた。みんな夜のイルミネーションを楽しみにそれまでの時間をパートナーと一緒に過ごしている。
「20分待ちか、大丈夫?」
「もちろん。」
私は秋田くんに返事をし空を見上げる。まだ冬とはいえ真昼の太陽は日差しを強く届けている。ほんのり汗をかくような暑さだ。
誕生日に理央さんから貰った香水は汗に反応して匂いが強くなるらしい。まだ秋田くんは気づいていないけど私はほんのりと花の香りに包まれる。
「夜のイルミネーション楽しみだな。」
「まだまだ先よ。私がそれより楽しいことさせてあげる。」
「ほぉ、なかなかに自信ありげじゃないか。」
「まぁね。私だってこの日を楽しみにしてたんだから。」
「なら俺も君に負けず劣らず頑張らないとな」
「どこで張り合ってるのよ。」
私はそう言って苦笑する。それに釣られ秋田くんも「ハハッ」と吐息混じりに笑う。
「この後どうする?」
「ジェットコースター以外ならなんでも良いわ。」
「絶叫系苦手なのか?」
「高いところが苦手なのよ。」
「へー、じゃあ乗れそうなものあるかな?」
「観覧車とか乗ってみたいわ。」
「おもっくそ、たけぇじゃねぇか。」
「観覧車に乗りながら夕陽を見る。幻想的で素敵じゃない?」
「じゃあ、観覧車も乗るか。」
「そうだね。」
この1秒1秒を胸に刻み込んだ。暖かく、温もりのある時間を、ずっと彼と共に過ごしたいと思っていた。
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