恋人#8
本当の愛、本当の恋、そんなセンチメンタルな言葉を恥ずかしいと思うようになったのはいつからだろうか。生きる意味とか哲学的なことを考えたところで答えは出ないのに考え続けるのは何故だろうか。
「よーし!リベンジマッチだ!」
先週の水曜日から金曜日に行われた期末テストのテスト返却。土日を挟み、点数が気になると言う欲が膨れ上がった生徒たちは期待と絶望で胸を埋めていた。
「期末テストの時は副教科も合計点数に入れて勝負するのかしら?」
「普通は5教科じゃね?てか副教科も入れるとリベンジマッチにならねぇからな!」
「そうなのね。今回も私が勝つのだけれど」
みんなには当たり前なのかもしれない、テストの点数で競い合うということがまだ慣れていないため勝ち負けの感覚があまりない。
「俺今回400行ってるかなー?」
「前回は確か私が440点、秋田くんが432点だったかしら?」
「うへぇ、なんで覚えてんだよ。」
「脳の出来が違うのよ。あなたとは。」
「わざわざ倒置法で強調しなくて良いんだよ。あとその言葉覚えとけよ。後悔させてやる。」
「しっかり覚えておきます。その言葉と一緒に。」
2人とも言葉は強いが嫌味も妬みもなく、ただただ楽しさと面白さにかられながら話していた。
私たちの学校では期末テストのみに副教科のテストがあり、音楽と技術家庭科、美術だった。そしてそれらは50点満点という少し複雑な形式だった。
結果はと言うと1日目の国語、社会、音楽の出来は良く、私は国語90点、社会86点、音楽46点だった。秋田くんは国語が92点、社会80点音楽38点となっていた。1日目のテストを見ると私の方が4点高い。
木曜日は数学、英語、技術家庭科の順となっていた。私は数学92点、英語80点、技術家庭科が42点であり、秋田くんは数学が脅威の満点、英語は76点。技術家庭科は37点だった。
テスト2日目、秋田くんは英語のテストが終わるとすぐ私の席に来て、「英語やらかしたー」と言っていたので予想はしていた点数だったらしい。英語を差し引いても数学の満点は尊敬した。学年で3人ほどらしい。
テスト最終日は残りの社会と美術だった。私は社会84点。美術は39点だった。秋田くんは社会が85点、美術は31点となっていた。私は5教科だと1点、秋田くんに負けてしまった。
「ほらなー!言っただろ!山梨さん?誰が頭の出来が違うって?」
「副教科入れたら勝ってるもん。」
少し頬を膨らましそう言った。次は勝つぞ。と負けず嫌いの精神を出しながら。
でも、私にも秋田くんにも『次』は来なかった。
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