恋人#5

 誰かと競い合える。そんなライバル的な存在を、羨ましく思ったりする。いつも自分の敵は自分で、立ちはだかる壁は呪いだけ。お互いを高め合える存在が欲しい。そんな願いもまた一つ彼が叶えてくれるのだろう。


 中間テストが終わり、テストの余韻である土日も終わり、テスト返却日となった。

「テスト返ってくる時の方が緊張するよな。」

「そうね。緊張しても何も変わらないのにね。」

「ちなんで前回のテストの点数は何点だった?」

「私は467点だったわ。」

「ひえ〜」

「何よ、ひえ〜って」


 あからさまに変な目を向けられている私は少し嬉しいような、照れ臭いような気分になった。


「座れー。」

数学の教師が入ってきて秋田くんは自分の席へと戻っていった。


「今日は知っての通りテスト返すぞー。じゃあ1番、秋田〜 2番、、、、」

出席番号1番目の秋田くんは毎度1番最初に返される。


「おっ!96!俺天才じゃね?」

「スゴいじゃない!!計算ミスして無ければ満点じゃない。」

「俺の中では36÷3=13なんだよ!」

 円錐の体積を求める問題での小さい凡ミスで満点を逃した秋田くんは悔しがるでもなく、笑っていた。


「19番、山梨〜 20番、和歌山〜、、、」

私は比較的最後の方なのでこう言う少しの会話ができる。

「あっ、、94点、、」

「しゃぁ!おんなじとこ間違えてるし。」


 回答用紙を覗くなり、拳を高く上げガッツポーズした。

「あなたのは計算ミス。私のは単位の書き忘れ。私の方が惜しいは。実質同点よ。」

「わけわからん。」

そう言ってくすくすと笑いあう。


 その後もテスト返しは続いた。

「うわー社会87かぁー、、追いつかれたか?」

「残念追い越したわ。」

そう言って91と書かれたテストを見せびらかす。

「次の国語で追いつく!」

はっきりと秋田くんが断言する。


 国語は好きなのだがいまいち点数が伸びず、少し苦手意識がついてきた。もしかしたら追いつかれるかもしれない。

「よし!90!どうだ?」

「88点だから、、同点じゃない?!」

「有言実行!さすがは俺様だ。」

「まだ私は得意なの残ってるよ。」

「英語は点数やばいってぇ〜、、」


「理科は、、85!」

「高くない?私80なんだけど。」

「はっはっは〜!俺の勝ちは確定したようだ!」

 今回のテストは前回の平均が高かったためか全体的に簡単だった。それで油断してしまったのだろうか。2日目の理科と社会の点数が理想とは少し離れていた。


「最後の英語で決着だ!」

「勝ち宣言したのを後悔しなさい。最後に勝つのは私よ。」

変にバトルアニメのような空気感になって最後のテスト返却を迎えた。


「やべ74だ。」

「やった!82点!ほらね言ったでしょ。有言実行!さすが私!」

さっきのセリフを拝借し勝ち誇る。


でもするべきことは他にあったんだと思う。

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