恋人#4

 もし彼の優しさに気づけたら、彼の弱さに気づけたら、彼の強さに気づけたら、ほんの少しの違いに気づけたら、変わっていたのかも知れない。


「やべー、、、定期テストって感覚ねぇー」

「今日だからだいぶ手遅れだと思うのだけれど。」

「大丈夫だ!まだ学年末テストがある!」

「今回の中間テストはどうするのよ。」


 私は苦笑しながらツッコミを入れる。今日は10月3日。2学期も中間に差し掛かり、期末テストとなっていた。一年生ももう折り返し地点になった。


「1時間目はー、算数かぁ〜」

「もうそろそろ数学に慣れようね。」

 小学校の癖が抜けていないのか未だに数学を算数と言ってしまうかわいい秋田くん。思わず見惚れて無口になってしまう。


「てか明日暗記科目多すぎだろぉ〜」

「定期テストは5科目だけだからね。」

「明日に理科社会を詰め込むなー!」

「確かに、」

 私はまた苦笑しながら共感する。チャイムがなり、各々が席に座る。


 小林先生がテストを配り、ホイッスルの合図で皆がテストを始めた。テストはもう本格的になり始め、それなりに力を出さなければ400点を取ることは難しくなるかも知れない。数学と英語は得意だが文法が苦手なので国語の点数があまり伸びない。


「しゃあー!終わったぁ〜!」

テストが終わってすぐ私の席に秋田くんが来た。


「まだ一教科よ。」

「なぁーに言ってんだ。算、、数学さえ終わればあとは四教科だけだ!」

「何も変わってないじゃない。」

 内容は何一つとして変わっていないので私は、ぎこちないツッコミをする。


 私は念願のテスト前に会話をすることができた。香ちゃんの時は迷惑をかけないため休み時間は勉強をしていたが、これこそ中学生!と言う感じがして新鮮だった。


 その後も同じように英語。苦手な国語を終え、1日目のテストは終わった。

「疲れたー!」

「明日もあるのー」

流石に私も体力が本格的に無くなってきた。


「それ言うなって〜」

「手応えはどんな感じ?」

「まぁ、、450行けるかなぁ〜?」

「秋田くんって頭良かったの?」

「前回は458だったぜ!」

「意外!」

「失礼な」


 語尾を上げながら笑った秋田くんにはテストからか疲れが見えた。そして次の日は理科、社会と暗記科目を難なくこなし定期テストは幕を閉じた。


 その日は夜遅くまで理央さんと一緒に雑談をしていた。理央さんには私が見せられない部分を見せられる。


 私は今の暮らしに満足してしまっていた。

でも一つ、私なんかが幸せでいいのだろうかと言う疑問を残して。

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