恋人#1
「愛」とか「恋」だとか抽象的で空想的な言葉が嫌いだった。恋人とか愛人とかそんな関係訳がわからなかった。人と極端に関わらなかった私はそれが当たり前で必然的だったのだろう。
「ごめん、、、また助けられなかった。」
「何言ってるの?」
何を言っているのか全くわからなかった。もうほとんどの生徒が下校し学校の門を出た。私たち2人は校舎を出てすぐのところで向かい合っていた。
「秋田って名前覚えてない?」
「ええ、あなた以外は知らないわ。」
「山梨さんって東山小学校だよな。」
「えっ?、、」
「俺小5でこっちに引っ越して来たんだけどそれまで東山小だったんだよ。」
東山小学校。これは私がこの前まで住んでいた場所にあった小学校で私も通っていたトラウマの場所だ。
わざわざこんな遠くまで来たのにその過去を知る人がいたなんて。
「最初は同姓同名だと思ったんだけど呪いの感じも一緒だし、、ごめん。あの時のこと謝りたいんだ。」
秋田くんは大きく息を吸い一息で話した。握り拳は少し震えていて緊迫感が伝わって来た。
過去を知ってる人がいない場所に来たはずなのにその努力を踏み躙られた悔しさと、謝りたいだなんて綺麗事で片付けようとする秋田くんに対して頭に血が上った。
小学4年生と5年生は1番いじめがひどかった時期だ。多分私が不登校になった後に転校したのだろう。嫌な思い出。思い出すだけで地獄の日々は心の奥で閉まっていた、捨てていたはずなのに、これをきっかけに湧き出るようにフラッシュバックする。
「とりあえず移動しないか?」
私は頭の処理が追いつく前に校舎裏に連れられた。そして小さな段差に2人横になって座った。
「いつから気付いていたの?」
「二回目の図書委員の時ぐらいからかな。」
「私を知ったのはいつ?」
「小4同じクラスだった。覚えてないのか」
秋田くんに呪いの効果はない。なのに話は今までと違い進まない。私が呪いにかかったかのように辛い。
「私を知ってたのに知らないふりして嘲笑ってたの?」
「いや、、、、」
分かってる。秋田くんは今まで何度も手を差し伸べてくれた。今も多分力になろうとしてくれている。でも、過去を割り切るだけじゃいけないと教えてもらったから。そして自分の気持ちを何処にぶつけていいかわからないから、私は思う憎悪と嫌悪に溢れた罵声を秋田くんにぶつけた。
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