脱走した『龍』を始末するため、城の天守を目指す陰陽術師のお話。
ホラーのようなおぞましい空気感が魅力の、時代ものの伝奇ファンタジーです。
異様というか異質というか、『龍』の発する瘴気によって変質した世界が凄まじい!
その描写を見るだけでビリビリ伝わる異常さ。
人の理をはるかに飛び越えた〝何か〟がそこに蠢いているのだと、もう皮膚感覚の次元で訴えてくるところがひたすら強烈でした。
主人公が『龍』を斬る、というシンプルなあらすじの中にあって、しかし読み進めるにつれ詳らかになる、彼らの過去の因縁もまた魅力のひとつ。
これがまた思いのほか深く濃く、非常に重厚なドラマを形成しているのですけれど、しかしあくまで娯楽作品としての軸を一切外さないところがもう本当に好きです。
こんなに濃くて重たい味わいがあるのに、人物の造形や物語の形そのものは、タグの通りしっかり「ライトノベル」してくれる作品。
最後まで読むと明らかになる彼らの関係性も、きっとみんな大好きなやつだと思います。