事件あるところに探偵あり、時間探偵いるところに起きた事件なし

影束ライト

 本編

 この町ではいくつのも事件が起こる。

 そして事件があるところには警察がいて、探偵がいる。


 だがこの町の探偵は少し違う、この町の探偵は事件が起こる前に事件を解決する。


 その探偵を人々は、『時間探偵』と読んんだ。



 ____________


 とある一軒家。

 その家には朝早くだというのにたくさんのパトカーと警察が集まり捜査をしている。

 そんな騒ぎに大勢のがやが集まり、そこに近づく一つの影。


 その影、もとい男は二十代半ばほどの容姿、全身黒一色の服に腕に付けた腕時計が光る青年。


 その男はがやをかき分けながら、家の中に入ろうとし、近くの警察に止められる。


「すみません。ここ関係者以外立ち入り禁止で」


 そういう若い警察に男は懐から一枚の紙を取り出して渡す。


「それなら問題ない。俺は探偵、十返総時とがえり そうじ。ここの警察によばれた来たんだ」


「探偵……失礼しました。どうぞ」


 総時は警察の了承を得て家の中に踏み込んでいく。


 総時が警察が頻繁に出入りしている部屋に入ると、茶色のロングコートを羽織った警察が総時に近づいてくる。


「よう探偵。今回は事件後だな」


「どうも千野せんの刑事。今回の事件の概要は?」


 千野と呼ばれた警察はポケットからメモ帳を取り出すし総時に渡す。


「今回の事件はこの家で起きた殺人事件だ。被害者はこの家に住んでいる火賀ひがさん(夫)。死因は刃物による刺殺」


 千野は写真を総時に渡す。

 その写真は心臓部にナイフが刺さったかなりショックなものだ。


「容疑者はこの家に住んでいる女性三名。まぁ一人は女性というか女児だな。奥さんと、三歳ほどのお子さん、そしてベットの上で寝たきりな生活を送っている夫の方のお母さん」


「……その三人だともう犯人は決まっているのでは?」


「あぁ。すでに奥さんを犯人として見てるが、そう簡単に終わるならお前は呼ばなかったよ」


「つまり犯人は別にいると?」


 総時の言葉に千野は頷く。


「取り調べと現場調査の結果だが、まず第一発見者は奥さん。そして凶器の刃物だが、台所にあった包丁らしく奥さんの指紋はもちろんなんだが、娘さんの指紋も出てきたんだ」


「おいおい、いくらなんでも子供を犯人にするなんて。……奥さんが犯人じゃない理由は?」


「それもないな。奥さんはずっと寝ていたそうだ。ちなみに奥さんとお子さんが同じ部屋、被害者とお母さんが別の部屋だ。そして奥さんはアイマスクと耳栓で何が起こっても気づかない感じだな」


「なるほど。そんなあいまいな物で事件解決をしてないってことは、特殊犯罪だと?」


「そういうことだ。お前案件だろ?」


「そうだな。じゃあ三人に話を聞きに行くか」


 千野は頷きついてこいと二人で家を後にした。



 _____________


 二人は奥さんとガラス越しに会い話を聞くことにした。


「探偵さんですか。…それで何が聞きたいんですか?」


 奥さんはかなり疲れた様子でガラスの前に座る。

 だが総時はそんなことを気にせずどんどん質問していく。


「あんたは昨晩何を?」


「子供を寝付かせて、アイマスクと耳栓をして寝ました」


「寝た後に物音などは聞こえなかった?」


「分かりません。耳栓してたので、音がしても分かりません」


「旦那さんに何か恨みを持つような人に心当たりは?」


「……ないですね」


 少し間があったが奥さんは首を横に振る。


「そうですか。では最後にそちらから何か聞きたいことは?」


「そうですね……娘とお義母さんは今どこに?」


 その質問は総時の代わりに千野が答える。


「現在お二人は旦那さんの弟さん宅にいます。捜査が終わればご自宅に戻られると思いますが」


 それを聞いた奥さんは表情に影を落とし席を立った瞬間、総時は最後にと声をかける。


「あなた、何か能力をお持ちですか?」


「いえ。私も娘も持っていませんよ」



 _____________


 次に二人は娘さんとお母さんのもとに向かった。


「すまないね。体が悪くてベットの上から失礼するよ」


 まずはお母さんから、彼女は落ち着いた雰囲気で話をしている。


「昨晩何か物音などはしましたか?」


「いいや。私の部屋は少し離れてるからね」


「では、…」


 総時が言いかけた瞬間、扉が開き部屋に女の子が入ってくる。


「おばあちゃん!さっきのドレス着せて!」


 女の子はお母さん、彼女にとっての祖母に近づく。


「ちょっと待ってね。今お話ししてるからお部屋で待っててね」


 女の子は素直に従い、部屋から出ていく。


「すみませんね」


「いえ、ドレスですか?」


「はい。あの子の気を紛らわすために」


「なるほど。申し訳ありませんがもう少しお話聞かせていただきますよ」


「えぇ、どうぞ」


「では、続けていきます」


 総時は質問を続け、最後の質問となる。


「最後に、あなたには能力がありますか?」


「えぇ、ありますよ。こういったものですが」


 祖母はベットの近くにあるぬいぐるみに手を向けるて指を鳴らすと、ぬいぐるみが一人でに踊り出す。


「こういったように近くの物を動かせます。と言ってもこういった軽い物が限定ですが」


「そうですか。ありがとうございました」


 こうして二人は家を後にした。



 _______


「それで探偵、犯人は分かったのか?」


「………あぁ、だがどちらにせよやることは変わらない。俺は事務所に戻るよ」


「そうか、なら俺は警察署に戻る。頼んだぞ探偵」


 総時は千野刑事が行ったのを見て、時計を確認する。


「じゃ、始めるか。犯行時間は午前三時ごろ。面倒だがきりが良いし午前0時にしておくか」


 総時は時計の時刻を事件があった日の午前0時に合わせ、目をつむった。


 __________


 次目を開けた瞬間、総時は事務所に居た。

 日時は事件当日の午前0時


「お戻りですか時間探偵様」


 総時に声をかけるのは二十代前半ほどのふわりとした服装の女性。


「あぁ、今から事件だ。行くぞ助手」


 総時は女性を助手と呼び、これから事件が起こる家に向かった。



 _________

(家の中)


「ふふふ、パパお注射時間だよ!」


 女の子はそう言いながら包丁を片手に膨らんでいる父親のベットにまたがる。

 そして包丁を振り上げ下ろそうとした瞬間、


「ストップです。お嬢さん」


 その手を横から止めたのは助手。

 そしてベットからは総時が起き上がってくる。


「パパ。お注射だよ?」


 女の子は父でなく総時がいるというにも関わらず包丁を振ろうとするが助手に抑えられているせいで手を動かせない。


 そんな状況で旦那さんと奥さんが部屋に入ってくる。


「探偵さんが言っていたことは本当だったのか」


 驚いている旦那さんと涙を流している奥さん。

 そんな二人に悪いと思いつつも助手は女の子を気絶させる。


「さて、真犯人のもとに行きましょう」


 総時はその場にいる全員を連れて一つの部屋に向かう。


「あらあら、こんな夜中にどうしたの?」


 そこは祖母の部屋。


「あなたがお孫さんを操って殺そうとした犯人ですね」


「私がそんなことを出来るとでも?」


「出来るでしょ、あなたの能力なら」


「私の能力なんて軽い物を動かすくらいですよ」


 祖母が指を鳴らすとぬいぐるみを動かすが、その瞬間、助手が手を叩き大きな音を出す。

 するとぬいぐるみの動きが止まる。


「あなたの本当の能力は催眠。指を鳴らすことにより催眠状態にし、その能力で孫を操った」


「ふっ、まるで私の能力をはじめから知っていたようですね。認めましょう。確かに私がやりました」


 その瞬間、夫婦がその場に倒れそうになったのを助手が支える。


「理由はそこの息子が私を殺そうとしたのを知って先に殺そうと思ったからです」


 そんないきなりの真実に総時は驚きながらも口を開く。


「…だからと言って、お孫さんにやらせるのは違うでしょ」


「そうですね。ですが我慢できなかった、こんな息子とその血が流れた孫を」


 そう話していると外にパトカーが到着する。


「よう探偵。今回も事件前に解決か?」


「えぇ、ですが祖母さんだけでなく旦那さんにも何かありそうなので、そこは警察にまかせますよ」


 千野刑事は手を上げて返答をし、二人を連行していく。


「あの、ありがとうございました探偵さん」


 娘を抱きながら奥さんは総時に礼を言う。


「いえいえ、これからのことは大変だと思いますが頑張ってください。もし何かあれば連絡を」


 そう言って名刺を渡す。

 そして探偵は助手を連れて事務所への道を歩き出す。


「しかしなぜあの方の能力が催眠だと思ったのですか?」


「最初にあった時、お孫さんはさっきみたいにドレスを着せてほしいと言った。だがすぐに移動した弟の家にドレスがあるとは思えなかったからな。だとすれば偽造系の能力だと思ったわけだ」


「なるほど。さすが時間探偵様、今回も事件解決、いえ事件防ぎお見事でした」


「お前も助手として良い働きをしてくれた。ありがとう」


 こうしてこの事件は幕を閉じたのだった。









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