蓮花切想戦

時雨白黒

祝祭花と死狂花

 「花言葉」と聞くと人は何を思い浮かべるだろう。「花言葉」の数は多く存在し、その総数は今も増えていると言われている。人の願いや思いから生まれた「花言葉」は花たちを繋ぐ言葉となり、人々に安らぎと平和を与えた。そして花たちは人々に感謝しやがて人と同じ姿を得た。人の姿を得た花たちは「花言葉」を守っていた。花たちの中には「花言葉」を改変する「死狂花しきょうばな」が現れた。「死狂花」によって「花言葉」は改ざんされてしまうかに思われたが、一つの花・桜によって花たちは守られた。桜は「死狂花」を追放し「死狂花」から「花言葉」を守るために「祝祭花しゅくさいか」を誕生させ花たちの平和を守っていた。この物語は可憐な花(おとめ)たちの戦いの物語...

  

 零章

 「...こうして花たちは「死狂花」たちから「花言葉」を守ったのでした。おしまい」

 「面白かった!お母さん、もう一回もう一回、読んで読んで!」

 「分かったわ。あなたは本当にこのお話が好きなのね」

 「うん!大好き。桜の花の人がかっこいいし、花たちや「花言葉」を守ってそれから悪い「死狂花」をやつける所」

 「そうね。私も好きよ桜が出てくる所」

 「うん。また読んで読んで~」

 子供と母親が暖炉のそばにある椅子に座り本を読んでいた。読み終わった本をもう一度読もうとした時、壁に掛けられていた時計が鳴る。

 「あら?時計が...もうこんな時間なのね。今日はもうおしまい、明日また読みましょうね」

 「ええ~分かった。約束だからね!」

 「ええ、約束よ。さあ、ベットに行って寝ましょうね」

母親は子供をベットに寝かせて布団を掛けた。

 「お母さん、おやすみなさい!」

 「おやすみ」

母親はそう言うと額にキスをして部屋の電気を消して部屋を出た。母親は先ほどの暖炉に戻ってくると一息つき椅子に腰かけた。先ほど読んでいた本を手に取った。

 「こうしてこの暖炉に座ると落ち着くわ。この本が本当に好きなのよね...あの子にこの本を読んでいる時あなたを思い出すわ..桜」

本を見てめくっているといつも何か眠っていた母親は目を覚ますと暖炉の火が消えかかっていた。

 「あれ...私、いつも何か眠っていたみたい。あの子の様子を確認したら私も眠ろうかしら?」

手に持っていた本をテーブルに置き眠る女の子の部屋のドアを開けると子供は幸せそうに眠っている。それをみた母親は安心して寝室に向かった。


 その同時刻、親子の住む森に侵入し屋敷に入ろうとしていた。屋敷の鍵を音を立てずに開けて潜入した。部屋を隈なく開けて確認したが一階には誰もいなかった。

 「おかしい。この屋敷は二階建てのはずだ。なぜ階段がない」

 「そんなはずはない。隈なく探せ」

 「あの方がいうにはここに例の娘がいる。その娘を殺せという任務だろうが!」

 「そんなことを言ってもなにもないですよ。もしかしてデマじゃないですよね?」

 「デマでなくてもあろうとも疑う目は潰しておくのが俺たち...死狂花だろ」

 「ですね。こういうのって何か仕掛けがあるじゃないですか。例の女だったら尚更ですよ。例えば~蠟燭とか?」

蝋燭を捻るとスイッチのような音が響いて階段が現れた。

 「ビンゴ~!やりましたよ先輩。これで二階へ行けますね」

 「デマかと思ったがまさか本当にここの屋敷かも知れないな。行くぞ」

 「はい。先輩」

 「部屋は一階と比べて少ない。これなら簡単だな」

 「そうですね。あ、先輩あそこ明かりが微かについてますよ」

 「よし、行くか」

武器を構えた二人は部屋に入ると誰もおらず暖炉の火が消えかかっているだけだった。

 「あれ~暖炉がついてるだけですね。他を見て見ましょうか」

 「そうだな。行くぞ」

二人は二階の部屋を確認し、残るは親子二人の寝室だった。

 「まずは母親だ」

 「でも、殺すのは娘じゃないんですか?」

 「お前はアホか?母親も殺すに決まってるだろ?ここに匿っていたってことはおそらく「祝祭花」だ。あいつらは皆殺しにするって決めてるんだよ」

 「そうなんすね。先輩、開けますよ」

 「...いない。逃げたのか?」

 「先輩、隣の子供部屋も居ません」

 「まだ、暖かい。逃げたか...」

 「どうするんすか先輩?娘を逃がしたなんて知られたら何って言われるか」

 「しー少し黙れ!」

 「すみません...って何して」

 「俺の力で親子の足取りと見るんだよ」

 「おお~先輩の能力すね。お願いします」

 「いくぞ...我が「死狂花」においてその力を解放せよ...ダチュラ」

床に手を置き持っていたナイフで腕を軽く切ると魔法陣が現れダチュラの白い花びらが舞うと花びらが変わり映像を映し出した。

 「いつ見てもダチュラ先輩の能力【偽りの魅力】にはほれぼれします。過去の出来事遡り鑑賞できる能力。対象者の行動を鑑賞することが出来てこの能力は欺くことができないなんてかっこいいじゃないですか」

 「そう言っているゼラニウムだっていい能力だろ?」

 「そんなことないですよ。先輩の方が断然です!うちは似たような能力ですし...」

 「双子だっけか?」

 「そうです。双子ですが私が白で妹がピンクですよ」

 「いいじゃないか。仲良さそうで」

 「そんなことないですよ。いい事と言えば先輩と同じ色ぐらいですから」

 「それ...いいことか?」

 「はい!私は先輩以外は信用しませんし、信じませんからね」

 「はいはいそうですね」

 「信じてないでしょ!」

 「【あなたの愛を信じない】だもんな」

 「そうですけど、まさか先輩...妹の【疑い】のほうがいいんですか!先輩聞いてます?」

 「ああ~もううるさい!静かにしろ。今は任務中だろうがまったく...嫌ならお前と組んでないだろゼラニウム。とにかく今は集中しろ、あとでお前の能力が必要になるんだから」

 「...そうですね!すみません」

 「ゼラニウム見ろ。どうやら母親は俺たちに気づいたみたいだ」

 「本当ですね。私たちが屋敷に入ったと同時に気づいたようです」

映像には母親が寝室でベットに腰かけた瞬間に気づいて子供を連れて窓から逃げ出した所が映されていた。

 「なるほど...どうやらもう逃げたみたいですね。なら戻って報告を」

 「いやいい。親子はここで仕留める」

 「何言ってるんですか先輩。ここに親子はいな」

 「いるさ...さっきからこそこそとこちらが気づいていないと思ったか?ゼラニウム、お前の後ろにいるぞ」

 「!!了解です。先輩」

指示されたゼラニウムは走ってナイフで切ろうとしたが避けられた。

 「見つけた。映像に少しノイズが合わないと思ったら近くにいたとはな」

 「先輩、情報の通りです。こいつは例の親子です」

 「なら、殺すしかないな...にしても暗いせいで顔が見えないのは痛手だな。まあいい...お前を殺して確認させてもらう!」

子どもか抱えた母親は走って一階まで下りたがナイフや発砲された銃が体を当たったり掠ったりしていたが不思議なことに体は傷ついていなかった。ドアの目の前でとうとう心臓を打たれた母親は倒れた。

 「やりましたね先輩!でもなんかおかしくないすか?普通、花なら祝祭花と死狂花関係なしに怪我をすれば血じゃなくて花びらが出るはずなのに...どうして」

ダチュラは足で母親の体を動かして確認した。

 「ゼラニウム、どうやらこれは偽物ダミーだ」

 「情報自体が間違いってことすか?」

 「いいや。子供をよく見ろ。こいつが抱えていたのは人形だ。人形に服を着せてカモフラージュしたようだ。でもあの映像は嘘じゃない。これはあの母親の能力だ」

 「ああ!!こいつはスミレですよ。こいつの能力は【用心深さ】ですよ。自分の分身を作って入れ替わったり情報を共有したりできます。分身体に何かあれば本体に影響する能力ですね。こいつは分身体だったんですよ。あえで自分の分身を置くことで足止めしたんですね」

 「...なら俺たちに勝機はある。行くぞ」

 「はい。ダチュラ先輩」


 死狂花が親子を追いかけている時、親子は必死に逃げていた。

 「もう追っ手がそこに...何とか逃げないと!」

 「お母さん...」

 「大丈夫よ。私が必ずあなたを守るからね」

スミレはそう言うと震える子供を強く抱きしめて走った。自身の能力を使って足止めしようと試みたがどうやら死狂花にばれてしまった。分身体が撃たれた傷が反映されてあちこちに傷が出来る。心臓を打たれた時衝撃で倒れてしまった。

 「うっ!!」

 「うっうわ!いててて...!!お母さん!!」

 「だ、大丈夫よ」

 「だって!!怪我して...花びらが...お母さんは祝祭花なの?」

 「私は...!!」

 「お母さん?」

 「しー静かに...」

近くに死狂花たちの気配がしたスミレは子供を抱きしめた。

 「いい?よく聞いて...あなたの言う通り私はスミレ。祝祭花であなたの母親・桜の親友だったの。桜にあなたを託されて今日まで育ててきたの。今まで隠していてごめんなさい」

 「え...じゃあ私の本当のお母さんは桜で、お母さんは...」

 「私は本当の母親じゃないの」

 「急...急に言われても...分かんないよ。どうして...なんで?」

 「困難するのも無理はないわ。すべてはあなたを守るためだったの。あなたの存在は死狂花に知られていたから守るためにはこれしかなかったから...ごめんなさい」

 「なんでお母さんが謝るの」

 「お母さん...か。私のことをそう呼んでくれるのね。ありがとう」

 「ん?お母さん、どうしたの?」

スミレは強く子供抱きしめると自身の能力を発動した。

 「たとえ血が繋がっていなくてもあなたのことは本当の娘のように愛してるわ...私の家族になってくれてありがとう。今、仲間の祝祭花と娘のレミに連絡をしたわ。直ぐに助けてくれる。あなたは逃げなさい」

 「待って...お母さんは?」

スミレは笑うと最後に子供のあなたを優しく撫でた。

 「大丈夫。お母さんは強いから...死狂花になんか負けないから...愛してるわ、桜子」

 「お母さん...私も...桜子も愛してる!!」

 「もう泣き虫なんだから...後は頼むわね。私」

 スミレは自身の分身体にそう言うと分身体が桜子を抱きしめて走りスミレ自身はその場に残った。直ぐ後に死狂花の二人がやってきた。

 「...来たわね」

 「まさか待ち伏せしているとはな」

 「いましたよ先輩!スミレです」

 「私を知ってるのね」

 「当たり前だ。あんたは死狂花の中でも有名だからな。桜の親友だったんだからな。さて、雑談は興味ないんでね。本題と行こうぜ...桜子はどこだ?」

 「桜子?何を言ってるのかしら」

 「とぼけるな。桜子のことは分かってんだよ!桜の子供の桜子の子とはよ」

 「桜子の存在は死狂花にとっては存在してはならないすよ。桜と同じで天敵となる可能性がある。危ない芽は摘んでおかないといけないんす」

 「だからって桜子はまだ五歳も満たない子供なのよ。それに桜子が祝祭花になるとは限らないじゃない。子供が一〇〇%親と同じ道に進むとは限らないわ」

 「そうかもしれない、けどそうなるとは限らないだろ?」

 「あんたは目的含まれていないんす。大人しく桜子の情報を教えればあんたは生かします」

 「言え...いうしかお前の助かる道はないぞ?心臓を打たれてるんだ。早く治療しないとお前は死ぬ」

 「私がはいそうですか言いますと言うと思う?あなた達のやり口は知ってる。そう言って殺すこと...それに私は祝祭花よ。仲間をあの子を裏切るわけないでしょ。そんなに知りたいなら私を殺して見ることね」

 「チっ...やるぞゼラニウム」

 「結局こうなるんすね!!」

 「ここは...いかせない!!」

 三つの力がぶつかり合い激しい爆発が起こり爆発音が辺りに響き渡った。吹き飛ばされた死狂花はスミレを探すとスミレは爆発の衝撃で瀕死になっていた。

 「こりゃあ虫の息だな」

 「先輩!今なら先輩の能力で」

 「そうだな、今ならいけ...無理だ」

 「どうしてですか?」

 「こいつは桜子を分身体に任せて逃げたみたいだ。俺の場合は分身までは見ることが出来ないんだ。こいつ分かってやりやがったな」

 「ふふふ...あの子は...もう..ここにはいないわ」

 「分からねえな...なんであんなガキのためにお前の命を懸けた?お前には本当の娘がいるだろ」

 「そうね...あの子には...レミには悪いことをしたと思ってるわ...でも桜の思いも無駄にできなかった...」

 「あんたが助けてもあんたの子供が桜子を助けるとは限らないぜ」

 「母親と取ったやつだって思ってるかもしれないもんね」

 「...あなたたちはあの子の事を知らないでしょ?あの事別れるとき約束したの...私に何かあった時は桜子を守るって...」

 「そうかい?なら探して親子共々殺せば」

 「やめておけ...鈴の音がお前にも聞こえるだろ?祝祭花たちが応援にきたようだ。ずらかるぞ」

 「はい、ダチュラ先輩」

 「...じゃあな」

 祝祭花たちがやってきたことに気づいた死狂花たちはその場から立ち去った。数分後祝祭花たちがスミレを発見したがスミレは既に息絶えていた。スミレの娘のレミが桜子を抱きしめてスミレの遺体のある場所までやってきた。

 「お母さん...此処にいたんだね」

 「桜子のことをずっと守ってたんだね」


 レミが森で二人を探しているとスミレの分身体に出会い桜子を託された。

 「レミ!」

 「お母さん!連絡貰って急いできたんだ。もうすぐみんなが来てくれるから一緒ににげよう」

 「ごめんなさいレミ。一緒に逃げられないわ。死狂花の中に過去の行動した出来事を見る能力者がいるの。共に逃げたら気づかれてしまう。この子だけでなく、祝祭花の皆も危険にさらしてしまう可能性があるの。だからこの子をお願い」

 「...分かった。この子を桜子を守るよ...お母さんも気を付けて」

 「ええ、レミ...大きくなったわね」

 「どうしたのお母さん。急に抱きしめたりして」

 「したくなったの...レミあなたを愛してるわ」

 「私も愛してるよお母さん」

 「ありがとう。じゃあ頼むわね」

それが最後の言葉だった。桜子を抱えて走ったレミは爆発音が聞こえた時スミレの死を悟った。祝祭花が見つけるまで信じてはいなかった。しかしいざ目の当たりにすると頭では理解できても気持ちの方が追い付いていなかった。気づけば桜子を抱きしめらがら蹲って泣いていた。涙が枯れた頃落ち着きを取り戻し、涙を手で拭った。気づけば夜が明けていて日差しがさしていた。レミはスミレの遺体と向き合った。

 「お母さん、今までお疲れ様...あの時の約束覚えてるよ。今度は私がこの子を桜子を守るよ」

 「これから私があなたを守るよ。これからよろしくね。桜子」

そうレミは言って優しく桜子の頭を撫でた。


 それから七年後...とある森で一人が墓参りをしていた。

 「あれから七年なんて早いね。お母さん、私は今祝祭花であの子の教育係をしてるんだ。あの子は元気に大きく育ったよ。今日から祝祭花見習いなんだ。まだ未熟なところもあるけど見守っててね」

線香を終えたレミは手を合わせるとそこへ大きくなった桜子がやってきた。

 「レミ姉さん」

 「桜子、先に線香あげたから桜子も上げなさい」

 「はい」

桜子は線香をあげて手を合わせた。

 「私ね今日から祝祭花みならいになるんだ。まだ駆け出しで分からないことだらけだけどレミ姉さんやお母さんみたいな祝祭花になれるよう頑張るね」

 「なら、これから厳しく指導するからね」

 「うう~レミ姉さんは厳しいから優しくお願いします」

そう言い合った二人は笑い合った。

 「それじゃあいくね。お母さん」

 「行ってきます。また来るね」

二人はまた手を合わせて墓参りを後にした。レミに連れられた桜子はある場所に来ていた。その場所は祝祭花見習いが学ぶ場所、学校ガレッジだった。

 「祝祭花はペアで行動するの。今日から桜子は先輩の祝祭花とともに行動してもらいます。入ってきて」

レミがそう言うと一人の少女がやってきた。

 「この子は牡丹。あなたの一つ上の先輩よ。今日から一緒に行動するバディーよ。」

 「牡丹...よろしく」

 「桜子です。よろしくお願いいたします。牡丹先輩」

 「牡丹でいい...あなたは...」

 「桜子でお願いします」

 「じゃあ桜子...改めてよろしく」

牡丹に手を差し出された手を取った。様子を見ていたレミが手を叩いた。

 「よかったわ。早速だけど二人に任務が来てるの。桜子にとっては初任務ね。そこには死狂花の情報もあるから心して臨むように。牡丹、桜子をお願いね」

 「分かりました...」

 「桜子、しっかりね。牡丹のいう事をよく聞くのよ」

 「はい!レミ姉さん行ってきます」

 桜子は元気に挨拶した後牡丹に連れられて任務の場所へ向かった。レミは桜子たちが見えなくなるまで見送り、ため息をついた。

 「君がため息なんて珍しいなレミ」

 「リンドウさん。見ていたんですか」

 「後輩の成長はいつまでも見守りたいだろう。今や君は祝祭花見習いの先生でもな」

 「リンドウさんこそ、支部は疲れませんか?」

 「まあね。でもよかったのかい?あの子を見習いにして、レミがペアを組むものだと思っていたのにまさかペアが牡丹とはね。苦労するよ桜子」

 「それも修行ですよ」

 「単独の牡丹がまたペアを組むとはね...いいのかい?」

 「桜子なら牡丹とうまくやっていけると思うんですよ。正反対なところがあるし、そこが刺激になると思います」

 「そうだね...彼女たちは見習いとはいえ祝祭花だからね」

 「はい。頑張れ...桜子、牡丹」

レミは窓の外を見ながらそう呟いた。


 「ついた...ここが初任務の場所だよ。頑張ろうね桜子...」

 「はい!頑張りましょう」

桜子は元気に言い牡丹とともに歩き始めた。ここから祝祭花の牡丹と共に祝祭花を目指す見習い・桜子の死狂花との戦いの日々が始まった。

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