第14話「君」と私のこれから

(あ…、恵理那たち…最前列にいるね…。

 貼ってあるステッカーで、すぐ私のギターだって分かったみたい…。

 驚いて、それから悲しそうな顔してる…。うう…。

 はっ…!演奏始まったね!)


「うんうん…ミスもあって、曲順もごっちゃになって、あるある…そういうの!ドンマイ!」


(聞こえてたんだね…。こっち見てくれた…。

 君の弾くギターには入れなくなっちゃったけど…、ちゃんと意識してくれてるんだね…嬉しい)




(終盤…。おお、君の曲じゃん…。…うわ~、ライブだとめちゃくちゃいいねっ!

 うわあ…キメのリズム、そろったし!やるねえ…。

 おおっ、あんなに飛び跳ねちゃって…。日頃の物静かな君とのギャップが…、

 あっ…!)


「危ないっ!!」


(ス、ステージから落ちたっ!?は、早く、誰かっ…助けて…早く…何してるのっ!?)


「大丈夫っ!?ねえ…、ねえ…君っ!?」


(あれ…?私、気づいたらギターから抜け出して走ってた…。)


「どこ打ったの…!?…かかとと、おしりだけ?よ、良かったぁ~!」


(恵理那たちはもちろん…、会場中の人が私のこと見てる…。

 やばいかも…。このままじゃ私…君と引き離されるパターン!?

 なんかそんな感じする…。そんな物語読んだことある気が…!

 早く何か物に隠れないと…!でも、その前に…)


「萌乃、美咲、恵理那っ!

 私だよ…、花憐だよ…。分かるよね…?

 くっ…、言いたいこと…いっぱいあるけど…ありがとう…。

 みんなと一緒に音楽…出来たこと…絶対忘れない…。

 強がってばっかりで、自分の弱さを認められなくてごめん…。

 もっと…みんなを頼ればよかったな…。

 私…音楽って楽しい…ギターって楽しいって…もう一度思えるようになったよ!

 だからみんなも…ずっと音楽が好きでいて欲し…」


(うわああああ…!何っ!?身体が吸い込まれていくっ!ひゃあああっ)




(ん…?今度はどこに入れられたんだろう…。

 なんかひんやりした所にいるんだけど…?

 ま、まさか私…死んじゃった…?あ、いや…すでに死んでたんだった…。あはは…。

 そ、それより…君ともう会えなくなるなんてこと…ないよね!?

 恐いっ…。そんなことになったら、私…)


(んっ?君が来たみたいっ。身体も大丈夫そうだね…。よかったあ~。

 うわっ…あいたたたっ!一体どこなの!?ここ?

 めちゃくちゃ踏んづけられるんだけどぉ~!え~ん!

 もしかして…靴!?君の靴に入っちゃったのっ!?)


「お~いっ!ストップ、ストップぅ~!」


「――」


「えっ…?…私の姿が見えなくなったから…体育館と校舎をみんなで探して…、今から外を探そうとしてた…!?

 …そ、そうなんだ…。じゃあ…みんなを安心させないとねっ…。

 うぬぬぬ~、抜け出すぞ~っ!えいっ!…あれ…どうして?え~いっ!…なんで~?」


「――」


「うう…、やっぱり私の姿は君の前でしか見せられないみたい…。

 今は他の人の目もあるからね…。さっきギターから抜け出せたのが謎だよ…。

 あれは…なんだったんだろう?

 …でもとりあえず靴からは出ないと…。痛くてしょうがないからねっ」


(ふうっ…。とりあえずTシャツの上に羽織ってるジャケットに移動しようかな?

 えいっ!)


「ん…!?どうして真っ暗なんだろう…?

 はっ…、下の方に見える二つの輪っか…、ここは…もしかして…、

 ま、また…パ、パンツに入っちゃったのぉ~!?きゃあああああっ」


「――」


「き、君も慌てて動かないで~っ!…は、恥ずかしいよ~っ!!」


「――」


「えっ…?言っておきたいことがある…?なんだろう…。

 ふむふむ…、今までずっと…私の…心の声が…、離れていても…、

 …全部…聞こえてたあっ!?

 えええっ!う、う、う、嘘でしょ!?

 そっ、それじゃあ…、独り言とか恥ずかしい告白…、みんな聞かれてたってことぉ~~!?」


 申し訳なさそうにうなずく君。


「ひゃあああああっ!!」


(奇妙な出会いで始まった、君と私との共同生活…。

 毎日がトラブルの連続だけど、それも大好きな君となら全然大丈夫。

 死んじゃったことについては、思い残すことが全くないわけじゃないけど、私は幸運にも、まだこの世界と関わっていられる。

 この神様に与えられた奇跡を大事にしていこう。

 そして、嫌いになりかけていた音楽を…もう一度好きになれるきっかけをくれた君、そして恵理那、美咲、萌乃…本当にありがとう…。

 愛してるよ…。あっ…聞こえてたんだった…)

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想いは少女を六弦に宿す~偶然出逢ったギターに憑いてた女子高生との甘々同棲ラブコメ(短編小説)(「G’sこえけん」音声化短編コンテスト作品) 夕奈木 静月 @s-yu-nagi

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