ゴール
「斎藤さん、斎藤さん」
誰かに名前を呼ばれている。
ぼんやりと目を開けると、知らないおじさんが声をかけてくる。
「大丈夫ですか」
白衣に聴診器。医者だろうか。
「あの」
「七草公園の迷路で、倒れたようです。痛みなどはないですか」
身体を起こしても、特に痛みはない。
「大丈夫です」
意識がはっきりとし、体調も問題ないことからすぐ帰宅できることになった。
帰宅したころ、迷路の運営会社から電話が入った。
どうやら、ゴールの扉を開けた瞬間、倒れて意識がないため救急車で運ばれたらしい。
「あの、俺、たしかゾンビに捕まってゲームオーバーになったんじゃ」
「いえ、最後の扉を開けゴールされましたよ」
「一本道で追いかけられて、ゴール目前でゾンビに腕を掴まれまして」
「ゾンビが登場するのは、5つの黒い扉の選択を促すときだけで、ゴール目前は、つまりブドウの選択肢のときは登場していませんよ」
「え、そのあとの一本道で追いかけられたんです」
「ブドウの選択肢で左にいくと、すぐゴールの扉があったと思うのです。お疲れのようですので、ゆっくりお休み下さい。成功者への賞品のブドウは、ご自宅に配送させていただきます」
なんだろう。ゴールした覚えがない。ゾンビについても、話が噛み合わない。ゴールした瞬間に倒れ、夢を見ていたのだろうか。
そういえば、黒い扉の謎も残っている。正解はしたようだが、答えを導き出したのではなく、単なる偶然で正解したもんだから、すっきりとしない。
数日後、賞金のブドウが自宅に届いた。同封の用紙を見ると、5つの黒い扉の謎がわかった。
どうやら、あの扉はどれを選んでも正解で、どれを選ぶかで、性格診断をしていたようだ。真ん中の扉を選んだ俺は、実直で意志が強いタイプらしい。
参加者100人中脱出者7人という難関の迷路をくぐりぬけた俺。
意志が強くなければ、きっと脱出は不可能だ。
巨大迷路で逃げろ!? 柚月伶菜 @rena7
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