秋の味覚と迫り来るゾンビ
白い壁と木製のテーブル。
数秒前の、黒の扉とゾンビに囲まれた世界とはまるで別物だ。白の明るさと、静寂な空気が心を落ち着かせてくれる。
正直、この道が合っているという自信はない。ただ目の前の、真ん中の扉を選んだだけだからだ。
このテーブルに置かれている紙を裏返すと、ゲームオーバーなんて書かれているのだろうか。
恐る恐る、紙をひっくり返した。
『秋のフルーツ』
ん? 秋のフルーツ? ヒントか?
これはもしや、運良く正解の扉を選んだということか?
よし。いける。
気持ちを切り替え、さあ、考えよう。秋のフルーツといえば、ブドウ、ナシ、柿、栗が思い浮かぶ。
道を進むと、2つの分かれ道が出てきた。その間に、モニターがある。
あった。モニターには、左にスイカ、右にブドウの絵が映し出されている。ということは、秋のフルーツであるブドウの方に進めばいい。
と思ったのだが、ブドウの絵の背景に何か隠れている。紫色のブドウの丸い形の裏に、赤い三角の何かが。
目を凝らしても分からない。
ブドウを動かしてみようと、モニターに触れてみた。すると、ブドウが消え背景が現れた。赤い矢印が、左を指していた。
あぶない、あぶない、間違えるところだった。が、よくよく考えてみると、ヒントには「秋のフルーツ」としか書かれていなかった。「すすめ」とは書いていない。つまり、秋のフルーツであるブドウをどうにかするっていうことが、正しい。
偶然ではあるが、つい見つけてしまった自分を褒めながら道を進む。黒の扉にせよ、ブドウの絵にせよ、運が良い。
一本道が続く。
10分位は歩いた。そろそろゴールの扉が出てきてもいいと思うが、これは隠し扉を見逃してしまったか。
そのとき、またあの音が聞こえてきた。ゾンビだ、ゾンビがまた来る。しかも、ゾンビの迫り来る音が、早くなっている気がする。ゾンビに捕まったらゲームオーバーだ。ここまできたからには、なんとしてもゾンビから逃げないといけない。
ドスっと重い音がした。ゾンビがそこまできている。
壁をゆっくり見ている余裕はない。ゾンビが迫ってくる。走るしかない。
やっと扉が現れた。よし、ゾンビとは距離をとれているから大丈夫、と振り返ると、すぐそこにゾンビがいた。
冷たい感触が腕を伝わった。
ゾンビに、捕まった。
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