オレンジ通りと5つの扉

さあ、始まったばかりだが、迷路というものは分かれ道ではなく、入口からの経路が大切だ。なぜなら、壁に隠し扉があったり、インテリア雑貨にヒントがあったりと、注意して見なければいけないからだ。


素人は、道なりに進んで分かれ道で迷うものだが、俺はそんな単純ではない。


ほら、壁の色に混じって、ビラが貼ってあるではないか。

ビラを手に取ると、「オレンジをすすめ」と書いてある。


すぐ近くには、2つの分かれ道。右の道はオレンジの絨毯、左の道は黒の絨毯がひかれている。もちろん、進むのは右だ。



オレンジ通りとでも名付けよう、床だけでなく壁もオレンジ色なのが面白い。ハロウィン限定だけに、カボチャをイメージしてオレンジなのだろう。



まっすぐ歩くと、突き当たりにカボチャの置き物を見つけた。近づくと、カボチャが自動で光った。もちろん、こういった仕掛けは、何らかのヒントを意味するもの。カボチャの後ろの壁を見ると、光で文字が映し出されていた。

そこには「このトビラをおす」の文字。カボチャを少し移動し壁に扮した扉を押すと、道が現れた。順調だ。



さあ、次は何がくる?と思ったのも束の間、黒い扉が現れた。扉は5つ。特に色の違いはなく、ノブが変わった形をしているわけでもない。叩いてみるが、どれも違和感はない。


辺りを見渡すが、ヒントになるようなものは見当たらない。

これは困った。上も見ても下を見ても分からない。


こうなったら、一旦気持ちを切り替えよう。目を瞑り、五感に集中する。考えるな、感じろ。



ん、遠くから音が聞こえる。足音のような、足を引きずる音のような、荷物を床で滑らせているような音。


目を開け、5つの扉を眺めてみた。何も考えず、辺りを見渡してもみた。が、やはり何も気がつかない。


気になった音は、ここからは確認できなかった。おそらく運営によるものだろう。ヒントにしては、情報がなさすぎる。


さあ、どうする。

二択ならまだしも、五択は難しい。


そのとき、カランカランと後ろで空き缶が転がる音がした。後ろを振り向くと、確かに空き缶が転がっていた。


すると、曲がり角から、手が動くのが見えた。何かと思うと、床を這つくばった、ゾンビだ。気を取られていると、続々と現れ、こっちに迫ってくる。


やばい。時間がない。早くどれか扉を開けないと。


どれだ、どれだ。ヒントがない。

ゾンビのリアルさと近づく恐怖が、焦りを最大限に引き出してくる。


このままゾンビに捕まったらリタイアだ。ならば、直、感、か?

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