巨大迷路で逃げろ!?

柚月伶菜

迷路の中へ

今日は、10月31日。俺は、ここ七草公園で、ハロウィン限定の巨大迷路アトラクションに挑戦する。

どんな迷路なのかは、高い壁で囲まれていることや口コミ厳禁であることから、まったく想像がつかない。分かっているのは、一旦中に入ってしまえば、戻ってこれないように、入口の扉に鎖がかけられてしまうということだけだ。


これまで挑戦した35人のうち、成功者は2人。いかにも難関であるかのように聞こえるが、大学の迷路研究部に所属して4年。挑戦しないという選択肢はない。それに、成功者には小学生がいる。難しく考えすぎることは、誤ちを生むもとだ。



「受付番号36番の方」とのアナウンスが響く。さあ、俺の出番だ。



係員に案内され、入口扉の前で待機する。

いざ扉を目の前にすると、不安と緊張で心拍数が上がる。


「いくつもの道をくぐり抜け、ゴールを目指してください。それでは、いってらっしゃい」

扉が開いた。ゆっくりと一歩を踏み出すと、左右の高い壁に圧倒される。静かに扉が閉まると、鎖の音が聞こえた。もう後戻りはできない。


大丈夫、俺にはできる。


そう、自分を奮い立たせる。


研究を思い出せ。研究が実践になっただけだ。


焦りや緊張は、ヒントを見落とす。

いつも通り、いつも通りだ。


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