記憶のかけら

 女の子と男の子は家の中で遊んでいた。すると、女の子が足を滑らせてしまった。ゴンッ!女の子の頭に机の角が当たってしまった。女の子は気を失った。女の子は、身を覚ました。男の子がいない。それは、目を覚ましたのが、夢の中だったから。

(ここ、どこだろ…?)

女の子は、見覚えのない場所にいた。地下鉄のような、薄暗い場所にいた。目の前に、綺麗な女の人が立っていた。女の子は、その女性を見つけると、急にうずくまってしまった。

「あなたは誰…?あなたをみると、頭が痛くなるのはどうして…?」

女の子はそう言いながら、女性に触れようとした。けれど、女性には、触れられなかった。女の子は怖くなり、目を瞑った。目を開けると、そこは一つの部屋だった。そして、女性がベットに横たわっていた。

 ベットに横たわった女性と、その女性の手を握った幼き女の子。女の子はその2人から、目を離せなかった。

「どうして、私がいるの…?」

女の子は混乱した。女の子は、自分の姿があるのに、女性のことは、全くと言って知らないからだ。向こうの声は聞こえない。わかるのは、幼き女の子に微笑んでいる女性がいることと、その女性に向かって泣きそうになりながらも、ずっと話す女の子がいるということだけ。

「なんでだろ…?」

女の子は、その光景をみると、なぜか涙が出てきた。しばらくすると、周りが真っ暗になった。

 女の子は、なぜか恐怖を感じ、光のある方へ向かった。そこには、一つの線が、幼き女の子の目の前で、女性を貫き、女性が倒れ込む光景だった。そして、女の子が泣き叫んでいた。

「ゔっ!ひっく!ままぁぁーーーー!!!ゔあぁぁーーーっ!」

女の子は、全てではないが思い出した。あの女性は、自分の仮の母。そして、地下に迷い込んだ私を助け、守ったせいで死んでしまったのだと。

 女の子はその光景をみて、唖然としていた。膝をつき、ピクリとも動かなかった。壊れた人形のように。状況を飲み込めなかった…いや、飲み込みたくなかったのだろう。

 そこで女の子は目が覚めた。目の前には、男の子がいた。女の子は、何も言わずに泣いた。男の子は何も聞かなかった。踏み込んではいけないのだと察したからだ。女の子は、訳がわからなかった。自分がどうして泣いているのかも。あの夢らしきものも、夢だったかどうかもわからない。本当に、何も分からなかった。ただひたすら、なぜか悲しかった。


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黒ヒョウと青い鳥 @yuuriki

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