寝て起きたら猫になっていた

@hatimiya

第1話

目が覚めると猫になっていた 


私は、都内のオフィスに勤めている、ごくごく一般の会社員だ。

特にこれといった趣味もなく1DKに猫と暮らしている。

だがどうだろうか、目を覚ましたら猫になっていた。

何を言っているのか分からないかもしれないが、猫になっていたのだ。


周りを見回すとベットに人間の私が寝ていた。

近づいて私の顔を覗きこむ。

ちゃんと化粧は、落としているようだ。

やるな、私。

感心している場合じゃない。

私は、そっと顔を触る。

反応がない。

鳴き声ならどうだ。

にゃーにゃ〜

だめだ反応がない。

もしかして死んでいるのか、死んで猫になってしまったのか!?

私は、どうしたら…


しばらく呆然としていたが、お腹が減ってしまった。

私は、ひとまず部屋の中を散策することにした。

人間だった頃は、部屋は少し狭いと感じていたが、猫だと広く感じる。

なかなか悪くない。


部屋の奥にちょうど猫用のご飯が置いてあった。

皿を中身を除く私が入れたカリカリご飯だった。

私は、少し躊躇った。

いいのか、私。

猫のご飯を食べても。

少し考えたが、考えるより体が動いた。

カリカリ カリカリ カリカリ

なんて美味しいだろうか。

パッケージに魚介風味と書いていたが、こんなにも魚介が広がり、噛むたびに旨味が広がるこのご飯を食べても。

私は、無心で食べた。

最後まで食べ、お皿をひと舐め。

うまい!そして声が出た。

にゃー 


顔を前足でお手入れしていると眠気が襲ってきた。

私は、ベットに戻り眠りについた。


猫の私は、夢を見た。

昨日あった出来事を。


私の飼っている猫は、里親探している猫カフェにいた。

黒猫で目つきが鋭く、他人を寄せつない雰囲気を醸し出していた。

私は、そんな猫に一目惚れをして譲り受けた。


猫を飼ってから生活は、特に今まで通りだった。

ただひとつ違うのは、猫を飼った日に片思いだった彼が、結婚報告をされたことぐらいだった。

遅かった決断や勇気が出なかったに幾度もなく後悔した

そして浴びるほどウィスキーを飲んだ。

飲みながら愛猫に、愚痴をこぼした。

彼の結婚以外の不安なことや会社のこと、将来のこと、人間関係のこと。

涙を流しながらひたすら猫に話しかけた。

ふと思うと、異常だ。

だけど、猫にしか話せないほど、心が疲れた。

猫になりたい。

最後にその言葉を発し眠りについた。


猫になってから1時間ぐらいしか経ってないけど、このまま猫で一生を過ごしてもいいかも。

私は、そう思い再度夢の中で寝ようとした。

知らない声が聞こえた。


「本当にいいのかにゃ?戻らなくていいのかにゃ?」

「誰?私は、猫のままでも良いと思う。だって人間は辛い」

「辛いことばかりじゃないにゃ、日々楽しいこともあったはずにゃ」

「ない」

私は、力強く言った。

「…そうかにゃ、でもにゃーといる時は、楽しいにゃ?」

「楽しい」

「にゃーは、辛いことが多くても、何か少しでも楽しいことがあれば人間の方がいいと思うにゃ。にゃー達、猫は、運のみしか無理にゃ、ご主人が引き取ってくれたから今楽しいけどにゃ、これが違う人だったら分からないにゃ、だから選択できることが1番いいにゃ」

私は、過去のことや猫の言葉を考え、

「…分かった。もう少し人間で頑張って見る。」

にゃー


はっ!

私は、ベットから起き上がり時計を見る。

8月15日(月)、AM7時40分。

やばい!

出社に間に合わない。

安堵したのも束の間、私は、急いで身支度を整えようとした。

ふと、手を止め携帯を手に取った。

社内チャットを開き、一言、

「体調が悪いので休みます」

私は、ベットで寝る猫を見ながら休む選択をした。

ちょっとした選択だったけどこれでいいのかも。


太陽光は、いつもより眩しかった。


完!

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