第5話 夜明け
翌朝、海から昇る太陽の一筋の光と共に事態は激動した。
超巨大ゴリアテを監視していた結城さんが異変に気付いて皆を呼び寄せた。朝の光の中、融合が終わり滑らかな外形になっている。胴体は縦長になり前足は四本に増えていた。体は緑、青紫、黒褐色がモザイク状に組み合わさっている。
「融合前の個体の特質を混在させている。あれはキメラゴリアテと呼ぶべきだ」
佐々木教授の声には嘆息が混じっていた。
キメラゴリアテは目を開いた。右目も再生されている。唸り声をあげ、ゆっくりと∞ステーションに迫ってきた。
∞ステーションの振動は激しさを増していた。村松隊長が目で遠藤さんに報告を求める。
「やはり出力できません。既に二百万ボルトまで上がっているのですが」
村松隊長はくやしげな顔で唸り声をあげたが、俺達にはなすすべがなかった。
その時、轟音と共に外壁に亀裂が入った。外縁リングが大きく崩れ、中から巨大なものが這い出してきた。外縁リングそのもののような大きさだ。
それは超巨大サイズの鉄甲ムカデだった。胴節は青紫色に輝いている。
「ザワワ達も融合による巨大化と特質の獲得を選択したんだ」
佐々木教授は魅入られたように見つめる。巨大ザワワは天に向かって体を上げ、長い叫び声を上げる。空の色が変わった。四方から青紫色に変わっていき全天が青紫になった。空を覆い尽くす無数のイオン揚羽の群れだ。
「おお、これが全世界の∞ステーションからの救援なのだ」
巨大ザワワはキメラゴリアテに跳びかかり喉首に牙を突き立てた。牙から雷撃の稲妻が飛ぶ。キメラゴリアテは爪で巨大ザワワに切りつけていくが、牙は喉首を離さなかった。そして、上空に変化が生じた。イオン揚羽が次々と急降下して巨大ザワワの胴節に六本の足で取り付く。一瞬の静止の後、飛び立ち、離れていった。
「ああやって電気を補充、昇圧しているんだ」
雷撃は続き、キメラゴリアテの体は真っ赤に変色していった。さらに白色に変化し、内側から発光して……、
ズゴォォォオオン
キメラゴリアテは爆発し、全てを吹き飛ばした。
気が付くと俺は茂みに倒れこんでいた。動こうとすると激痛が走る。どこか骨折しているようだ。
俺を見下ろす顔があった。その顔は宮内さんのものだが、髪は青紫色で皮膚は金属光沢を帯びていた。何よりもその瞳に宿るものがそれは宮内さんでない事を示していた。
「あなたとお話ができるようにあの女性から少し遺伝子をいただきました。あなたには生き延びられるよう私の遺伝子をお分けしています」
彼女は海の方向に顔を向けた。
「私はもう一つの戦いに向かわなければなりません。でも、心配しないで。私は必ず帰ってきます。また、あなたと一緒に暮らすために」
上昇する彼女の胸は巨大ザワワの頭節につながっていた。巨大ザワワは海に向かって進んで行く。その先では天を覆うほどの巨大イオン揚羽が待ち構えていた。
糸冬 ?
ザワワ蠢動する oxygendes @oxygendes
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