【短編】おかしな世界

大和あき

おかしな世界

 あたりを見回すと、そこは学校の体育館だった。


集会のようなものなのか、学年の生徒全員がきれいに体育座りで並んでいた。


私も皆が静かに見ている前方のスクリーンに目を向ける。


…真っ黒だった。


それは闇に飲み込まれてしまったような黒い画面を映しているだけだった。


しかし周りの人たちは、壊れているんじゃないか?という疑問の声すら上がらず、ただただその黒い画面を見つめている。


不思議と恐怖はなかった。


なのに私の心には違和感がへばりついていた。


《なにかが》いつもと違う。


私は黒い画面を黙々と見続ける全員の異様な光景に気づかなかったのだ。


いつもとは何かが違うのに、なにが違うのかわからないことに焦燥感を覚えながら、あたりを見渡す。


汗で太ももにへばりついた制服のスカートが、かすかに悲鳴を上げた気がした。


体育館の一番上のギャラリーの窓から、龍が顔をのぞかせていた。

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【短編】おかしな世界 大和あき @yamato_aki06

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