長い旅の先に

「はぁ、はぁ……これで、ようやく辿り着いたわ。我ながらよく頑張ったわね」


次から次へと現れるマッチョ達をちぎっては投げちぎっては投げ……本当に苦労したわ。これ令嬢としてだいぶ良くないよね。途中からゴリラを投げ飛ばしていたし。

それでもミハイル様のいる別宮の中に入り込めたのだから、もうこっちのものだわ。

私はミハイル様の部屋の扉をノックする。

「はい、誰かな?」

これぞ大人の出せる色気と気品が混ざった王子ボイスね。大御所でありながらも謙虚さを忘れないCV逸見一郎様にしか出せない声だわ。

私は両手を把手にかけて勢いよくその扉を開け放つ。

「ミハイル様!貴方のヴィヴィアンですわ!」

中に入ると夢にまで見たキャラデザ通りのミハイル様が本から私の方に視線を向ける。金糸のような輝く髪に綺麗な青い瞳。まさに思い描いていた王子そのものだ。

しかし、その美しい瞳で私をとらえたミハイル様の顔色は見る見るうちに青ざめていく。

「き、君が……ヴィヴィアン?え、ほんとに?」

少々ショックな反応ではあるものの私は嬉しさのあまりミハイル様を抱きしめる。腕の中でミハイル様はぶつぶつと「こんなはずじゃ……こんなはずじゃ……」と呟いているけど、何のことかしら?ううん、それよりも求めていた(のに比べると若干貧相ではあるものの概ね理想通りの)ミハイル様にようやく会えたのだわと私ははしゃぐ。ここまで本当に長かったんだもの。

……あら?ふと見ると部屋にマッチョがいるのが見えた。ギョッとして「まだここにもマッチョが?と臨戦体制に入る。

するとそのマッチョも同じように臨戦体制に入った。そこで違和感に気づく。そのマッチョはニコライ様でもなければサラザール様でもなく、ゼノ君やガロン、リュートでも、ましてやゴリラのマクスウェルでもない。それどころか、そのマッチョはドレスに身を包んでいた。完全にメスだ。メスのマッチョだ。

さらによく見ると、彼女は私と同じ色のドレスを着ている。山で狩りをした帰りなのかしらってくらいにボロボロではあるけれど、見れば見るほど私の着ていたドレスと同じものを着ている。それに、ボサボサのお髪も私と同じ金色だわ。

そこまで考えて青ざめる。そして、ミハイル様の方を向いて、マッチョを指差した。

「あの、もしかして、あそこのマッチョって……」

「……うん、鏡に映った君だよ」

「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」


END……?


















「いやよ、こんなの納得できないわ!!リスタートよ‼︎」


私の叫びに反応するように世界は光に包まれて、再び目を開けた時私は光るマッチョの腕の中にいた。


「ここからかい!」

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攻略対象がマッチョとか聞いてない聞いてない 彩亜也 @irodoll

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