第二幕 もっと高く。高く高く落ちる ①

 いつまでが子供で、いつからが大人なのか。

 いつまでが子役で。いつからが女優なのか。

 私が私のことを子役だと自覚したのは、周囲の大人が口を出して言うこんな言葉を聞いたから。「子役なのに演技が上手い」「天才子役」「大人になるのが楽しみ」そんな言葉をたくさん聞いた。

 本人たちは褒めているつもりで気持ちよく語っているのだろうけど、言われる私は明確な線引きをされたに過ぎなかった。

 どこまで頑張っても、子供な私は子役であって、子役の枠組みから出る事はできない。そんな事もあって。その他一つ二つの悩みがあって、葛藤があって、そうして私は中学2年の春に役者をやめた。

 あれあんまり関係なくない。なくなくない?

 さておいて。

「ええっとそのですね。私が子役だったことを知っているのですよね?」

「ははは、あいすちゃん。その質問はナンセンスだぜ」

「なんですかそれ。少しばかりムカつきます」

「だってそうじゃない? ねぇベリちゃん」

「まぁ確かにその点についてはちょこが正論かもしれませんわ」

「だよね」

「……解せません」

「だってさあいすちゃん。役者っての観られて然るべき。知られて然るべきってことなんじゃないのかなってことさ。おーけい?」

 不覚にも。ああ全くもってその通りだと感じ入った。

 くそくそくそ。

 それで。

「それで私にどうしろと?」

「え?」

 ポカンとした表現で古城が言う。青桐は微笑みながら頷くのみ。

 なんだ?

「どうしろと言われてもねー。ね、ベリちゃん」

「そうですわね。強いて言うなら、ふふふ」

「何がおかしいんですか」

「ごめんなさい」と、申し訳なさそうに言う。「仲良くなりたいのですわ。ねぇ、ちょこ」

 はい?

 いまこのお嬢様はなんて言ったのか。

「そうそう、ただ単にあいすちゃんと仲良くなりたい。それはね、役者とか女優とか子役とか関係なくて、ただ単純に一緒にいたら楽しいだろうなって、そういう感じで仲良くなりたいの」

 ますますわけがわからない。

「えっとその……本当に?」

 その問いに答えはなく、2人は黙り手を差し伸べて来たのだった。

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劇場型総合部活動 ~げきぶか~ 石坂あきと @onikuosake

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