第4話

 不法投棄のジャンク品を使える素材や保存食に換えた俺は、秋の訪れに合わせてジャンク船の帆を張った。

 ジャンク品を素材にしたから、ジャンク船。

 中国発祥の戎克それとは似ても似つかねえが、ばかみてえな数のジャンク品に、俺たちの血と汗を込めてクラフトしたんだ。

 ゴミ人間が大海原に挑む船にしちゃあ上出来ってもんよ。

「あの街とも、幼なじみひじりとも、これでおさらばだ」

 俺は船尾に立ち、どでかい倉庫が立ち並ぶ岸のほうに目を凝らす。

「……せいせいするぜ」

 ぎりに紛れて密航する俺たちを捕まえようとするやつは見当たらなかった。

 海上保安官の領分すら自動機械オートマタに置き換えられて久しいからな。AIが俺たちの密航に気づいたって、「ゴミが漂流を始めた」としか認識できねえさ。

「リーターあー」

 呼ばれて振り向いた先には、リラックスしたアカネの顔があった。

「闇取引で引いてもらった図面とにらめっこしたり、帆船なのにエンジン積むとか積まないとか、いろいろあったよねー」

「なんだよいきなり」

「わたしたち、エリートの手を借りずにみんなで作った船に乗ってるんだよ? すごくない?」

「満足か?」

「そんなわけないでしょ」

「へへ、そうこねえとなあ」

 俺たちは《SDGsUSエスディージーザス》がいない世界に、意地でもたどり着くんだ。

 こんなしょっぱなから満足されてちゃ困るぜ。

「ねえ、リターはこれからの行き先、決めてるの?」

「……そういや決めてねえな。俺たちが人間らしく生きられるなら、どこでもいいだろ」

「じゃあさじゃあさ! かんこくにしない?」

「はあ?」

「どこでもいいって言ったじゃん。ねーいいでしょー?」

「船は一隻しかねえんだぞ。ほかのやつの意見も聞いとかねえと」

「もう聞いた。チュウベエとウメちゃんは賛成よ」

「根回し早えなあ!」

「特にウメちゃんはいろんなコスメが見られるかもって、もう大興奮なんだから」

「ちぇ、多数決は始まる前から俺の負けかよ」

 韓国か。こっからだと長い船旅になるな。

「……いいぜアカネ。みんなに行き先を知らせてこいよ」

「おおきにリター! なんちゃって!」

「へいへい」

 今まであくせく働いた分、のんびり行くとするかあ。




 そんなこんなで、数か月後。

『――今日ハ、燃ヤセルごみノ、収集日デス――』

「な、な、な……」

 俺はからっとした光化門クァンファムン広場をぜえぜえ走りながら、こうじょうめんの銅像に怒りをぶちまけた。

「なんで《SDGsUSエスディージーザス》が、韓国にもいるんだよおおおっ!?」

 せめてローカライズぐらいしやがれってんだ! このサスティナブル野郎!

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SDGsUS《サスティナブル・デベロップメント・ゴールズ・アルティメット・システム》 水白 建人 @misirowo

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