第5話 ガイアスにて

カリアが仲間?になってから更に5日か経過した。

野営と宿泊を交互に繰り返し、気づけば首都ガイアスの外壁が遠目に見えるところまで来ていた。

「ナツミ、カリア。あれが首都ガイアス。人口30万人が住まうエルドルティア国最大の都市じゃ。」

「いよいよかぁ。そういえば王様と面会って出来るの?」

「一応手紙は送っておる。魔王軍の幹部を倒したのだからむしろ快く迎え入れてくれるだろう。」

「あの、私って中に入れるんでしょうか?獣人って確か入れないですよね?」

「人に変身する練習がてら町の宿に泊まってたし、大丈夫でしょ。子供に変身しても全然バレて無かったし。」

「一応私大人なのに…まぁでも!一緒に首都ガイアスに入れるなら些細な問題です!」

「もうすぐ着くぞ。降りる準備をしておけ。」

遠くから見ていたら気づかなかったが外壁はとても高く強固な作りになっていることに気づく。少なくとも常人が壁を登って王国の中に入るといった所業は到底不可能だと夏海は思った。関所で身元尋ねられたが、将軍であった【不動のヴェイン】と【轢殺のブロウ】を倒した【閃拳のナツミ】という事もあり、いとも簡単に中に通された。カリアは付き人とだけ伝えたが全く気にも留められていなかった。

3人は無事、首都ガイアスに入ることが出来たのだ。

「私、こんなあっさり入れて良いんでしょうか?」

「それもカリアの実力よ。全くバレて無かったから自信にしたらいい。」

「えへへ…そうですよね。」

首都ガイアスは薄っすらと緊張感が漂っていた。

会話や表情には表れていないが、いつ何が起きるかわからないそういった目に見えない恐怖に対し、恐れを抱いている様だ。

「妙にピリついてるね。なんかあるのかな。」

「ワシが首都ガイアスを出たのは2年前だったが、その時とは大きく違う。ラーキンが王になったことでやはり民にも少なからず影響が出ておる。」


休憩がてら情報を集めることにした3人は近くの酒場に入っ…カリアは子供の姿に化けているので外で待つことになった。カリアのあの悲しそうな顔は今でも忘れられない。

酒場のマスターに近頃の首都ガイアスについて話を聞くことにした。

「あぁ、ラーキン王になってから色々あったもんだからね…。あんまり大きい声で言えないけど、聞きたいかい?」

「是非教えて欲しい。何せこっちは2年もガイアスを離れておったからのう。」

「2年前から、獣人と亜人種族の締め出しを始めた。理由としては魔王軍のスパイである可能性があるからとのことだったが。ただ、魔王軍に与するのは何も獣人や亜人だけじゃない。魔王軍の中にも人間はいる。それに疑問を思った者はラーキン王に進言をした。」

「その後、どうなったのだ?」

「進言した者を全員公衆の面前でさらし首にしたんだよ。国を脅かす不届き者だって言ってな。」

「…。」

「それだけだに留まらず、国民の【徴収】を始めた。来るべき魔王軍襲来に備えて才能あるものを国家の中枢に集める…ってのは大義名分で、ラーキン王のを集めてるんだよな。あいつ、人を痛ぶるのが好きだからな。【徴収】された国民は戻ってきた事は無い。恐らくは壊れたか、まだままだな。」

「クソだな。殴りに行こう。」

「お、おいナツミ。待たんか!」

「もう我慢できない。あたしはもう決めた。クソラーキンの顔を殴ってやる。」


王城ラーキンの私室。

「ラーキン王。じきに謁見のお時間です。ご支度のほどを。」

「あぁ、すぐに向かう。おい、片づけを頼むぞ。」

「はっ。仰せの通りに。」

床にはラーキンの汚れてボロボロになったいくつものが転がっていた。


王城謁見の間にて。

「今日の謁見の相手は誰だ?」

「先日、魔王軍の幹部である【轢殺のブロウ】を倒した【閃拳のナツミ】と我が国の将校をしていた【不動のヴェイン】この両名です。」

大臣は淡々と答える。

「ヴェインはともかくナツミという者は初めて聞く名だ。名付けられし者ネームドであれば事前に俺の耳にも入っているはずだが。」

「如何せん最近出現した名付けられし者ネームドであるとか。私も王と同じく情報がありませんでした。」

「まぁ良い。適当にあしらって遊びに戻る。栄誉勲章は用意してあるな?」

「はい、こちらに。」

「よい。ところでそのナツミとやらはまだ来んのか?」

などと言っていると、階下から叫び声が聞こえる。怒号というより明らかに怯えて逃げ惑っている時に聞く声だ。

「何事だ!衛兵、衛兵は何をしている!」

「王よ!早くお逃げください!」

その声が聞こえたと同時に階段を登り切った一つの影。

「なっ、何者だ!この騒ぎは貴様の仕業か!?」

「私は【閃拳のナツミ】。お前をぶん殴りに来た。」

夏海は手首のブレスネットから白い糸を複数伸ばし、ラーキンを捕らえる。

そしてグイッと引き寄せ。そのままラーキンの顎に鋭く重い一撃を与えた。

ラーキンは壁に衝突しそのまま壁に埋まってしまった。

夏海はゆっくりラーキンの元まで歩いていき、壁からラーキンを引きはがす。

「立ちなよ。あんたの言い分を聞いてあげないと不公平だからね。」

夏海による一方的な尋問たいわが始まる…。

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閃拳のナツミ うらみ @737108

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