恋するをとめ譚 結 「左様なら」
世界は六十四年を経て、唐突に終わりを告げた。恐らく、本当にこの世界はジアの精神を反映していて、ジアにはイオリという存在ができたから、もう夢や妄想を見る世界が要らなくなったのだ。
水は蒸発し、魚人は涙ながらに収縮され、終には眩しい空間だけが残った。
完全な直感だが、あまりイオリ達に時間は残されていない。最後に、二人は話をしたいと思った。
「本当に、ありがとうイオリ。」
「いえいえ。呆気なく終わったね。」
「死後の世界は不可解な場所だよ。……あぁ、そうだ。六十四年は伊達に生きていなくて、色んな事を死んでからも思い出したんだよね。君…」
「分かってる。私は、死ぬ前から、君だけを目指して来た。自分の名前を忘れても、意味わかんない世界に来れたのはそのおかげ。」
「ふうん。ませた幼馴染だよ。」
「あの約束を覚えていないあんたよりはよっぽど大人だよ。魚バカ。」
「魚バカって……!」
ジアの口を抑える。こんなギリギリに、喧嘩をして終わりたくない。
「ん、まあ…とにかくありがとうね。来世も」
「来世はいいかな」
「え。」
世界が灰色に固まった。やってしまっただろうか。いや、言いたいことが言えるから好都合だ。
「来世は良いっていうのは」
前とは違って、いきなり結婚しちゃお、って意味。
「約束よ。もう恋なんてさせないから……」
世界は再び光を取り戻した。
そして、一度光を強めると、速やかに収束し、二度と光りはしなかった。
……イオリは、インキャ女子に生まれ変わった様だ。
恋するをとめ譚 緑がふぇ茂りゅ @gakuseinohutidori
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