第22話

73.その後しばらくの間部屋で待っていると、ツバキが戻ってきたので先程起こったことについて聞いてみることにする、「──さっきのは何だったんだ?突然目の前が光に包まれたと思ったら今度は別の場所に移動してたぞ……一体何をしたんだ?」そう言うと少し考えるような素振りを見せた後こう返してくる、「んー多分だけど、ここは夢の中だと思うんだよね、私も前に何度か経験したことがあるからさ、それとさっきルーニャちゃんが聞いた声の主なんだけどあれは私の妹なんだよ、きっとあなたが目を覚ました時近くにいたのもあの子が仕組んだことだと思う、あの子は昔からイタズラ好きだったから、今回もあなたを驚かせようと思ってそうしたんじゃないかな?」そう言われてようやく納得した俺はあることを思い出す、「そう言えばツバキには妹が二人居たよな、もしかしてもう一人はユキナって言う名前だったりするのか……?」そう聞くとツバキはすぐに頷く、それを見た俺は更に詳しい話を聞き出すために口を開くのだった……── それから数時間後俺は宿の部屋へと戻っていた、そして現在はツバキと二人で話し合いをしているところだ、「とりあえず一通りの事は教えてもらえたんだが……まさか俺が眠っている間、ずっと側で見守ってくれていただなんて思わなかったな……、それでなんだが、結局俺の体は今どうなってるんだ?意識は覚醒してるのに体は動かないみたいな状態だったからちょっと気になるんだけど……もしかして何か関係してるのか?」と問いかけるとツバキは真剣な表情をしてこう答える、「うん……実はあなたの体が今ここにあるわけじゃないんだよ、正確にはここに居るあなたと魂が分離しちゃってる状態ってことなの、その原因については詳しくは言えないけど……とにかく今のあなたにはあまり時間がないってことだけ覚えておいて欲しいの」それを聞いて驚きのあまり何も言えなくなってしまう俺だったが、何とか言葉を絞り出すようにしてこう聞いてみる、「それはつまり……このままの状態が続いてしまうと命に関わるということか……?」と尋ねてみるが彼女は静かに首を縦に振るだけで何も言わなかった、 それを見た俺の中に不安感が募っていく中、彼女はこんなことを言い始める、「でもね!安心して良いよ!あなたは絶対に助かる!私が保証するから!」だが俺はそんな言葉に安堵することは出来なかった、なぜならもしそれが事実だとしたら俺は今生死の境を彷徨っているということになるからだ、そう考えると自然と体の震えが込み上げてきた、「お願いだ……もうこれ以上は聞きたくない……、教えてくれないか?今の俺の体に何が起こっているのかを……!」

そう懇願するように言うと、今度はツバキの方が辛そうな表情をする番だった、そして遂に意を決した様子でこう言った、「わかったわ、本当は言うつもりなかったんだけどこうなった以上しょうがないわね……」それを聞いた瞬間俺は固唾を飲んで言葉を待つ、すると次の瞬間信じられないような言葉が耳に飛び込んできたのだ、「落ち着いて聞いてね?まずあなたが意識を失っている原因は脳にあると言われてるわ、そしてそれを解決出来る可能性があるのが夢渡りという能力を持った人物なの、 そこで私はその人物に会いに行こうと思ってるんだけどあなたも一緒に来ない?もちろん無理にとは言わないけれど……」

その言葉を聞き俺は考え込んでしまう、「なあツバキ……その話って本当のことなのか……?それとも俺を安心させるための作り話とかじゃなくて?」そう言って尋ねると彼女は首を横に振る、それを見てますます困惑してしまった俺はどうすればいいのかわからなくなってしまった、するとそんな俺を見たツバキは続けてこんな提案をしてきた、「それならさ!今からその人に会ってくるからさ!だからそれまで待っててくれないかな?大丈夫、きっと上手く行くから心配しないで待っててくれればいいよ」そう言われたので俺は彼女のことを信じることにした、何故なら彼女が今まで嘘をついたことがなかったからだ、そのことから考えても今回の件についても真実である可能性が高いと思ったからだ、「それじゃあちょっと準備してくるから少しだけ待っててくれるかな?なるべく早く戻ってくるからね!」そう言い残して部屋を出ていく彼女を見送りながら思う、(きっと大丈夫……だよな……)そんなことを思いながら再び眠りにつくことにした、75. 次の日目が覚めるとそこは見慣れた天井があった、辺りを見回すと昨日と同じく自分の部屋に居ることに気付く、だが一つだけ違うことがあった、それは隣に見知らぬ人物がいることだった、慌てて体を起こしてみると、そこに居たのはツバキではなく銀髪の少女の姿だった、「やっと起きたんですねルーニャさん?」そう言った少女はまるでこちらを見透かすようにして微笑みかけてくる、それに対して俺は反射的に身構えてしまう、だがそんな彼女の口から意外な言葉が飛び出してきた、「ふふっ……そんなに緊張しなくてもいいですよ、取って食ったりなんかしませんから♪」それを聞いたことで幾分か落ち着きを取り戻した俺は、ひとまず話を聞こうと思い口を開こうとした、するとそれよりも先に彼女がこう切り出してくる、「突然ですがあなたは自分の人生についてどう考えていますか?楽しいですか?嬉しいですか?それとも辛いでしょうか?」その質問を聞いた俺は戸惑いつつも答えを返していった、「俺はまあ……そこそこに満足してると思うぞ?好きなことをやって暮らしていけてるしな、でも……お前はどうなんだ?少なくとも俺にはお前が楽しそうにしているように

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

レベル1の俺が、異世界で魔王として召喚されました あずま悠紀 @berute00

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ