野球の森

崇期

ベンチ裏

 誰かが孤独を訴えたとき、あなたはその孤独の片棒をかついでいるように感じたことはないか? 私があなたを放っておいたから、あなたは孤独なのね? とか。幻想とは常にそんなところがあるようだ。

 野球というだけで、誰かがメンバーに加わったり応援席に座ったりする。私には私の野球があるのに、誰彼紛れ込んでくることは知れたことじゃないかと自分に言い聞かせなければならないなんて。


 だから、私のボールに誰も触れないようにしたくて、土に埋めた。そこから木が生え森になったら、あなたはそれを森と呼ぶだろう。私の野球は深い眠りに落ちる。


 いつかふとした瞬間に、誰かが野球だと気づいてくれたらいいな。ベンチ裏でこっそり、あなただけに打ち明けるかも。

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