第3話・ボーナスタイム

 先の見えない真っ白な道に表示されたボーナスという文字。

 これは何の意味を表すんだろう?

【使いますか?】

「いや、ボーナスってなんだよ!!!!」

 良く分かんないから、とりあえず走る。

 カリブンはまた言霊によって動きを封じられている。今がチャンスだ。




「チュンメイは俺のことをどう思っていたのだろう。それは今になってはさっぱり分からない。ただ、俺は夢を見て彼女を思うことしかできない。その無力さを俺は毎日責めていた。逆に、その繰り返しで何も進まない」

 カリブンの動きは止まらない。疲れというものは知らないのだろうか。

「食事を済ませ、外に出た。本能的にチュンメイが住んでいた家へ歩いていく自分。と、見覚えのある中年女性がやってきた」

 ここから、言霊強くなるんじゃないのかなぁと思う。

「『あ、バイルイ君。ちょうどいいところに来てくれた。ねえ、これを見てほしいの』走ってきたのは亡きチュンメイの母親だった」

 カリブンはものすごいスピードでやってくるが、俺はペースを変えない。


「グアアッッ!!!!」

「ウワアッッ?!」

 そこに、カリブンが真っ赤な目をギラギラさせ、犬歯をむき出しで俺に迫ってきた。それでも、俺はペースを変えなかった。




「『バイルイ君、これ、チュンメイが渡しておいて、って言ってた』チュンメイの母が渡してきたのは、一つの封筒だった。『じゃあ、また。私、夫が義勇兵になるって言うからそれで色々しなきゃいけなくて。ごめんね。なんの話もできなくて』チュンメイの母は旦那さんの義勇兵の話になると、急に涙ぐみ始めた。『いやいや、別に大丈夫ですよ。わざわざありがとうございます』『うん。じゃあ、またね』チュンメイの母は体の向きを変えて、元来た方へ走っていった」

 今、カリブンは言霊のおかげで動きを封じられている。




 純白ロードに依然、終わりは見えない。ふと振り返ってみると、かなりの文が白い床に綴られていた。

「俺は立ち止まって茶封筒を見てみた。チュンメイからの手紙、か。と、ドーンドーンとまた爆発音が響いた。それでも、俺は動じず、近くにあったベンチに座って封筒を開封した」

 ここからよ。ここからヤバい。多分。

 カリブンが動き出した。でも、どうせすぐに動きを止められるだろう。


 と、その時。

【ボーナスを使いますか?】

 また来た。この質問。

「だから、ボーナスってなんだよ?」

 と、叫ぶと壁に表示された。

【ボーナスとは、言霊の効果を増大させるチャンスタイムのことです】

 ふんふんふん。それだけかよ?

【詳しく説明しますと、このボーナスを使うと、言霊の効果が増大して、カリブンの動きを封じられる時間とカリブンに与えるダメージが増大します】

 純白の壁に表示される文字は俺の意思を見透かしているようだった。

「使う!」

【了解しました】


 そう言って、俺はまた書き始めた。

「バイルイ君へ」

 チュンメイからの手紙だ。

「私とバイルイ君はずいぶん話が合って、助け合えた。バイルイ君は私に命令したりこき使ったりすることもなくって、何でもできる優しい彼氏だった。でもね、私ね、彼氏彼女の関係っていつまで続くんだろうって。早く結婚したいなぁ。とずっと思っちゃうの。でもね、その前にね、確認しておきたいことがあったの」

 その続きを考える。すぐに考えついた。少し、自分でも泣きそうになってしまう。

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